「店長、うちのガス窯では、ピッツアの仕上がりにどうしても限界があります。なんとか、薪釜を入れることは出来ませんか?」
ガスの炎と、薪の炎とは見た目はどちらも炎ですが、実は全然違います。その為、ピッツアの焼き上がりに微妙な差が出るのです。この店は、設備投資やランニングコストなどの関係から、オープン当初からガス窯を使っていました。しかし、最近近くに出来た競合店が、薪を使う石窯を使い、「本格ナポリピッツア」をうたってお客様を獲得し始めたのです。この店にとっては大きな打撃でした。
この危機に際し、自分達の店を愛してやまない副店長のAさんは、競合店に勝つには自分達の店にも同じ設備が必要だ、と店長に訴えたのです。
しかし、窯を入れ替えるには高額な投資が必要です。この店はビルインですので、排煙の問題も解決しなくてはいけません。コストだけではなくスペースの問題あり、すぐに解決できるわけではありませんでした。
もちろん、店長にも危機感がないはずがありません。どうすればお客様をつなぎ止め、また新しいお客様を獲得できるかについて日夜真剣に考えていました。その為、設備投資を訴える副店長の気持ちはわからないわけではありませんでしたが、すぐに対応出来ないことにこだわり続ける副店長に少しいらだちを感じていました。
こんな時に店長に必要な能力は、ファシリテーション力 です。詳しくは、数日前のブログ にも書きましたが、目指す物が同じにもかかわらず、プロセスで意見の相違が出てきたときには、「そもそも」に戻って「同じ」を合意し、さらに優先順位を決めていくことが大切なのです。もう少し深掘りすると、議論を取りまとめて行くには、「現象と原因」を分けることが必要です。
私が店長に伝えたのは、「真の原因の合意」です。その上で、「自分達の強み」を活かして「競合店に勝つ」という戦略を立てることです。この議論を取りまとめるのは店長の仕事です。副店長と意見が違っていても良いのです。しかし、総論が違っているのではありません。どうなったら良いのかという方向性は違っていないはずです。違っているのは、各論のはずなのです。まずは、共通点に合意し、次に原因について各論を整理し、解決するための最善の方法を選んでいきましょう。
例えば、冒頭のピッツア屋さんの例で行けば、「現象」は、「競合店のオープンによりお客様が奪われている」と言うことです。では「原因」は何でしょうか?「競合店」のオープンは、そのひとつとしても「薪釜かどうか?」は本当に原因なのでしょうか?薪窯で焼いたピッツアは確かに美味しいものが多いですが、ガス窯で焼いたピッツアにも相当美味しいものがあるのです。ピッツアの味は、設備だけで決まるものでは無いのです。ここで、この店は、「真の原因」を見つけ出して、そこを合意しなくてはならないのです。
お客様インタビューや競合店調査をしてみると、原因は残念ながら「競合店のピッツアよりも自店舗もピッツアのほうが美味しくない」ことがわかりました。この点は想像はしていましたが、実際に調査をすると、本質のところで納得が出来るのです。で、そうとわかれば、早速その原因の改善に取り掛からねばなりません。その解決策については、設備以外にも方法は山ほどあるのです。ミーティングでは、その方法をスタッフ全員で考えるようにしました。
副店長もスタッフ達も、ようやく,問題点の本質のところに着目し、「生地作り」「生地の保管管理」「焼の技術」もちろん、ソースやチーズについても考えを出していきました。その結果、材料を変えなくても今よりもずっと美味しいピッツアを作ることが出来たのです。
問題点が発生すると、誰もが「自分の解決案」を主張したくなります。そういうものです。それは真剣に店を良くしたいと考えているからそうなるのです。素晴らしいことなのです。
しかし、他のスタッフも同じように何とかしたいと考えています。
店長であるあなたは、それぞれの気持ちを理解し、「そもそも」と「だから」を考えて、「真の原因」について「自分達の強み」で解決する方法を見つけ出していきましょう。
それが、「店長」の役目ですよ!
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