KSR最高裁判決後自明性の判断は変わったか(4)最終回 - 企業法務全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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KSR最高裁判決後自明性の判断は変わったか(4)最終回

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KSR最高裁判決後自明性の判断は変わったか?(4)(第6回)
〜阻害要因(Teach Away)があれば自明でない〜  
河野特許事務所
米国特許判例紹介
Andersen Corp.,
Plaintiff-Appellant,
v.
Pella Corp. et al.,
Defendant-Appellee.
                       
                       2009年2月3日 弁理士 河野 英仁
                
 
6.コメント
 KSR判決後、自明性(米国特許法第103条)による拒絶を受ける割合が増加している、または、特許取得が困難になってきていると感じている読者が多いのではないだろうか。筆者は2007年9月に開催されたAIPPIボストン会議でUSPTOのDudas長官の講演を聞く機会を得た。その中で、USPTO長官は近年の特許登録率の遷移を示した。それによると、2000年以降70%以上であった登録率は、年々低下し、KSR最高裁判決後の2007年度末には、ついに約40%近くまで低下した。さらに、審判部が審査官の拒絶を支持する率は45%から56%にまで上昇した。

 これはKSR最高裁判決において厳格なTSMテストが否定されたことに起因するものであると考えられる。自明か否かは、先行技術に記載された教示・示唆・動機付けだけに拘泥すべきではなく、一般常識及び解決すべき問題の性質等をも考慮して総合的に判断される。

 しかしながら、多くの発明は既存技術の組み合わせであり、組み合わせのもととなる既存技術が全て存在するだけで自明と安易に判断される虞がある。本事件は組み合わせに際し阻害要因が存在する場合、自明でないと判断され、具体的にどのような場合に阻害要因となるかが判示された。

 KSR最高裁判決後、同じく阻害要因(Teach Away)の適用が争点となった事件として、In re Icon Health and Fitness, Inc.事件(Icon事件)がある。Icon事件では、トレッドミルに関する発明の自明性が争われた。Icon事件における発明のトレッドミルは折り畳みできるようガスバネを採用している。図4はIcon事件におけるトレッドミルを示す説明図である。また図5は先行技術となった折り畳み式ベッドを示す説明図である。

トレッドミルのガスバネは折り畳む方向に力が作用する点で、逆方向(ベッドを開く方向)に力が作用する先行技術とは相違する。CAFCはこの点、阻害要因を認めたものの、クレームは広く記載されており、当該力の作用に関する特徴が明記されていなかったため自明と判断された。

 自明性の判断は、クレーム、明細書、補正及び先行技術の内容により事件毎に相違するものであるが、阻害要因による反論の際に参照頂ければ幸いである。

判決 2008年11月19日
以上