役員のみなし退職金の損金性(5) - 会計・経理全般 - 専門家プロファイル

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役員のみなし退職金の損金性(5)

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発表 実務に役立つ判例紹介
今日は、昨日紹介した事例と裁判所も日付も同じ別の事件である
大阪地裁平成20年2月29日判決を紹介します。
今日の事例は、会社の使用人であった者が執行役に就任するに当って、
打切り支給された従業員退職給与の退職所得性を争った事例です。

事実の概要は次の通りです。

昭和37年に設立された原告X社は、各種製品の企画、販売及び
輸出入に関する事業を行う、2つの市場の1部に上場する株式会社であり、
平成15年6月26日の株主総会決議に基づき、委員会等設置会社に移行した。
X社の取締役会は、同日、原告の使用人であったBら6名を執行役に選任し、
Bらは、同日、X社の進行役に就任した。
X社は、平成15年7月31日、Bらに対し、本件退職金規定に基づいて
算出した退職金合計6341万円(本件各金員)を支払うこととし、
その際、Bらから、本件各金員に係る所得は所得税法30条1項にいう
「退職所得」に該当するとして合計20万余円の源泉徴収税額を徴収し、
同年8月11日、これを国に納付した。
被告Y税務署長は、平成16年3月31日付けで、X社に対し、
本件各金員に係る所得は所得税法28条1項にいう「給与所得」に該当する
として、納税告知及び不納付加算税賦課決定をしたところ、X社が
本件各処分の取消しを求めて提起されたのが本件である。
なお、X社においては、本件各金員の支払後、報酬委員会規則が策定され
(平成17年6月24日施行)、取締役及び執行役(役員)の退職慰労金の額は、
退任時の報酬月額に在任年数と役位係数を乗じて算出した額を限度とし、
使用人から役員に就任した場合には、社員としての退職金を支給し、
役員退職慰労金については、執行役就任前における使用人であった
勤続期間の通算を行わないこととしている。

本件における裁判所の判断は、次のようなものであった。

Bらが使用人としての地位を喪失すると同時に執行役に就任していること、
Bらが執行役就任前、既にいわゆる執行役員として本部長等のX社における
重要な職位に就いており、執行役就任の前後でBらの職名、担当業務等に
特段変動がみられないこと、Bらに支給された年間の給与額も大幅には
変動していないことなどに照らせば、その勤務関係の基礎を成す契約が
雇用関係から委任契約に変更され、Bらの法的身分に変動が生じたとしても、
これによって直ちにX社とBらとの間の勤務関係がいったん終了したと
みるのは困難である。そうすると、本件各金員が「退職手当、一時恩給
その他の退職により一時に受ける給与」に該当するとはいい難い。

会社の使用人がその執行役に就任する場合、会社の規模、性格、実情等に照らし、
当該身分関係の異動が形式上のものにすぎず、名目的、観念的なものと
いわざるを得ないような特別の事情のない限り、その勤務関係の基礎を成す
契約関係の法的性質自体が抜本的に変動し、その結果として、勤務関係の性質、
内容、労働条件等に重大な変動を生じるのが通常であるということができる。
 そして、Bらの執行役就任時におけるX社の会社としての性格及び規模、
X社における役員の位置付け及びその構成、従業員の役員への就任状況、
給与体系の変更内容、給与支給額の変動内容、Bらの執行役就任時に採られた
各種手続等にかんがみれば、Bらの身分関係の異動がその実質を有するもので
あることは明らかである。
 したがって、BらとX社との勤務関係については、Bらの執行役就任により、
その性質、内容、労働条件において重大な変動を生じたというべきであり、
執行役就任後の勤務関係は、実質的にみて、執行役就任前の勤務関係の
単なる延長とみることはできないというのが相当である。

Bらについては執行役への就任の前後でその勤務関係の性質、内容、
労働条件等において重大な変動があったと認められる上、執行役への就任の
時点でBらのそれまでの継続的な勤務に対する報償ないしその間の
労務の対価を一括精算することについて合理的な必要性も認められるのであって、
本件退職金規定において執行役を含む役員への就任による退職の場合と
それ以外の事由による普通退職の場合とで退職金の支給率を区別して
規定していないことなどをも併せ考えると、本件各金員は、Bらが
執行役への就任という従前の勤務関係の延長とはみられない実質を有する
新たな勤務関係に入ったことに伴い、その時点でBらのそれまでの
継続的な勤務に対する報償ないしその間の労務の対価を一括精算する趣旨で
支給されたと認めるに十分であり、そうである以上、本件各金員は、課税上、
「退職により一時に受ける給与」と同一に取り扱うのが相当というべきである。

大阪地裁はこのように判示して、納税者勝訴としたのである。

本件で注目すべきは、Bらが執行役に就任するという法的身分の変動が、
税法上は、直接勤務関係の終了に伴う退職所得とされる理由ではないことを
指摘した上で、労働条件の変動等を担保として、実質的に退職所得と同等に
取り扱うべき身分関係の変動があったものと事実認定されたという点である。
つまり、本件が納税者勝訴だから、就業規則等に明示されていない場合の
役員就任に伴う従業員退職金の打切り支給は退職所得となる、
と安易に考えることは、許されないということである。
また、本件は控訴されているので、大阪高裁の判断が注目されるところであるが、
事実認定を覆すだけの証拠を課税庁が立証することができれば、
ひっくり返される可能性も大きく残されている判決内容である。
ただ、現状では、実質的に退職所得と同等と取り扱うべき事情が認められる
のであれば、打切り支給は退職所得となると考えてよいのではないだろうか。

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