それでは、プロならば政治も、起業も上手くいくかといいますと、そう単純な話ではありません。企業経営者の中には、10年、20年と会社経営をしてきた人から、「経営に関してはまだまだ」という言葉をよく聞きます。わたしが思うに、平時の経営にはそれなりの自信はあっても、変化の時の対応ではまだまだと言うことのようです。
結局、猪瀬さんの発言で一番説得力があったのは、「やや傲慢になっていた」というところです。ジャーナリストがいきなり落下傘で副知事になり、石原前知事の辞任による選挙で433万票を集めて知事就任。あまりに話が上手くいきすぎで、何かしら落とし穴があるのではないかと、疑ってかかる慎重さが必要でした。
ビジネスにおいても、この上手くいくことを狙って失敗するケースがあります。典型的な例が、フランチャイズでの経営です。3日間の経営者研修を得て、いきなりオーナーと言った仕組みの本部さえあります。多くの場合、「オーナーとしてぼちぼち経営を覚えてもらって」と言われ、その気になったけれど失敗といったケースです。
退職して、直ぐ会社設立といったケースでも、似たような失敗はあります。会社登記からお客さん作り、仕入れ交渉など、全てを一人でやろうという精神は、やる気と根性は買いますが無理です。やっぱり傲慢としか思えません。横柄な態度が傲慢であるばかりでなく、自分の能力を過剰評価するのも傲慢の一つです。
猪瀬さんの場合、秘書は一人だけいたようですが、ブレーンがまったくいない悲劇でもあります。人よりも頭脳明晰というプライドのある人でしたから、誰にも助けを求めない傲慢さが災いしていました。知事就任までの事前準備が不足している上に、まったくブレーンなしで知事選挙から都政運営を行う無謀さです。
起業のおいても、猪瀬さんと同じような失敗をしている人が多いです。モノゴト、一人で考えるよりは、二人、三人と知識と知恵を集めることは大事です。起業の場合は特に、あまり経験のない人が経営を行うわけですから、ブレーンがいるかいないかは、直ぐに結果となって現れます。傲慢な起業は失敗のもとです。
【一言】
起業コンサルタントが、起業でのブレーンの必要を語るのは手前味噌に聞こえるかも知れませんが、これは真摯に受け取ってもらった方がよいです。長年経験のあるコンサルタントですと、事前準備のない起業にはストップをかけるはずです。猪瀬さんの失敗は、これから起業する人には他人事ではありません。特に、能力のある人ほど陥いやすい失敗です。
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