
- 小松 俊明
- リクルーターズ株式会社 経営コンサルタント (専門/人材ビジネス)
- 東京都
- 経営コンサルタント
対象:キャリアプラン
- 宇江野 加子
- (キャリアカウンセラー)
- 冨永 のむ子
- (パーソナルコーチ)
将来作物を刈り取るためには、まず種まきが必要であるように、仕事にも同様の種まきは必須である。そして作物の収穫が天候に左右されるように、ビジネス環境の変化次第で、種まきの結果、作物が実るかどうかは定かではない。それでも種をまき続けなければ、収穫のチャンスはこない。それがわかっているのに、僕らは日々仕事の忙しさに流されてしまい、十分な種まきをできていないことはないだろうか。
もう一つ大切なことがある。美味しい作物をつくるためには、ただ種まきをすればいいというものではないということである。まずは土壌作りが大切だ。そして種をまいた後も、肥料や水やりを怠るわけにいかない。つまり、種まきで効果を出すためにはそれなりのやり方があるのだ。これは仕事の種まきでも同じではないだろうか。
では仕事の種まきとは、具体的には何だろう。大きく分けて3つある。
ひとつ目は「自己投資」である。たとえば自分の仕事に関する専門知識を身につけること。先輩から仕事の実務を学ばせてもらうことも含まれるだろう。
2つ目は「人への投資」である。特に仕事をする相手との信頼関係を築くことは最も大切である。多くの人と知り合うことも時に必要だが、それよりも、数は少なくてもいいから、あなた自身のことを相手の記憶にポジティブで強い印象として植え付けることがとても重要である。
そして3つ目は「評判を作ること」である。いい仕事をすることで実績を残すことができれば、それは良い評判を作り、仕事や人脈の紹介につながっていく。時間をかけた結果、仕事が舞い込んでくるようにならなければならない。人から請われてやる仕事は、おのずと質が高くなるものだし、相手の期待にこたえるということはやりがいもある。
このように仕事においても種まきをすることに意味があることは疑う余地がないが、難しいのはせっかく種まきをしても、なかなか芽が出ないことである。家庭菜園をしていても、自分が植えた種がすべて順調に育つわけではないことはわかっている。それでも、まったく結果が出ない時期が続くと、モチベーションに大きく影響しかねず、種まきを続けようとする手も止まってしまうかもしれない。
実際、仕事のために種まきをするときは3つの注意点がある。
ひとつは、あなた自身が「できるだけ同じ仕事を長く継続すること」である。つまり、あまり大きく仕事内容を変えないことが望ましい。転職して会社が変わるくらいならまだよい。財務から経理に仕事が変わるのもまだ許容できるが、たとえば人事や広報にあなたの仕事が変わったとしたら、あなたがこれまで培った経験も実績も人脈も、そしてあなたの仕事の評判までもいったん捨てることになりかねない。過去の経験を生かし、大きな職替えを実現して成功した人はたくさんいるが、その努力たるや並大抵のことではない。
たとえば、バスケットボールで成功した選手が別競技でも同じような成績と評価を残せるかというと、おそらくそうではないことを見ても、やはり自分の得意分野、そして成功している仕事は、できることならば長く続けるべきであろう。
2つ目の注意点は、「種をまく領域をあまり広げすぎないこと」である。幅広く人脈を広げていくことや、まったく関連性のない雑学を拾い集めるよりも、まずは核となる専門分野を作り、そこから派生させて新たな知識や経験を積み、人脈も広げていくのがいいだろう。実績に基づく評判も、やはり専門分野があってこそポジティブな印象になる。
メッセージ性の高い歌を多数作曲してファンの心を離さない歌手が、ドラマに主演して新たな魅力を見せてくれることがある。歌もドラマも中途半端にやるのではなく、まずは歌で圧倒的な支持を得ていたからこそ、こうした歌手が俳優の仕事をしても注目される気がする。テレビで見るマルチタレントの中には、何の芸を持っているのかわからない人も多い。ただある時期テレビの露出がやたら高くなる人はいるが、見飽きてきたころには自然と消えていく。ビジネスマンも、やはり核となる芸を磨くことが大切である。
3つ目は、「知らない人からもあなたに気軽にアクセスしやすいような状況を作っておく」ことだ。初対面の相手に電話するのは億劫でも、メールなら書きやすいという人は多い。また、ふと誰かに思い出してもらったときに、すぐにあなたに連絡が取れるようになっていなければならない。
つまり、あなたは不特定多数の世の中の相手に連絡してもらうためのすべとして、常にあなたのメールアドレスを提供しておく必要があるのだ。たとえば、最近はインターネットを利用して様々なリサーチをする人が多いため、あなたの所在が他人からすぐにみつかるよう、Facebookやリンクトイン(LinkedIn)のような実名のソーシャルメディアにアカウントを持っておくのがいい。もちろんGoogleなどの検索でヒットするあなた自身のブログやホームページを持っておくことも大切である。
情報発信のための自分メディアを持っている人には、実際に多くの情報が集まるものである。仕事の種まきは、双方向のコミュニケーションで成り立っている特徴があるため、今の時代、こうした数々の便利なツールを積極的に利用するといいだろう。
以上のように仕事の種まきを地道に続けていけば、あなたにもいずれ収穫の時が来る。
実際に収穫ができるようになると、ふと自分のこれまでの種まきがどのような成果をもたらしているか、しっかりと振り返ることもできるようになる。そこで気づくのが、どんな種まきが成果を出しているかという、いわば「種まきの勘所」である。どのような種がよく芽を出しているか、そして最終的な実りが多いのか、自分のパターンをよく分析してみることが大事である。
ちなみに多数派意見をご紹介しよう。それは、あまり損得勘定を意識しない種まきだ。これが結果として芽を出し、たくさんの作物をもたらしているという人は多い。つまり日ごろ仕事の種まきをするときは、あまりあからさまな見返りを相手に期待してはならないということである。
その点では子育てとも似ているかもしれない。たとえば、将来子供に老後の世話をさせようと本気で思って子育てをしている親は少ないだろう。親は子供の成長と幸せを願って子育てをするものであり、それは無償の愛情に他ならない。その結果、将来にわたり子供が親孝行をしてくれたとしたら、さぞかし幸せな老後になることだろう。まさにそれこそ種が芽を出し、実りの収穫の時を迎えたといえる。しかし実際の世の中は、親が子供に期待しすぎたときほど親子の人間関係はこじれるものである。
仕事の場で他人に無償の愛情を抱くことは難しいという意見もあるだろうが、若手の後輩を育てたり、パフォーマンスの悪い部下に対して熱意を持って指導することは、無償の愛情を提供することと近いイメージを持っている。
損得勘定を考えることに少しブレーキをかけるだけで、僕らがやれることはこの世の中にもっと増えていくのではないだろうか。
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