- 瀬戸 孝之
- せと行政書士事務所 代表
- 大阪府
- 行政書士、1級FP技能士、宅地建物取引士
-
06-4400-3365
対象:老後・セカンドライフ
老後資金と公的年金制度―2026年の改正と今後の備え―
-
変わりゆく年金制度と老後の現実
2019年にいわゆる「老後2000万円問題」が社会的な注目を集めて以降、公的年金制度と老後資金のあり方は、多くの方にとって現実的な課題となってきました。それから約7年が経過し、2026年には公的年金制度が新たな改正局面を迎えます。
厚生労働省が公表している「厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、令和5年度末時点で公的年金の実受給権者数は3,978万人に達しています。公的年金は現在も、日本の老後生活を支える重要な社会保障制度として機能していますが、受給額は一律ではなく、加入期間や現役時代の就労形態、賃金水準によって大きな差が生じています。
2026年の年金制度改正のポイント
在職老齢年金制度の見直し
2026年4月から施行予定の年金制度改正において、大きな見直し点の一つが在職老齢年金制度です。厚生労働省の発表によると、働きながら老齢厚生年金を受給する場合に年金が減額される基準額は、現行の月51万円(2025年度)から、62万円へと引き上げられる予定です。
この見直しは、高齢者の就労意欲を阻害しない制度設計を目的としたものであり、一定の収入を得ながらも年金を満額に近い形で受給できる範囲が広がります。高齢期における「働くこと」と「年金を受け取ること」を両立しやすくする制度改正であるといえます。
賃金上限の引き上げと給付反映の考え方
あわせて、保険料および年金額の算定に用いられる標準報酬月額の上限も引き上げられます。賃上げが進む中で、月額65万円を超える賃金を得ている方についても、その賃金水準に応じた保険料を負担し、その結果が将来の年金給付に反映される仕組みが導入されます。
これは、負担能力に応じた保険料負担と給付の対応関係をより明確にする改正であり、現役世代と将来世代のバランスを意識した制度調整であると考えられます。
被用者保険の適用拡大と「106万円の壁」の撤廃
2025年に成立した年金制度改正法では、いわゆる「106万円の壁」を撤廃する被用者保険の適用拡大が決定されました。これにより、週20時間以上働く短時間労働者は、勤務先の企業規模にかかわらず社会保険に加入することとなります。
この改正は、働き方の多様化に対応し、就業形態による制度上の不公平を是正することを目的としています。今後は、厚生年金の被保険者である第2号被保険者の割合が増加し、将来の年金水準の底上げにつながることが期待されています。
公的年金額の実態と個人差
厚生労働省の「公的年金受給者に関する分析」によれば、公的年金の受給額には大きな個人差が見られます。特に男女差は顕著で、男性は約6割が月額15万円以上を受給している一方、女性は6割以上が月額10万円未満となっています。
また、就労形態別に見ると、正社員中心のキャリアを持つ方の平均年金月額は約16万6,000円であるのに対し、常勤パート中心の場合は約9万円、自営業中心の場合は約8万2,000円となっています。公的年金は制度としての公平性を持ちながらも、現役時代の働き方が結果として反映される仕組みであることがわかります。
配偶者の有無が老後に与える影響
夫婦世帯の場合、老後の生活設計では世帯全体としての年金額が重要な指標となります。厚生労働省の調査によれば、夫婦ともに65歳以上の世帯では、7割以上が月額20万円以上の年金を受給しており、平均は23万8,000円とされています。
一方、配偶者のいない女性の場合、平均年金月額は11万6,000円にとどまります。特に離婚により単身となった場合には、年金水準が大きく低下する傾向が見られ、老後資金の準備において、家族構成の変化が与える影響は小さくないといえます。
将来の基礎年金給付水準の見通し
令和6年に実施された財政検証では、将来の基礎年金の給付水準について複数のシナリオが示されました。経済成長が順調に推移した場合には、マクロ経済スライドによる調整が比較的早期に終了し、給付水準は概ね維持されるとされています。
一方で、経済状況が好調に推移しない場合には、調整期間が長期化し、給付水準が低下する可能性も指摘されています。この点については、基礎年金と厚生年金のマクロ経済スライドを同時に終了させる措置を講じる規定が追加されており、将来的な基礎年金の下支えに向けた制度的対応が進められています。
「老後2000万円問題」をどのように捉えるか
「老後2000万円問題」とは、すべての人に一律2000万円が不足するという意味ではありません。重要なのは、自身の年金見込額を把握し、想定される生活費との差を確認したうえで、不足分をどのように準備するかを考えることです。
厚生労働省のデータによれば、夫婦ともに正社員中心の世帯では平均年金月額が約28万7,000円である一方、夫婦ともに自営業中心の世帯では約17万4,000円にとどまっています。この差は、老後に必要となる自助努力の水準が、世帯ごとに大きく異なることを示しています。
結論:制度理解と主体的な老後設計の重要性
公的年金制度は、少子高齢化が進む中で持続可能性を確保するため、段階的な見直しが続けられています。2026年の制度改正は、高齢期の就労と年金受給の両立を促進し、人生100年時代における新たな老後像を支える重要な改正であるといえます。
老後資金の準備において重要なのは、公的年金制度を正しく理解し、自身の年金見込額を具体的な数字として把握したうえで、計画的な資産形成と生活設計を行うことです。年金見込額は「ねんきんネット」で確認でき、老後設計の出発点となります。
人生100年時代において、老後は単なる引退後の期間ではなく、新たな人生のステージです。制度を理解し、それを活用しながら、自助努力と就労の選択肢を組み合わせることで、安心と選択肢のある老後生活につなげていくことが可能になります。
▶ せと行政書士事務所の実務コラムのご案内
本稿では、公的年金制度の改正内容や制度の整理を中心に解説しました。
実際の相談現場では、「自分の場合はいくら不足するのか」「どの備えが現実的なのか」といった、より具体的なご相談が多く寄せられます。
こうした実務的な視点については、
せと行政書士事務所(大阪市北区)の現場・実態を詳しく書いた自事務所コラムも参照してください。
このコラムの執筆専門家
- 瀬戸 孝之
- (大阪府 / 行政書士、1級FP技能士、宅地建物取引士)
- せと行政書士事務所 代表
相続も老後も不動産もまとめて相談できる安心の専門家
相続・信託・後見・不動産・FPの専門知識を統合し、複雑な資産承継課題を体系的に分析・設計します。法律・税務・不動産が絡む高度な相談にも対応し、ご家族の最適解を導く実務家として、確かな根拠に基づく支援を提供します。
「お金・老後不安・FP視点」のコラム
長生きリスクを過小評価してはいけない理由(2026/01/08 09:01)
年金だけで暮らせる人・暮らせない人の分かれ道(2026/01/07 09:01)
このコラムに関連するサービス
対面 or リモート いずれも可能です。
- 料金
- 無料
相続・遺言・認知症対策・不動産のことで「何から考えればいいか分からない」という方のために、30分の無料相談を行っています。今の状況と不安を整理するところから丁寧にお話しします。「まだ早いかも」と感じている段階でも大丈夫。まずはお気軽にご相談ください。
このコラムに類似したコラム
長生きリスクを過小評価してはいけない理由 瀬戸 孝之 - 行政書士、1級FP技能士、宅地建物取引士(2026/01/08 09:00)
年金だけで暮らせる人・暮らせない人の分かれ道 瀬戸 孝之 - 行政書士、1級FP技能士、宅地建物取引士(2026/01/07 09:00)
家族信託の制度的仕組み 瀬戸 孝之 - 行政書士、1級FP技能士、宅地建物取引士(2026/01/06 09:00)
任意後見契約の法的性質――自己決定権を守るための「契約」という選択 瀬戸 孝之 - 行政書士、1級FP技能士、宅地建物取引士(2025/12/28 19:40)
人生100年時代のリスクマネジメント(健康) 齋藤 進一 - 建築家(2022/04/26 12:00)









