今回のコラムは手術給付金の支払範囲の拡大についてです。
従来の医療保険の手術給付金は、約款で定められている88項目の手術しか対象になっていませんでした。
この88項目というのは、昭和62年に定められたもので、非常に簡単な手術や美容整形的な手術に関しては、支払い対象外となっています。
例えば、扁桃腺や子宮頸管ポリープの切除手術など、実施件数は多いのに、88項目に入っていないものもあり、一般の方にとっては「手術給付金が支払われるのかどうか」が非常にわかり難い状況だと思います。
契約者としては、ある程度の手術をすれば給付されるものと思っていたにも関わらず、給付されないということで、実際、保険会社への苦情件数でもこの手術給付に関する要件が上位に上がっています。
そんな苦情に対応するため、そして他社との熾烈な競争に打ち勝つためここ数年で、手術給付金の支払いを拡大している保険会社が出てきました。
保険会社各社で手術給付対象の範囲が違いますので、分かりやすく3つのパターンでご説明させていただきます。
1.88項目を対象とする従来のタイプ
一般的には、約款に別表として、次のように記されています。
「手術」とは、治療を直接の目的として、器具を用い、生体に切断、摘除などの操作を加えることをいい、手術番号1〜88が規定されています。
2.手術見舞金として支給
従来型の88項目を対象とし、それ以外の手術で、公的健康保険の対象となる手術に対して、手術見舞金として入院日額の5倍の給付金を支払う。
入院を条件とするかどうかで、以下の2つのタイプに分けられます。
・入院を伴う手術のみ:損保ジャパンひまわり生命「健康のお守り」、アクサ生命「セルフガード」、住友生命「ドクターOK」
・入院・外来いずれの手術も対象:アリコジャパン「新終身医療保険」「新医療保険」
外来でも給付される手術給付金かどうかは、領収書の「手術」欄の診療報酬点数に記載があるかどうかで判断できます。点数が記載されていれば、公的健康保険の対象になります。
3.公的健康保険に連動するタイプ
基本的に、公的健康保険の対象となっている手術を保障の対象とするものです。さらに、外来手術を対象とするかどうかで、以下の3つのタイプに分けられます。
・入院のみ:ライフネット生命「じぶんへの保険」(一律10万円の給付金)
・外来・入院とも対象:日本生命、第一生命(外来5倍、入院20倍)
・外来・入院とも対象、重大手術の保障を手厚くしている:アフラック「新EVER」(外来5倍、入院10倍、重大な手術は40倍)
アフラックの「新EVER」では、開頭・開胸・開腹などを伴う重大な手術では給付倍率は入院日額の40倍となっており、従来の手術名で倍率を判断する給付金よりも分かりやすくなっています。
以上の例に出させていただいた保険会社では、保障対象手術が拡大したことで、「せっかく保険料を払っているのに、手術給付金が受け取れない」というケースは減ります。
手術給付金の範囲拡大という最近の医療保険の流れは、契約者にとって喜ばしい傾向であることは間違いありませんね。