家は「道具」だ(4) - 住宅設計・構造設計 - 専門家プロファイル

小林 良
一級建築士事務所 DESIGN-SPEC 代表
東京都
建築家

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対象:住宅設計・構造

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家は「道具」だ(4)

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趣味から考える家づくり

「コインの裏と表、どっちも見せたい。でもコインは一枚しかない。あなたならどうしますか?」

さて、前回のこの問いであるが、答えは、

 

「正解はない」

 

である。「とんちかよ!」という非難をする前に、続きを読んでいただきたい。

まず、一番単純な論理でいくと、

「物理的に不可能」である。これは説明するまでもないだろう。

 

そしてもう一つは、

「<見える>という感覚は、人によって異なる」ということである。

これは、脳のシステムがそのようになっているのだから仕方のないことである。どんなに意識を共通化させようとしたって、根本的に無理なのである。だから、コインの表と裏を高速でひっくり返しながら、その残像をもって「両方見える」と思う人もいるだろうし、コインの下方に鏡をおいて、ちょっと斜めから見て「両方見えた」と思う人もいるだろう。さらに、裏面のコピーをとって、本物のコインの脇にならべて「両方見える」ということだってある。自分がちょっと考えただけでこの有様であるから、書き出したらきりがない。

つまり、人によって、いろいろな「見え方」があり、どれもがその人にとっては「正しい」と思う(実際には、そう思い込んでいるだけだが)。なので、正解というものは「ない」のである。

 

 

ここで誤解の無いようにしたいのだが、大事なのは、上記のような屁理屈っぽい論理なのではなく、世の中は、必ずしも一定の因果関係のみで成り立っているのではないということである。「問いがあり、正解がある」という構図は、ごく当たり前のこととして、日常ではあまり意識しないが、「答えが一つしかない」という感覚の方が異常なのである。

そして、この異常な構図の中に、ほとんどすべての消費活動が飲み込まれている。住宅設計も然り。

だから、冒頭のような問いをすると、かならずみんな「正解があるはずだ」という前提の元に思考を開始するのである。考えはじめの時点ですでに「ズレ」ているのである。

 だから、このことに気付かないまま家造りを始めると、住宅メーカーや工務店、設計事務所の「恰好の餌食』となるのだ。

(5)につづく。

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