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河野 英仁
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インド特許法の基礎(第18回)(2)~特許の維持・消滅~

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インド特許法の基礎(第18回)(2)

~特許の維持・消滅~

2014年12月5日

執筆者 河野特許事務所 

弁理士 安田 恵

 

3.特許の消滅

(1)存続期間満了による失効

 特許は20年の存続期間の満了により,効力を失う(第53条(4))。存続期間の更なる延長を行うことはできない。

 

(2)更新手数料の不納付による失効と回復

 特許は,所定の納付期間内又は延長期間内に更新手数料が納付されなかった場合,当該所定の納付期間の満了時に効力を失う(第53条(2))。つまり,特許は,更新手数料の通常の納付期間満了時に遡及消滅する。

 

 特許の回復申請手続きの流れを図4に示す。特許権者であった者は,特許の失効の日から18ヶ月以内に特許の回復の申請を行うことができる(第60条(1))。回復の申請は様式15により行い(規則84(1)),更新手数料の不納付に至った状況を詳細に説明した陳述書と,それを裏付ける証拠を添付しなければならない(第60条(3))。陳述書は,以下の事項を長官に納得させるものである必要がある(第61条(1))。

 ⅰ)更新手数料の不納付が故意ではなかったこと

 ⅱ)回復の申請に不当な遅滞がなかったこと

 

 

図4 特許の回復申請手続き

 

 長官は,特許の回復について一応の証拠がある事件として立証されていないと納得した場合,その旨を申請人に通知する(規則84(2))。申請人は,その通知の日から1ヶ月以内に聴聞の申請を行うことができる。聴聞の結果,長官の心証を覆すことができなかった場合,あるいは聴聞の申請がなかった場合,長官は回復の申請を拒絶する(規則84(2))。長官の決定に対して不服がある場合は,審判請求を行うことができる(第117A条)。

 

 更新手数料の不納付が故意でなかったことを一応納得した場合,長官は回復の申請を公告しなければならない(第61条(1),規則84(3))。利害関係人は,特許の回復について公告後2ヶ月以内に異議を申し立てることができる(第61条(1),規則85(1),様式14)。異議申立があった場合,長官は異議申立書の写しを申請人に送付し,申請人及び異議申立人には聴聞を受ける機会が与えられる(第61条(2),規則85(2),(3))。

 

 異議申立の審理の結果,回復の申請を認める場合,又は異議申立がなかった場合,長官は,回復申請の許可を命令し,申請人は当該命令の日から1ヶ月以内に不納付の更新手数料及び追加手数料を納付しなければならない(第61条(3),規則86(1))。更新手数料及び追加手数料の納付があった場合,長官は特許を回復させ(第61条(3)),特許の回復を公告する(規則86(2))。

 

 回復した特許権は一定の制限を受ける。特許の失効日から特許回復の公告日までの間に,回復に係る特許を実施した者又は実施の準備を行った者は保護され(第62条(1)),特許権者はその間に行われた第3者の行為について特許権侵害訴訟を提起することはできない(第62条(2))。

 

4.特許の更新手続きの実例

 実例を見ると特許の更新手続きの実際が良く分かる。インド特許庁は無料の検索サイト“IPAIRS”[1]を公開している。検索サイト“IPAIRS”を利用すると特許の更新状況を確認することができる(図5参照)[2]

 

図5 特許の更新状況表示画面

 

 更新状態表示画面の右上に,①特許証の日付(Date of Patent),②特許付与日(Date of Grant),③登録日(Date of Recordal)が表示される。良く似た表記に戸惑うが,更新申請手続きに重要な日付は,①特許証の日付と,③登録日である。更新手数料納付期間の起算日は,特許証の日付である。通常,特許証の日付は出願日であるが,図5に示す例は分割出願であるため,現実の出願日(1999年3月18日)では無く,親出願の出願日(1992年8月28日)が特許証の日付として登録されている。特許の種類,親出願の日付等を確認せずとも,特許証の日付によって更新手数料納付期間の起算日を知ることができ,便利である。

 当該出願は2008年3月10日に登録されているため,1994年8月28日~2008年8月28日分(3年度~16年度)の更新手数料が,2008年6月10日の納付期間満了前に納付されている。なお,初回の更新手数料納付期間の起算日は③登録日(2008年3月10日)であり,②特許付与時(2008年2月29日)では無い。

 17年度の納付期間満了日は①特許証の日付が基準であり,2008年8月28日となる。18年度以後の納付期間満了日も8月28日に到来する。

 また,図4に示すように,各納付期間の延長可能な納付期限も確認することができる。

 

5.失効特許の検索

 インド特許庁は無料の検索サイト“EXPIRED PATENTS”[3]を公開している。この検索サイトを用いれば,失効して自由技術になった特許を検索することができる(図6参照)。

 

図6 失効した特許を検索できるサイト

 

 この検索サイトには次の4つの検索モードが用意されている。

(a)「Term Expired」

 「Term Expired」をクリックすると,20年の存続期間満了によって消滅した特許がリストアップされ,消滅した特許の出願番号,登録番号,失効日,発明の名称が一覧表示される。発明の属する分野を選択すると,選択された分野において消滅した特許をリストアップすることができる。一覧表示された特許番号を選択すると,より詳細な情報を得ることができる。

 

(b)「Ceased Due To Non Renewal」

 「Term Expired」をクリックすると,更新手数料の不納付によって失効した特許がリストアップされる。発明の属する分野を選択すると,選択された分野において失効した特許をリストアップすることができる。

 

(c)「Search By Patent Number」

 特許番号が分かっている場合,特許番号を入力することによって,当該特許の失効の有無を確認することができる。

 

(d)「Search By Title Of Invention」

 発明の名称に関するキーワードを入力することによって,入力されたキーワードを発明の名称に含む特許の失効の有無を確認することができる。

 

以上

 

 


特許に関するお問い合わせは河野特許事務所まで

 

 



[1] http://ipindiaonline.gov.in/patentsearch/search/index.aspx [2014年10月20日現在]

[2] 各種キーワードによって,所望の特許を検索することができ,出願番号,特許番号,発明の名称が一覧表示される。登録番号をクリックすると,特許の詳細が表示される。特許の詳細が表示された画面の最下部にある「View eRegister」をクリックすると,特許の更新状況の詳細が表示される。

[3] URL: http://ipindiaservices.gov.in/eregisterreport/ [2014年10月20日現在](当該検索サイトの正式名称は不明)

 

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