コンピュータ・ソフトウェア関連発明の成立性(第2回) - 企業法務全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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コンピュータ・ソフトウェア関連発明の成立性(第2回)

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コンピュータ・ソフトウェア関連発明の成立性
 〜精神活動が含まれる歯科治療システムの発明〜(第2回) 
河野特許事務所 2008年2月6日
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1.はじめに 
 特許法2 条1 項には「この法律で「発明」とは,自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。」と特許法で保護対象となる「発明」が定義されている。また,特許法29 条1 項柱書には「産業上利用することができる発明をした者は,次に掲げる発明を除き,その発明について特許を受けることができる。」と規定している。コンピュータ・ソフトウェア関連発明では,審査の対象がこれらの規定を満たしているかどうか(発明の成立性または発明該当性)が問題になることが多い。すなわち,「自然法則を利用しているかどうか(自然法則の利用性)」,「技術的思想であるかどうか」及び「産業上の利用性があるかどうか」である。「自然法則の利用性」については,特許庁の「審査基準」に特別の章を設けて判断の手順又は基準を定めている。
 「審査基準」では,自然法則以外にその利用が想定されるものとして,経済法則,人為的な取り決め,及び数学公式とならんで「人間の精神活動」が例示されており,発明がこれらに当たるとき,またはこれらのみを利用しているときは,自然法則を利用していないとして,特許法で定義する「発明」に該当しない,と規定している。
 本稿で取り上げる事案の特許出願は,発明特定事項に,人の精神活動が含まれている事などを理由に,自然法則を利用せず,と判断されて拒絶査定され,不服審判でも同様の審決がなされたものであるが,審決取消訴訟(平成19 年行(ケ)第10369 号)で一転して自然法則を利用していると認められ,審決は取り消された。
 コンピュータ・ソフトウェア関連発明の出願を取り扱う実務家からは,特許法による保護対象が広がるとか,請求項の作文上の制約が減るとか,歓迎の声が聞こえてきそうであるが,永年にわたって積み上げてきた発明の成立性(特に自然法則の利用性)の判断の基本的な考え方を変更すべきなのか,また,権利行使に際して人的要素をどのように考えるのか,問題を孕んだ判決であると考えられる。本稿では,自然法則の利用性に関する審査基準など,一般的な判断基準に照らしてこの判決の妥当性を考察する。
(第3回に続く)