- 林 高宏
- 林高宏税理士事務所
- 鹿児島県
- 税理士
対象:税金
私にとって、これほど心臓に悪いものはない。
できれば逃げ出したい。
でも先輩だ。
それも、ものすごーく恩義のある先輩だ。
放り投げることはできない。
今日(あっ、もうきのうか!)も、行ってみると
明日答えを出せと言う。
「いいですよ」と言ってはみたものの、こちらも大変だ。
初期段階の入力作業はパートが行う。
彼女の勤務時間は午後4時まで。
私はいつまで残れるか尋ね、30分延長してもらった。
最終段階の仕訳項目を伝えようとすると、
出たのは新人(入所2年目)の事務員だった。
「○○さん、もう帰っちゃったの?」
「はい。帰りました」
「君、入力作業できる?」
通常、初期段階の仕訳をパンチャーが入力し、
をれを基に、男性職員が申告書を作成することになっているのです。
「できます」
この声を聞き、ほっとしました。
最終的な現地での作業を終え、
整骨院でマッサージを受けた後、事務所へ帰所しました。
事務員には、5時半ごろ残業を命じていました。
「今日はちょっと残ってくれないか」
「僕が帰り着くのはたぶん7時ごろになると思う。
だから、今のうちに食事をしたり、休むようにしていて欲しい」
そう言ったにも係らず、律儀な彼は仕事をしていたようです。
「仕事の前にちょっとゆっくりしようよ。何か食べるもの買ってきて」
「いえ、自分は今朝の作り置きが残っていますので」
「そっかー。給料安いもんねー。悪いね」
そういう経過を辿り、申告書を作成したのですが、税金が出る!
私があわてて電話をすると、「繰欠は使えないのか」とのこと。
ちょっと分からなかったので、明日報告することになりました。
事務員が、申告書を見ながら「先生、最近改正があったようです」
えっ!
前回以来されたものをたたき台にして、作業を行っていたのですが、
そういえば最近、破産法の改正がありました。
実際、彼が読んでいる本は、そのため最近買い求めたものです。
余程のことがないと本は買わないことに決めている私が珍しく!
それを先輩は知っていたんだ。
税理士より詳しい知識を持つ弁護士の顧問を勤める者の
気持ちになって頂きたい。
「ごめん」では済まされないのだ。
私は一度やってしまい、裁判所にまでご迷惑をおかけしたことがある。
先輩には大変申し訳なかったと心の中で思っている。
先輩だって大変なのだ。
「最近は厳しくて、今回はこれだけでいいか」と
いつも言われる。
いっそのこと、タダにして欲しい。
でも、そういうわけにもいかない。
見直した結果、先輩の想像どおり0の数字が出てきた。
私は、最終的な総点検を行い、すべての本日の業務を
終えたのち、顧問税理士として印鑑を押した。
時計を見ると10時半だった。
明日、朝一番。取りに来るよう電話をするよう申し伝え、
彼に帰宅を命じました。
私たちは、いわゆる最後の砦という部分の仕事を行っています。
それでも、裁判官に比べればましかなと思っています。
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