- 高安 重一
- 有限会社アーキテクチャー・ラボ 代表取締役
- 東京都
- 建築家
対象:住宅設計・構造
「人間昆虫記」は手塚治虫の1970年の作品で、最近初めて読んだ。
才能ある人に近づいていくことでその才を身につけていき、最後には乗っ取るように本人よりも世の中に評価されて名声を得ていく女が主人公。
この主人公はとても美しく、脱皮を繰り返して生きていく様はグロテスクで、世の中的には犯罪になることもいとわない。その行為は悪女の典型のようだけれど、実は順応性の良さ極限にまで高めた、純粋な生き物のようにも思える。
これは生き物の自然現象であり、化身を繰り返すのは本能で、彼女を取り巻く社会自体では悪とされることだろうけれども、その社会自体が病んでいることが浮き彫りになってくる。
手塚治虫はいつもこのような普遍的なテーマを扱っていて、それをどのようなストーリーを当てはめて展開するかによって子ども向けにも大人向けにもなり、結果数多くの作品が生まれることになったんだと思う。
そして話しの最後、破滅して終わるのかとも思ったが意外な展開で、なんとさらに変化して海外での活躍が日本に報道されて終わる。
この展開は「へルタースケルター」と全く同じで、病んだ社会で生きていく女性を主人公にしたストーリーも同じである。
そうすると改めて岡崎京子の普遍的なテーマはなんだったのかを考えてみたくなる。