- 高安 重一
- 有限会社アーキテクチャー・ラボ 代表取締役
- 東京都
- 建築家
対象:住宅設計・構造
「ミドリさんとカラクリ屋敷」(鈴木遥/集英社)という不思議なタイトルの本を見つけた。
平塚で屋根から電柱が飛び出している家を見つけた著者がその謎を解くためにこの家にアプローチしていって謎を解くというような話し。ノンフィクションなので実在するのがメルヘンだけで終わらず、勇気を与えてくれる。
勇気というのは建築に対する幅の広さとか、いかに建築が自由であるとか、建築とは建築家だけのものでは毛頭ないとか、そんな意味で勇気と言いました。
この家の主人は90過ぎのお婆さんのミドリさん。
新潟から北海道へ開拓移民として入植して子供時代を過ごしたそうで、新潟の文化も引き継ぎながら、ミドリさんの家系のもの凄い普請ぶりを身につけて、東京に出て平塚に家を建てるまでの経緯をレポートしている。
でもミドリさんは建築家ではなく、ただのバイタリティあるお婆さん。
家とはこうあるべきという理念をミドリさん独自の理由でバッサリと決めつけてくれるのが気持ちいい。
「家なんて自分で考えて作るのが一番良いに決まってる」そう言ってくれてる本。
この著者の経歴を見ると奈良女子大の建築出身。
ミドリさんの生まれ育った新潟や北海道時代の痕跡をたどりながら、日本にも地域に独自に根付いた風土や考え方が息づいていることを知らせてくれている。
こんな元気な女性を排出した奈良女子大にも興味が湧く。
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