会社という仕組みの壁の向こうにはヒトがいる

潜在仕事力発見ワークの中川淳一郎です。

前職のお客様に大手スーパーのバイヤーがいた。

数の論理で交渉する。

競合させ有利な条件で商品を採用する。

計画数全数を準備することを条件にする。

採用されると全店に告知される。

全店に展示される前提で条件提示した契約だが

店には店の都合が有り、展示されるとは限らない。

店と展示交渉するのは問屋とメーカー営業の仕事。

一店舗ずつ歩き回らないと展示されない。

シーズンが終った、売り場入れ替え。

残った商品は全て返って来る。

困る。

受け入れないと次は無い。

残る原因の多くは展示の遅れ。

展示品もメンテされずホコリまみれ。

本部から次から次へと採用連絡が流れて来る。

店のスペースは限られ、人員にも余裕はない。

対応には限界がある。

本部は店それぞれの事情までは配慮できない。

店と本部とはお互いになじりあう。

彼はいつも

いつも会社をちらつかせた。

横柄だった

強引だった

やることが雑だった

問屋の営業を顎で使っていた

メーカーは従うものだと思っていた

俺の言うことを聞いてればいいという態度

彼は当然嫌われていた。

無理難題は

彼のせいだと　　思っていた。

彼が悪いのだと　思っていた。

一生付き合いたく無い人間だと思った。

今になって思う

どうして彼はそうだったのかと。

バイヤーは花形

数字が大きい

取扱いアイテムが多い

自分の判断ひとつで全国展開できる

出世コースの一つ

何億、何十億規模の仕事

仕入した商品次第で売上が変わる

仕入れ先からはちやほやされる

とても面白い仕事

バイヤーは会社から

「売上」しか　言われない

「利益」しか　言われない

「効率」しか　言われない

「部下」は　　与えられない。

膨大な仕事量

会社の、数字評価は短期。

担当は、長くて数年。

人間関係を作る時間はない。

丁寧に説明する時間はない。

しっかり考える余裕はない。

最も手っ取り早い方法を取るしかない

問屋を　　　使わざるを得ない

メーカーを　使わざるを得ない

問屋に　　　無理を言わざるを得ない

メーカーに　無理を言わざるを得ない

売場に　　　押しつけざるを得ない

売場の　　　意向を汲んでいる余裕はない

ないないづくし・・・

彼は初め

出世がしたかったのには違い無い。

出世のためにヒトを使おうとしたには違いない。

しかしそこは

味方のいない世界

仲間のいない世界

ヒトは弱い

仕組みに従ってしまう生き物

やればやるほど

怖かっただろうなあ

寂しかっただろうなあ

苦しかっただろうなあ

私は

彼そのものを見てはいなかった。

彼の人格まで疑う必要はなかった。

彼を見えなくしたいたのは

仕組みという大きな壁だった。

その壁しか見ていなかった。

彼のためにできることは何か

なんて考えたことも無かった。

会社という仕組みはヒトでできている。

どんな大きな仕組みでもヒトでできている。

仕組みという壁の向こうにいるヒトと付き合う。

そこに

仕事する幸せがきっとある。