
- 尾上 雅典
- 行政書士エース環境法務事務所
- 大阪府
- 行政書士
対象:企業法務
- 村田 英幸
- (弁護士)
- 尾上 雅典
- (行政書士)
コミュニケーションの失敗事例から見る手続きのポイント(第3回目)
廃棄物処理施設設置許可申請の留意点(1)
廃棄物処理施設設置許可申請の留意点(2)の続きです。
今回は、「事前協議を経ない、事業者側の許可申請は合法か否か」についてです。
「行政指導」とは
今回の報道で問題となった「事前協議」とは、法律で定められた手続きではなく、円滑な許可手続きを進めるために、行政指導として、事業者が行政に対して「任意で」協力していた手続きです。
協力するかどうかは、あくまでも「任意」ですので、行政指導に従わねばならない理由はありません。
事業者側が行政指導に従わない旨の意思表示をした場合は、行政はそれ以上行政指導に従うことを強制できません。
いまだに、この辺りを誤解している行政官が多いのが現実です。
「事前協議を経ない業者には、業の許可を出せない」と平気で説明する人がいます。
行政指導は、行政上の一定の目的(今回の報道の場合は、円滑な許可手続きを進めること)を達成するため、事業者が任意に協力して進める手続きですので、本来は、それに従わないからと言って、ペナルティを与えられるものではありません。
許可するかどうかは、許可申請書の内容を許可基準に照らし合わせて問題がないかを審査し、行政が自ら判断するべきものです。
このように、今回の報道であった事業者が行った、事前協議を経ない許可申請行為は、違法な行為ではありません。
ただし、最初からいきなり完璧な内容の申請書を作成できることは非常に稀ですので、通常なら、事前協議をし、行政の意向を正確に把握しながら、許可申請書を作成するのが最善です。
報道されていた事業者サイドも、事前協議そのものを否定しているわけではなく、県側が協議に応じてくれないため、いきなり許可申請をしたという内容になっています。
「記載例」や「審査基準」の公開など、行政側の情報開示姿勢に依存する部分が多いのですが、こと産業廃棄物処理施設の設置や、産業廃棄物処理業の許可取得に当たっては、事業者側でもできるだけ許可基準の内容を把握しておくことが重要です。
それを把握しておくだけで、許可申請書の作成・修正時間を大幅に短縮することが可能となります。