従ってこれからは、医師・患者間でも部分的にせよ、ITを駆使した情報共有手法があって然るべきです。もちろんそれは「リアル」のコミュニケーション、つまり面と向かっての会話や診察、説明や質疑応答などの重要性を否定するものではありません。ITは所詮ITであって、本当に大切なのはリアルでのコミュニケーションです。
医師・患者間でITが特に有効に活用されるのは、生活習慣病や予防医療、慢性疾患ではないかと考えられます。それはこれらの疾患群では、医療機関よりは自宅や職場での本人の取り組みが極めて重要だからです。これに対して救急診療や急性疾患などでは、有効性は若干低下するでしょう。この場合は緊急性からして、リアルでのやり取りが優先されがちです。
つまり例えば、体重や体調の変化を患者本人が自宅で記録し、パソコン上の「自分専用のページ」に書き込みます。医師の側もそれを随時チェックし、必要に応じてアドバイスを提供できます。検査が行なわれればその結果も逐次アップされ、それに関するコメントも載せます。これらを受診前に医師・患者双方が情報共有できるのです。
さらに症状や検査結果などによって、不足している栄養素や、考えられる不調の原因などがリストアップされます。これらは膨大な医学上のデータや経験則に基づいて推論されるのです。そこから更に、推奨される食事療法やサプリメントなども提案されます。もちろん必ずそれに従わなければならない訳ではなく、どのような養生やサプリの選択をするかは、医師と患者が話し合いの上決めます。
すでに述べたように、医療機関と患者間の情報共有には大きく分けて「リアル」と「IT」の二通りのツールがありますが、目的は一緒です。つまり、医療者が患者に必要な情報を提供し、一方で患者の主観的な情報を医療者が確保した上で、診療のための重要な決定を下す、というものです。手段は変化しても、基本的な役割りは変化ありません・・(続く)
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このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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