インド特許法の基礎(第13回)(1)~アクセプタンス期間制度~ - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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インド特許法の基礎(第13回)(1)~アクセプタンス期間制度~

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インド特許法の基礎(第13回)(1)

~アクセプタンス期間制度~

 

2014年7月1日

河野特許事務所 

弁理士 安田 恵

 

1.はじめに

 インド特許法はアクセプタンス期間制度を採用している(第21条)。アクセプタンス期間制度は,所定の期間内に特許出願を特許付与可能な状態にしなければ,当該特許出願を放棄したものとみなす制度である。アクセプタンス期間は英連邦系諸国で採用されている制度[1]であるが,その具体的な期間及び取り扱いは国毎に異なる。インド特許法におけるアクセプタンス期間は,最初の審査報告(拒絶理由通知書)が出願人に送付されてから12ヶ月以内であり(第21条,規則24B条(4)),延長することはできない(規則138条)。ただし,所定の期間内に聴聞(ヒアリング)の申請を行えば(第80条),聴聞の機会が付与され(第14条),アクセプタンス期間経過後も特許出願をインド特許庁に係属させることができるとされている。

 

2.アクセプタンス期間に関する条文及び規則

 アクセプタンス期間に関する主な条文[2]及び規則[3]は次の通りである。

インド特許法

インド特許規則

第21 条 出願を特許付与の状態にする期間

(1) 特許出願については,長官が願書若しくは完全明細書又はそれに係る他の書類についての最初の異論陳述書を出願人に送付した日から所定の期間内に,出願人が当該出願に関して完全明細書関連か若しくはその他の事項かを問わず,本法により又は基づいて出願人に課された全ての要件を遵守しない限り,これを放棄したものとみなす。

説明--手続の係属中に,願書若しくは明細書,又は条約出願若しくはインドを指定して特許協力条約に基づいてされる出願の場合においては出願の一部として提出された何らかの書類を長官が出願人に返還したときは,出願人がそれを再提出しない限り,かつ,再提出するまで,又は出願人が自己の制御を超える理由により当該書類を再提出できなかったことを長官の納得するまで証明しない限り,かつ,証明するまで,当該要件を遵守したものとはみなさない。

(2)省略

(3)省略

規則24B  出願の審査

…省略…

(4) 第21条に基づいて出願を特許付与のために整備する期間は,要件を遵守すべき旨の異論の最初の陳述書が出願人に発せられた日から12月とする。

 

規則138 所定の期間を延長する権限

(1) 規則24B,規則55(4)及び規則80(1A)に別段の規定がある場合を除き,本規則に基づく何らかの行為をするため又は何らかの手続をとるために本規則に規定される期間は,長官がそうすることを適切と認めるとき,かつ,長官が指示することがある条件により,長官はこれを1月延長することができる。

(2) 本規則に基づいてされる期間延長の請求は,所定の期間の満了前にしなければならない。

 

 聴聞に関する主な条文及び規則は次の通りである。

インド特許法

インド特許規則

第14 条 審査官の報告の長官による取扱い

特許出願について長官の受領した審査官の報告が,出願人にとって不利であるか又は本法若しくは本法に基づいて制定された規則の規定を遵守する上で願書,明細書若しくは他の書類の何らかの補正を必要とするときは,長官は,以下に掲げる規定に従って当該出願の処分に着手する前に,異論の要旨を可能な限り早期に当該出願人に通知し,かつ,所定の期間内に当該出願人の請求があるときは,その者に聴聞を受ける機会を与えなければならない

 

第80 条 長官による裁量権の行使

本法に基づいて手続当事者を長官が聴聞すべき旨又は当該当事者に対して聴聞を受ける機会を与えるべき旨を定めた本法の規定を害することなく,長官は,如何なる特許出願人又は明細書補正の申請人(所定の期間内に請求の場合に限る。)に対しても,本法によって又はそれに基づいて付与された長官の何らかの裁量権をその者に不利に行使する前に,聴聞を受ける機会を与えなければならない。

ただし,聴聞を希望する当事者は,当該手続について指定された期限の満了の少なくとも10日前に,長官に対して当該聴聞の請求をしなければならない

規則129 長官による裁量権の行使

長官は,法又は本規則に基づく何らかの裁量権であって特許出願人又は手続当事者に対して不利な影響を及ぼす虞のあるものを行使する前に,当該出願人又は当事者に,聴聞について通常は10日以上前に通知した後,当該聴聞をしなければならない。

 

3.審査基準におけるアクセプタンス期間の取り扱い

(1)特許庁の特許実務及び手続の手引(インド)[4]によれば,出願人は,最初の審査報告書により通知された要件,即ちインド特許法により課される要件を全て遵守することが義務付けられており,出願人が最初の審査報告書の発行日から12月以内に,当該最初の審査報告書に答弁しなかった場合,当該出願は放棄されたものとみなされ,特許出願が放棄された旨の通知は出願人に送付される(第4パラグラフ)。

 アクセプタンス期間内に答弁/補正を行った場合,審査官は当該出願を新たに審査しなければならない(第7パラグラフ)。出願人が答弁/補正を行う場合,請求により聴聞を受ける機会が与えられる(第8パラグラフ)。出願人により提出された答弁/補正が,法に定める要件を満たしていない場合,長官は聴聞の機会を提供した後,実体に基づき判断を行う(第5パラグラフ)。

 長官は,出願人を聴聞した後,適切と認める場合,明細書について補正をすべき旨を指定し又は許可することができる(第9パラグラフ)。また,長官は,指定又は許可された補正がなされない場合,又は特許法及び規則に定めるその他の要件が遵守されていない場合,特許を拒絶することができる(第9パラグラフ)。聴聞を受ける機会が与えられることなく,特許の拒絶は査定されない(第11パラグラフ)。

 

(2)以上の通り,出願人の申請により,出願人は聴聞の機会が付与されること,聴聞を受ける機会が与えられることなく,特許が拒絶査定されることが無いことは理解できる。しかし,聴聞の申請を行えば,特許出願が放棄されたとみなされることになるアクセプタンス期間の満了後も,特許出願が特許庁に係属し続けるのかどうか,アクセプタンス期間満了後にも聴聞が行われるのかどうかと言う点は必ずしも明らかでは無い。

 そこで,インド特許法におけるアクセプタンス期間制度を理解する上で参考になる判例(デリー高裁 W.P.(C) No.9126 of 2009, ORDER 11.03.2010)を紹介し,検討する。

 

4.アクセプタンス期間制度に関する判例

(1)事実関係

 出願人は,公衆通信網を介したコンテンツ購入支援装置及び支援方法に係る発明について,2005年7月29日に国内段階出願(出願番号:3380/ DEL /2005)を行った。また,出願人は出願審査請求を行った。当該出願は2007年6月1日に出願公開された。

 審査の結果,最初の審査報告が2007年10月8日に発せられた。本件の場合、アクセプタンス期間の末日は2008年10月8日である。出願人は,当該審査報告で指摘された点について2007年12月10日に回答(答弁/補正)を行った。

 出願人の回答に対して,2回目の審査報告が2008年7月25に発せられた。出願人は2008年8月11日に担当審査官と面談し,最初の審査報告に対する回答について説明を行った。そして,出願人はアクセプタンス期間内である2008年9月22日に,2回目の審査報告に対する回答を行った。当該回答において,出願人は聴聞の機会を請求した。

 これに対して,特許庁は,アクセプタンス期間は2008年10月8日に満了したため,特許出願は第21条(1)の規定に基づいて放棄された旨を2008年10月10日付けで出願人に通知した。 

 

図1:手続きの経緯

 

(2)争点

 本件においては,特許出願人が第21条(1)における放棄を行ったと言えるか否かが争われた。

⇒第二回へ続く



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[1] 「世界の産業財産権制度および産業財産権侵害対策概要ミニガイド」,イギリス(http://www.iprsupport-jpo.go.jp/miniguide/pdf2/England.html),オーストラリア(http://www.iprsupport-jpo.go.jp/miniguide/pdf2/Australia.html)等

[2] 特許庁 外国産業財産権情報

インド特許法:http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/fips/pdf/india/tokkyo.pdf

[3] 特許庁 外国産業財産権情報

インド特許規則http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/fips/pdf/india/tokkyo_kisoku.pdf

[4] 「特許庁の特許実務及び手続の手引(インド)01.11版2011年3月22日修正」,08.04「報告の長官による取扱い及び最初の審査報告書の発行」

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