
- 石川 智
- オフィス石川 代表
- 高知県
- ファイナンシャル・プランナー
対象:借金・債務整理
「生活困窮者支援の困難さの原因の一つとは?」~糖尿病治療の現場で聞いたコトバから考えた~
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先日、とある病院で診察を待っていたときの話です。
次の次が自分の番だったのですが、前の患者さんと先生のやり取りが、何となく聞こえてきました。
先生 「どうですか、何か、運動とかしてますか?」
患者さん 「いやあ、仕事が忙しいので、何も。。。」
推測するに、この方は糖尿病で治療をしており(インスリンレベルではないようですが)、ただ薬を処方されているだけのようです。
つまり、糖尿病になる根本的な原因である「生活習慣」は全く見直していないようでして。
先生 「あなた、こんな数値(血糖値)だったら、本当に将来何かが起こりますよ!」(結構なレベルの数値でした)
患者さん 「・・・・・・・・・・・」
先生 「この数値を今後もず~と続けていったら、本当に、あなた、体に何かが起こりますよ!」「あ~こんな数値でも、、、そうか何も起こってないのか、、、」
患者さん 「・・・・・はい。大きな病状の変化はないんですが、、、、、」
(このやり取りは事実に基いたフィクションですので、ご了承ください)
このやり取りを聞いていて思い浮かんだ状況があります。
例えば
「収支のバランスが著しく悪いのに、親御さんや親戚が、子どもや子ども夫婦のタメに、なんとか毎月のマイナス収支を埋め合わせしているケース」
例えば
「貯金があまり増えない状況を一家で理解しているのに、面倒くさいので支出の見直しにあえて取り組まないケース」
などなど。
つまり
「家計の状態はマズイような気がするけど、まあ今のところ何とかなっているし、いいんじゃないの」
というケースなわけです。
そして、このようなケースの人が「何のきっかけもない」状態でしばらく生活をして、数年後、本当に困った時にご相談に来られたが、借金や滞納で二進も三進もいかなくなってしまっています、なんていう具合です。
生活困窮者支援の現場にいて、実際のケースから本人にヒアリングしていてよくあるのは
「数年前に生活が困りそうになるきっかけがあったのに、本人がそれに気付かない、または事の重大さを認識できていないので、知らない間に(こういう認識が多いのですが)、こんなに借金が増えてしまい、差し押さえをされて、さらに仕事も辞めてしまいました、どうすればいいでしょうか?」
みたいな流れなんです。
そんな話を聞くたびに、「この人はなぜもっと早く気付かないんだろう」とか「誰かが何かアドバイスをしてあげればよかったのに」と思うわけですが、よく考えてみると、このお医者さんの言葉が全てを物語っています。
「人はすぐ目の前に困難がやってこないと、自分が置かれている状況が正確に認識できないし、本人からSOSが発信されないと、誰かがその人に関わることもないから、結局は、何もできない状態になってから、はたと事の重大さに、気づく」
また、このお医者さんの言葉で印象的だったのは、
「あなたは、なんとしてもこの状況を変えたいと、真摯に考えたことがあるんですか?」
という本人への問いかけでした。
確かに、自分を変えるチャンスは十分にあったはずですが、変化を求めて行動すれば、あなたの家計はこんな風に将来よくなるという「気付き」は全くなかったわけでして、その「気付き」が得られない環境にこそ、このようなケースの問題点なのかもしれません。
その事実に気付いて、それを変える方法を考えて実践する事を最優先に取り組くめば、生活困窮者の問題の「ある部分」は改善される可能性があると思います。
そんな事を、病院でのやり取りを聞きながら考えていました。
ではまた、お会いしましょう!
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