- 増井 真也
- 建築部門代表
- 建築家
対象:住宅設計・構造
この「よみがえる家」のプロジェクトは消費社会に対する挑戦である。
今の社会では住宅を含め、すべてのものは消費されている。古くなったものは捨てられ、新しいものへと交換される。
この開拓者の家は、一人の個人の手によって12年の歳月をかけてこつこつと作られたものだ。自分の生活を作り上げるために自分の手によって作られたものである。そこに消費という概念は存在しない。そして今も姿を変えながら、正橋氏の生活を作り上げるために使われ続けている。作られ続けているのである。消費しすぎている社会に対する警鐘として、この建築の持つ凄みには圧倒される。
住宅という建築がひとつの世代で取り壊されてしまう消費物になってしまったことにはさまざまな理由が挙げられるだろう。木造という腐りやすい構造が主流であること。一時期物資の不足する時期に行われた安価な劣悪な工事や手抜き工事。しかし、壊されている住宅の中にはまだまだ利用する価値のあるものがたくさん含まれている。それらの建築を取り壊すことなく、これまで作り上げられてきた建築の魅力をさらに増してともに生きる。これこそがこれからの社会に求められる姿なのではないかと思う。
12月5日