- 川尻 秀道
- ラウンジグループ株式会社 代表取締役兼CEO
- 東京都
- MBA留学と起業のプロ
MBAを取得して、新たなキャリアアップのための1つの選択肢に、「起業する」ことが考えられます。起業は、MBAで学んだすべてのことを最大限に活かし、自分の限界に挑戦できる絶好の機会でもあります。それゆえに、MBAを取得した多くの学生は一度は「起業」と言う選択肢を考えるのではないでしょうか。
MBAホルダーが起業して事業をどんどん拡大していくためには、強いリーダーシップが必要不可欠です。しかしながら、強いリーダーシップを発揮するのはそう簡単なことではありません。いくらMBAで経営のノウハウを学んだところで、すべてを教科書どおり実行できるわけではありませんし、中でも従業員との関わり方、従業員を理解しうまく動かすことは、経営の中でも一番難しい部分ではないでしょうか。
◆◆起業で失敗してしまう間違った5つのリーダーシップ◆◆
1.すべて自分でやろうとする。
MBAホルダーが起業で失敗してしまう原因は、従業員を信じることができず、すべて自分ひとりで完結してしまおうとすることです。事業家精神あふれる天才肌タイプの人は、他人を信じることができず、全て自分でやろうとします。特にMBA取得ほやほやのMBAホルダーは、最初のうちは、なんでも一人でできてしまうような錯覚に陥ります。それでも最初のうちは仕事は回りますが、事業が大きくなればなるほど限界を感じ、結果的に一人分の作業範囲でしか事業を成長させることができなくなります。
起業家の本当の役目は、事業をうまく回すための道具を従業員に渡して、起業家は自らがセットしたゴールに従業員全員が到達するようにうまく指導することにあるのです。人に任せられることはどんどん任して、自分は監督側に回るというのが、強いリーダーシップをもった起業家の役目といえます。
2.一度決めたことにこだわる。
一度決めたことにこだわって、それをやり抜き通すのは強いリーダーシップを持った起業家のように見えますが、実は全く逆です。
起業で成功しているMBAホルダーは、従業員に対して朝令暮改の指示を出します。つまり、従業員に対して朝の指示と夕方の指示が、全く逆の事だったりするのです。現代社会は、以前とは比べ物にならないほどの速度で変化が起きています。朝令暮改の指示を出す起業家は、そのことをよく理解しています。そのため朝の指示と夕方の指示が全く逆であることが起こりうるのです。新しい情報を仕入れれば仕入れるほど、自らの判断が頭の中でアップデートされ、それによって指示が変わってくるのです。いちど決めたことであっても、新しい情報が入ってくれば、それに応じて指示を変える。それが強いリーダーシップを持った起業家の特徴であるといえます。
3.従業員に休日に電話やメールをする。
起業家にとってプロジェクトや事業はとても大切なものです。彼らにとっては、事業は命の次に大切なものだといってもいいでしょう。それほどまでに、自分の事業に真剣になれるのは起業家として素晴らしいことだと思います。
しかしながら、それは起業家の考えであって、残念ながら従業員とってはプロジェクトも事業も一番大切なものではありません。起業家が思っている以上に、従業員はプロジェクトや事業に対しての情熱は持っていないのが現実です。
給料をもらっている以上、従業員は勤務日にはしっかり働きますが、休日は休日でプライベートの用事があります。休日に電話やメールの対応を求めるのは、ただ単に従業員のモチベーションを下げるだけの結果になってしまいます。
「経営者の視点を持て。」
「会社のお金は自分のお金だと思え」
こんなセリフが起業家から飛び出すことがよくあるのではないでしょうか。普通の従業員であれば、これはまったくもって謎の指令です。経営者レベルの権限も与えられていないのに、経営者と同じくらいの報酬をもらえるわけでもないのに、経営者視線を持つ事はできません。
会社の金を自分の裁量で使えるわけもないのに、会社の金を自分のお金だと思う事はできません。これは普通の従業員の感覚ではないでしょうか。
強いリーダーシップをもっている起業家はこのことをよく理解しています。
4.従業員の話を聞かない。
従業員の話を聞いて彼らの意見を積極的に取り入れ、戦略の判断の材料にするのは、起業家として基本中の基本です。全部ひとりで決めて、従業員を自分の手足としか思ってないようであれば、そのような起業家は成功する要素は全くありません。
その点、松下電器の創始者である松下幸之助氏は、従業員の話をじっくりと聞き、その意見を戦略に反映させる経営者でした。彼は従業員は自分よりもモノを知っている、優秀である、と言う考え方を持っており、自分ひとりでは何もかも決める事は出来ない事を十分と承知していたのです。
5.投資のリスクを負わない。
プロジェクトや事業が小さいうちは、最初は小さい資源で効果的に結果を出す方法を懸命に考える必要があります。
しかしながら、事業が大きくなってくれば、今までの利益を投入して成長を加速させるための投資をしていくべきです。失敗する起業家は、この大きな投資をするリスクを避け、従業員に経費削減ばかりを訴え続け、小さい投資のまま事業を進めようとします。
確かに資源を無駄遣いしてはいけませんが、ある程度のお金を投じて、効果的に投資をする必要があります。そして、できる従業員にはそれなりの報酬を与え、モチベーションを高めてもらうことも積極的に考えていく必要もあります。
◆◆まとめ◆◆
失敗してしまう多くのMBAホルダーがしてしまう間違ったリーダーシップ5つのNG言動です。
1.すべて自分でやろうとする。
2.一度決めたことにこだわる。
3.従業員に休日に電話やメールをする。
4.従業員の話を聞かない。
5.投資のリスクを負わない。
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