- 野平 史彦
- 株式会社野平都市建築研究所 代表取締役
- 千葉県
- 建築家
対象:住宅設計・構造
スウエーデン式では不同沈下が判定できない!?
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これからの家づくりの視点
何故、未だに地盤事故がなくならないのか?
2008-09-24 17:15
さて、上のグラフは「欠陥110番」に寄せられた苦情の種類とその件数を示したものです。
これを見ると、「雨漏り」についての苦情が最も多く寄せられていますが、その次の「外壁・内壁の亀裂」と「建物の傾斜」は明らかに地盤に起因する問題です。
現在、スウェーデン式サウンディング(SWS)試験結果から支持力を求め、住宅の基礎形式・構造に反映することが一般的に行われる様になり、裏付けとなる地盤の許容応力度や基礎の構造方法などについての法令も整備されて来たのですが、実は、住宅の不同沈下(軟弱地盤などの要因で、建物が不揃いに沈下を起こすこと)''事故は一向に減っていない''のです。
その原因はSWS試験にあります。この試験は、先端に金属製のスクリューポイント(やりの様な鋭い先端部)を取り付けた金属棒の上部に重りを載せて回転し、貫入させる方法を取りますが、金属棒が深さ25cm貫入するまでにかかった半回転数を使って地盤の許容応力度を算出するものです。許容応力度とは地盤の硬さ、支持力の強さを意味します。
ところが、地盤の支持力と沈下は全く異なる現象なのです。即ち、SWS試験では支持力を求める事しかできず、沈下を判定することができないのです。
SWS試験の欠点は、地盤の見かけ上の強さだけを見て、土自体の性状を全く確認する事がない、ということにあります。地盤を構成している土が、砂質なのか粘土質なのか、関東ロームなのか、土の性質が不同沈下に大きく関わっているのです。
本来、一般にボーリング調査と呼ばれる標準貫入試験を行うのが現在最も信頼性の高い地盤データを得る事ができるのですが、1本20万も30万もする調査を行うのは施主の負担が大きいので、安価なSWS試験が採用される場合が多いのです。そのため、山を削って谷を埋め、平らにした宅地造成地などではSWS試験では判定できない不同沈下事故が起こってしまうのです。
(次回に続く)
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