- 真鍋 貴臣
- 香洋ファイナンシャル・プランニング事務所 代表者
- 香川県
- ファイナンシャルプランナー
日経電子版に、次のような記事が掲載されていました。
【抜粋開始】
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGC1900T_Z11C12A0EE8000/
日銀は19日、金融システムの現状を分析した「金融システムレポート」を発表した。国内金利が一律1%上昇すると、3月末時点で大手銀行は3.7兆円、地域銀行は3兆円、信用金庫は1.6兆円の評価損が生じるとの試算を示した。国債の保有残高が増えたため、3業態合計の評価損は8.3兆円と、1年前に比べて約1兆円増えた。
大手銀の評価損は3カ月前と比べても0.3兆円増えた。貸出先が乏しい地銀や信金は償還までの期間が長い国債への投資を増やしており、金利変動に伴うリスクの増大につながっている。大手銀で2年半ばの保有債券の平均残存期間は、地銀で4年、信金では4年半ばに達する。
銀行は国債の評価損が生じると自己資本を維持するために貸し出しを減らす可能性がある。日銀の分析では、金利が1%上昇する場合は貸出金利の上昇による収益改善の効果などで損失を補える。しかし2%上昇すると、貸し出し減などで名目国内総生産(GDP)成長率がマイナスに転じるほどの影響が出るという。
【抜粋終了】
日本の銀行には、海外の銀行にはあまり見られないユニークな特徴があります。
それは、顧客から集めた預金(銀行から見れば顧客からの借入)を、事業への投資(銀行から見れば顧客への貸付)よりも、国債等の安全資産の購入に充てているという事象です。
これは、倒産リスクのある民間企業に貸し出しても1~2%、国の債券である国債(10年もの)を買っても0.8%となれば、倒産リスクを取って民間に貸し出すのはあほらしいという考えがベースにあり、私も一投資家として考えれば理解できる部分でもあります。
しかし、こうした考え方が国債(=国の借金)を国内で消費するという悪循環を生んでいる事は間違いなく、銀行の国債に依存する資産構成が、結局のところ民に回って来るというのが本記事です。
国家は、景気が下振れする局面においては、市場に資金を供給する政策を打ち出し、景気を上昇させようとします。
これらは「金融政策」や「財政政策」と呼ばれますが、このうち「財政政策」は民間の銀行を通じて市場への資金供給を行う政策です。
つまり、中央銀行を経て民間銀行に供給されたお金は、本来「民間への貸出」を通じて消費を刺激するための起爆剤なのです。
これは現在の日本でも全く同じ思想の元に行われ、実際に中央銀行のオペレーションにより民間銀行に資金は供給されているのです。
ところが、民間銀行はその資金を「民間への貸出」に使わず、よりリスクの低く利率の変わらない「国債の購入」に充てています。
このような状況では、いくら国が財政政策を行っても同じです。
国や地域を問わず、元々銀行が発生した背景には「資金を市場に供給する使命」がありました。
ところが、日本の民間銀行の現状は、その本来の役割を果たしていないように見えます。
何よりも恐ろしいのは、そういった状況に長く慣れてしまった日本の銀行から、「事業を正しく評価する」機能が失われてしまう事だと思います。
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