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対象:体の不調・各部の痛み

頻脈性心疾患も否定できず・・貧血または鉄欠乏の可能性あり

2018/01/27 12:55
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動悸を招く疾患や体の状態には様々なものが考えられますが、大きく分けて、心臓に由来する動悸と、全身的な要因に由来する動悸とに大別できます。
先ず心臓由来の動悸としては、発作性頻拍や心房細動、WPW症候群などが比較的高い頻度でみられます。いずれも心電図で診断が可能で、必要に応じ24時間心電図などの精密検査を行ないます。
これまで不整脈を指摘されなかった事からすると、これら不整脈など心臓由来の動悸の可能性は、さほど高くないと推測されます。ただ不整脈など心臓病は、重篤である場合も少なくない事から、優先的に検査を受ける事が必要と思われます。

全身的な要素に由来する動悸にも、実に多彩なものがあります。深い関連が指摘されているものの一つが「甲状腺疾患」です。甲状腺ホルモンの産生が亢進するバセドウ病(甲状腺機能亢進症)は、甲状腺ホルモンが著増する事によって代謝が異常に活発となり、動悸を含む多彩な症状に見舞われます。
但しバセドウ病は動悸以外にも、体重減少や手などの振戦、眼球突出など幾つかの特徴的な症状があり、動悸の他に症状がないのであれば、可能性はかなり低くなります。また以前の健診で甲状腺の検査に異常がなかったとすれば、バセドウ病の線はあまり考えなくとも良いでしょう。

むしろ可能性が高いものとして、貧血や鉄欠乏の存在が考えられます。貧血は様々な症状をもたらしますが、そのうちの一つに動悸があります。貧血で動悸が発生する原因を簡単に説明すると、酸素を運搬する赤血球が貧血では減少するために、心臓が頑張り過ぎて心拍が早くなり、結果的に「動悸」として感じるのです。
ただし表立っては貧血がない、という人も少なくありません。つまり健康診断などに於いて、貧血の項目で「異状なし」と出た場合です。そのような場合でも、よく調べると「鉄欠乏」が浮かび上がる場合がとても多いのです。貧血がないものの鉄欠乏が存在するようなケースを「潜在的鉄欠乏」と呼んでいます。

鉄欠乏は様々な体調不良を招く事が知られています。動悸以外にも、倦怠感や立ちくらみ、息切れ、肌荒れ、頭痛、情緒不安定、爪が割れやすい。脱毛などの体調不良が生じ得ます。全体に、貧血とよく似た症状であることに気付きます。
実はこの潜在的鉄欠乏は、10代から50代前半までの女性には、とても多い栄養異常となっています。この世代の女性には、言わずと知れた毎月の「生理(月経)」が存在します。貧血や鉄欠乏は毎月の生理と大いに関係があります。すなわち生理に伴う出血により、鉄分が毎月のように失われていくのです。

一方で鉄欠乏は「食生活」と大いに関係があります。鉄分は赤血球の材料となるため、とりわけ女性はしっかりと補給する必要のある栄養素ですが、様々な理由により不足しがちです。とりわけダイエット志向の、痩せ型体形の方は、総じて鉄欠乏や貧血の傾向が見受けられます。
不足しやすい栄養素は鉄分だけではありません。ビタミンB群も男女を問わず、たいへん不足しやすい栄養素です。ビタミンB群には8種類あり、糖質や脂質、タンパク質の代謝、神経機能、造血など多彩な機能があります。食事の乱れはもとより、ストレスや過労、環境の変化などにより、現代人は不足しがちです。

ビタミンB群が不足すると、実に様々な体調不良を招くことが知られています。倦怠感、憂うつ感、音などへの過敏、不眠、情緒不安定、貧血など、それこそ枚挙に暇がありません。
ミネラルでも不足しやすいものが少なくありません。例えば亜鉛です。亜鉛も幅広い機能を持つ栄養素ですが、解毒や糖質代謝、神経機能の保持、粘膜の維持、造血などに関係しています。亜鉛が不足すると、倦怠感や肌荒れ、風邪をひきやすい、うつ症状、血糖値上昇、貧血、不妊症などを招きやすくなります。

栄養以外の要素では、自律神経失調もしくは更年期障害の可能性もあるかと思います。この二つの体調不良には共通項が多く、ホルモンバランスや自律神経バランスが乱れる事により、情緒不安定や倦怠感、憂うつ感、不眠、頭痛、息切れ、動悸、冷えや火照りなど、多彩な症状を招きやすい事が知られています。
自律神経には交感神経と副交感神経という2系統が存在し、お互いに反対の作用があります。例えば心臓に関しては、交感神経が心臓の拍動を早めるように作用し、副交感神経は逆に拍動を遅くするように作用します。この2系統の切り替えが上手くいかないと、動悸などの症状が現れやすくなります。

このように栄養バランスの乱れや自律神経の乱れなどの要素が関係している可能性がありますが、もしそうだとすると、動悸などの症状を少しでも緩和するために、どのような工夫があるのでしょうか。
先ず医療的なアプローチから説明します。心電図などの検査で明らかな不整脈や頻拍性心疾患が判明した場合には、医師と相談の上で、必要な治療を受ける事となります。

検査で異常がない場合には、漢方薬を試すのも一つの方法です。動悸と伴に頭痛、イライラ感、のぼせ感などがある場合には柴胡加竜骨牡蠣湯、動悸と伴に喉の違和感がある場合には半夏厚朴湯などが適応となります。
自律神経失調や更年期障害に対しては、プラセンタ(胎盤エキス製剤)注射もかなり有用です。動悸を含む多彩な症状に対し、ゆっくりではありますが、緩和効果を期待できます。1回2㎖ずつ筋肉注射し、週1~2回のペースが目安です。

次に栄養アプローチも有用です。鉄分やビタミンB群などの不足が貧血傾向となり、動悸を含む諸症状を招くと上述しましたが、逆に言うと、これらの栄養素をしっかりと、バランスよく補給することで、症状の緩和や体調全般の改善を得る事が可能となります。
お話ではビタミンやアミノ酸のサプリを飲んだところ、体調が良くなったということですので、そのサプリが体に合っているのかも知れません。とりあえず継続するのは良い事かと思います。

とはいえ栄養バランスのためには、食事の工夫が何といっても基本です。食事に関しては、これまで私が執筆した他のQ&Aやコラム、私のホームページ(2本あります)に詳述していますので、ぜひ参考になさって下さい。
ごく簡単に説明すると、野菜や果物、豆類、海藻類、キノコ類などをたっぷり食べ、肉や魚などタンパク源も適度に摂取します。一方でご飯やパンなどの炭水化物は控え目にし、甘いお菓子や甘い飲み物などは努めて避ける事が大切です。

一方で体を「温める」事も重要です。体の冷えは自律神経バランスを乱し、動悸を含む様々な体調不良を招きやすくなります。体の冷えはそれだけでなく、肥満につながり風邪をひきやすくなるなど、健康面で多くの悪影響があります。体を適切に温める事は、健康を得るための基本の一つと言えます。
具体的な方法に関しても他のQ&Aなどを参照して頂きたいのですが、一つだけ紹介すると、「お風呂」の活用が挙げられます。38~39℃という若干ぬるめの湯に、半身浴でゆったりと浸かる事がお勧めです。

蒲田よしのクリニック(内科)
吉野 真人
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鉄欠乏
貧血
自律神経
更年期障害
動悸

評価・お礼

キラきら さん

2018/01/27 14:09

回答ありがとうございます。
色々な可能性、改善方法など、丁寧にわかりやすく説明していただいてありがとうございます。
解説読みながら、そんな可能性もあるんだなぁと考えながら読ませていただきました。
参考にさせていただきます。
ほんとにありがとうございました。

回答専門家

吉野 真人
吉野 真人
( 東京都 / 医師(精神科) )
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この回答の相談

動悸について

心と体・医療健康 体の不調・各部の痛み 2018/01/23 13:08

私は41才既婚の女性です。
最近、動悸が続いています。今まで、不整脈のような指摘を受けた事はありません。
年末に不規則な生活になり、年明けから1日何回か動悸を感じます。
今は生活リズムが戻ったのに動悸が続いて… [続きを読む]

キラきらさん (千葉県/41歳/女性)

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