blog201403、知的財産法 - 民事家事・生活トラブル全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
村田法律事務所 弁護士
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blog201403、知的財産法

・ジュリスト2011年11月号「不正競争防止法の平成21年改正~営業秘密を保護するための刑事訴訟法手続の特例」
・『新・裁判実務体系22著作権関係訴訟法』青林書院
・大渕哲也『知的財産法判例集(補訂版)』、有斐閣
・ケンタッキー・フライド・チキンという商標権について
・不正競争防止法2条1項1号・2号の「混同」、周知商品等表示混同惹起行為(不正競争防止法2条1項1号)、著名商品等表示冒用行為(不正競争防止法2条1項2号)にいう他人の商品・役務の表示等との「混同」
・商品形態模倣(不正競争防止法2条1項3号)
・意匠法の意匠の成立要件(意匠法2条1項)
・現代企業法研究会『企業間提携契約の理論と実際』
・知的財産権法の読んだ本(その2-1、2-2)


ジュリスト2011年11月号、「特集 不正競争防止法の改正」
 改正法や新法ができると解説本が多数出版されるが、不正競争防止法のように数年ごとに改正されている法律について、その後の改正をフォローするのは難しい。法律改正を簡便に知ることができる点で、有益な雑誌である。
上記書籍のうち、以下の部分を読みました。
「不正競争防止法の平成21年改正~営業秘密を保護するための刑事訴訟法手続の特例」
 営業秘密は公に知られていないこと(秘密性)が要件なので、公開の裁判では、かえって秘密性が失われることから、裁判の公開を制限する特例が設けられた。


『新・裁判実務体系22著作権関係訴訟法』青林書院
2004年刊。裁判官・学者による共著である。
上記書籍のうち、以下の部分を読みました。
「プログラム著作権侵害訴訟における審理」
 プログラムの著作物関係として、印刷・画面での侵害とプログラムの著作物での侵害の双方が有り得る。
 証拠の分量が大量になりやすいので、代表的な侵害部分に絞って、争点整理をする審理方法は参考となる。
「著作権侵害訴訟における和解」
比較的著名な著作権侵害事件の和解条項の実例が掲載されている。
ただし、和解条項の作成方法の一般論が述べられていないので、やや不満が残った。強いて言えば、侵害者側は侵害の事実を認めずに、解決方法(氏名表示、著作権譲渡、和解金など)を定めているようである。
また、謝罪広告は、和解条項には入れないのが通例のようである。もっとも、マスメディア・雑誌などが関係する事件では、別論であろう。
 本稿では指摘されていないが、侵害者が再度著作権侵害しないこ0とを約束する条項を定めるべきであろう。
「キャラクターの侵害」
 漫画ポパイ事件の最高裁判例は必ずしもキャラクターだけで著作物とはいえないとしている。
 しかし、キャラクター自体が、美術の著作物に該当する場合には、あえて著作物性を否定する必要はないと解されている。
 ファンシフル・キャラクター、オリジナル・キャラクター、ストーリー性のあるキャラクターかによって、判断基準が異なるものではなく、その本質的特徴を感得できるかどうかによって、著作物性、著作権侵害の成否を決定するとういのは、判例の判断基準と一致する。
 2次元の著作物を3次元にした場合、本質的特徴に付加した部分があるかどうかというキューピー人形事件の判断基準は、2次元の原著作物で表現されていない部分について3次元で表現した場合に付加された部分が創作的表現か、3次元著作物が2次元著作物(原著作物)の本質的特徴を感得できるかという判断基準であり、上記の判例の一般論を応用したものである。
 オリジナル・キャラクター、ストーリー性のあるキャラクターの場合には、そもそも何の説明がないわけではなく、背景、人物の設定、特徴、特異な容貌・姿態などの要素が付加されているから、著作権侵害の成否を決めやすい。
 言語の著作物を美術の著作物にした場合も、同様であり、原作である言語の著作物を利用した美術の著作物は、二次的著作物である(キャンディ・キャンディ事件)。
「デジタル・コンテンツと著作物性」
 私見として、デジタル・コンテンツについて、静止画と動画に分けるべきであろう。
 静止画は、美術の著作物の侵害と同じ判断基準により、かつ、インターネットにおける送信可能化権・公衆送信権の侵害を加味して考えれば足りる。
 本稿では指摘されていないが、動画については、映画の著作物およびプログラムの著作物と同様の考え方が妥当する。著者は、動画のストーリーは保護対象にならないとしている。単なるアイディアに過ぎない場合は、著作権法で保護されない。しかし、判例によれば、映画の著作物の場合には、ロール・プレイング・ゲームであっても、ストーリー改変は、同一性保持権・翻案権の侵害に該当する。インターネットを利用した場合には、送信可能化権・公衆送信権を侵害する。
 有償の素材集については、原則として対価を得て利用許諾をしているに過ぎず、著作権を留保している点には注意が必要である。ましてや、無償で公開しているブログなどは、対価すら得ていないので、利用許諾すらしていないと考えられる。
 本稿では、自動生成物について、著作権者を観念できないとされる。しかし、私見では、翻訳ソフトなどのソフトウェアを用いる場合には、コンピューターやソフトウェアを操作している人間を想定できる。ただし、原著作物のデッド・コピーや改変物に過ぎない場合は、著作物性がなく、同一性保持権・翻案権・複製権等の侵害となると解される。
「インターネットと著作権」
 著作権法は、有形的再製を複製とし(21条)、無形的な利用方法を21条の2~26条の2で規定している。インターネットに関しては、著作権侵害かどうかは、著作権の支分権である送信可能化権・公衆送信権でほぼ対処できるというのが、現在の判例である。したがって、今日では、複製権侵害かどうかを議論する実益は失われた。
 自分のホームページに他人のホームページを表示するリンクについては、考え方が分かれる。単に他人のホームページのURLを表示しているだけならば、侵害とならない。しかし、侵害者が他人のホームページを取り込んで、侵害者が侵害者自身の広告などに利用しているような場合には、引用には該当しないとして、むしろ侵害者が他人の著作権者をただ乗りしていると同様であるという考えにより、著作権侵害を肯定した裁判例がある。
本稿が著作権侵害の成否について、アメリカのプロバイダー法を参照している部分は、著作権侵害者の責任と、単にデジタルデータが経由しているに過ぎないプロバイダーの責任を混同している。プロバイダーを経由するデジタルデータには、著作権があるもの・ないもの、著作権を侵害しないもの・著作権侵害になるものが混じっており、プロバイダーには通常区別できないからである。
アメリカ法を手本にした日本のプロバイダー責任制限法でも、上記と同じ立法趣旨である。


ケンタッキー・フライド・チキンという商標権について
考えてみると、ケンタッキー・フライド・チキンのうち、フライド・チキンは商品の製品の調理法・製法もしくは商品そのもの指す、ありふれた普通名称である。商標法3条1項1号、2号、3号に該当し、登録拒絶事由である。例えば、フライド・ポテトについては独占権がないことは異論がない。
ケンタッキーについては、創業者の出身地ないし、アメリカ合衆国ケンタッキー州風味のフライド・チキンであると理解できる。商標法3条1項3号により、産地等については登録拒絶事由である(ワイキキ事件、ジョージア事件)。
 また、ケンタッキー・フライド・チキンは、KFCという略称を用いているが、英語のアルファベット3文字の組合せでは、識別性がないので、登録拒絶事由である(商標法3条1項5号)。
カーネル・サンダースの肖像を含む人形は著名である。この人名は、同社の創業者として、著名である。
そうすると、上記の個々のものは、単独では、識別性がないと思われるが、多方面にわたる多額の広告宣伝により、特別な識別性を有すると考えられる(商標法3条2項)。
(商標登録の要件)
商標法第3条  自己の業務に係る商品・役務について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。
一  その商品・役務の普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
二  その商品・役務について慣用されている商標
三  その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、数量、形状(包装の形状を含む。)、価格・生産・使用の方法・時期又はその役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、数量、態様、価格・提供の方法・時期を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
四  ありふれた氏・名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
五  極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標
六  前各号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品・役務であることを認識することができない商標
2  前項第3号から第5号までに該当する商標であっても、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品・役務であることを認識することができるものについては、同項の規定にかかわらず、商標登録を受けることができる。


大渕哲也『知的財産法判例集(補訂版)』、有斐閣、2010年
上記書籍のうち、意匠法、不正競争防止法の部分を読み終えました。
採録されている裁判例は210件である。
もっとも、採録範囲は、下記の判例百選3冊と重複するものが多い、または、古い裁判例が多い。基本書で取り上げられている裁判例も多いし、説明も簡潔で要点を押さえているので、裁判例について、もう少し詳しく簡便に知りたいときに便利である。
特許法、実用新案法は『特許法判例百選』
意匠法、商標法、不正競争防止法は『商標・意匠・不正競争判例百選』
著作権法は『著作権法判例百選』


不正競争防止法2条1項1号・2号の「混同」
周知商品等表示混同惹起行為(不正競争防止法2条1項1号)、著名商品等表示冒用行為(不正競争防止法2条1項2号)にいう他人の商品・役務の表示等との「混同」について、他の商品・役務等表示に用いられているかのごとき誤解を与えかねない「希薄化(ダイリューション)」、他人の商品等のイメージを悪化させる冒用(ポリューション)をも含むと解されている。
最高裁判決平成10・9・10(スナック・シャネル事件)は、シャネル・グループと同一または緊密な商品・役務の営業上の関係があると誤解させかねないから、「混同」を肯定している。
その他、不正競争防止法の「混同」を肯定した裁判例として、ヨドバシ・ポルノ事件、ポルノランド・ディズニー事件(この2件はいずれもポルノ関係の店)、(ラブホテル)ホテル・シャネル事件等がある。


商品形態模倣(不正競争防止法2条1項3号)
商品形態模倣に該当するかが問題となった裁判例
・アップル社のコンピューター「iMac」に対して、ソーテック社が後発で類似したデザインのコンピューターが商品形態模倣とされ、東京地方裁判所で差止請求等が認められている。
・「シーフードヌードル」のデザインに類似したカップラーメンについて訴訟提起したが、和解した事例
・小熊タオルセット事件では、小熊の人形、各種タオル、タオルハンガー、カゴの組合せについて、商品形態模倣に該当することを肯定した裁判例がある。
下記のように商品形態模倣に該当しないと判断した裁判例と比較して、緩やかな判断ともいえようが、小熊のキャラクターとその商品であるタオル、詰め合わせの箱まで模倣しているので、肯定されたとも考えられる。
この点、そっくりそのまま真似ではなく、キャラクター、あるいは、商品が違えば、熊の人形そのものは、ありふれているので、否定される可能性が強いのではないかと思われる。
「通常有する形態」を理由として、否定した裁判例
・宅配寿司のフランチャイズ
・エアーソフトガン
・デザイン家具
・収納ケース
「通常有する形態」に該当しないとした裁判例
・携帯電話機用アンテナ
・小型ショルダーバッグ
・カタログ衣料品
「模倣」に該当しないとした裁判例
・ドラゴン・キーホルダー事件控訴審
不正競争防止法2条1項3号の請求主体として、自ら費用、労力を投下して商品を開発して市場に置いた者であることが必要があると解されている。
なお、エルメス・バーキン事件は否定例であるが、請求主体で否定されただけで、エルメスの商標権者・販売元が請求主体であれば、商標権侵害、あるいは、著名商品等表示(不正競争防止法2条1項2号)が肯定されると解される。


意匠法の意匠の成立要件
意匠とは「物品(物品の形状を含む。第8条を除き、以下同じ)の形状、模様、色彩またはこれらの結合が視覚を通じて美観を起こさせるもの」である(意匠法2条1項)。
その他、新規性、創作性などの要件が必要である。
 意匠法2条1項にいう物品全体の意匠(全体意匠)として、
(1)互換性を有すること
(2)通常の状態で独立して取引の対象となること
が必要であると解されている。
肯定例として、レコードプレーヤー用ターンテーブルについて、ターンテーブルだけで、意匠法の対象となると解されている。
 その他の具体例として、オートバイや自動車の側面ミラーなどがある(渋谷達紀『知的財産法』参照)。
もっとも、平成10年改正により、意匠法2条1項かっこ書きに「物品の部分を含む」と改正されたので、物品の部分にかかる意匠(部分意匠)も含まれるようになったので、上記の解釈論争は意義を失った。

模様には該当しないローマ文字を含んでいても、その余の形状、模様、色彩またはこれらの結合が視覚を通じて美観を起こさせるものに該当するから、意匠法の成立要件をみたす(CUP NEEDLE事件)。
なお、カップヌードルの上記の意匠権は存続期間が満了しているが、商標権による保護、周知商品等表示混同惹起行為(不正競争防止法2条1項1号)、著名商品等表示冒用行為(不正競争防止法2条1項2号)により、対処することが考えられる。なお、発売後3年を経過しているので、商品形態模倣(不正競争防止法2条1項3号)では保護できない。


現代企業法研究会『企業間提携契約の理論と実際』
判例タイムズ社、2012年
今日までに、上記書籍のうち、以下の部分を読みました。
「6 株式の持ち合い」
 株式の持ち合い(相互保有)の機能について、取引先の場合、非上場企業であっても、株主であれば、当然に企業の支配状況・財務内容などをモニタリングできるという実際上の機能の指摘が抜けていた。
株主であれば、少なくとも年1回開催される株主総会に出席して、主要株主や経営陣の動向(ガバナンス)を把握し、決算書を入手できる。
バブル崩壊前のメインバンクであれば、非上場会社であっても主要な融資先について、独占禁止法・銀行法に規定されている相手先企業の株式割合が5%以下という制限があっても、株式を保有していたのは、上記のようなメリットがあったからである。
昨今、銀行の財務体質改善のために、銀行が保有株式を放出して、株式の相互保有が崩れたが、それとともに、取引先企業に対するモニタリング機能が低下している。
そして、そのような歴史を知らない世代の銀行員がいとも簡単に取引企業の財務書類が入手できるとか融資先のガバナンスの情報を取得できるとか錯覚しているのは、上記のような「実務上の智恵」を知らないからである。
考えてみればわかるであろうが、年1回だけでも、役員全員や主要株主の人間関係を観察し、その動向を把握する機会があるというのは、実務的には意義が大きい。株主でもない外部の人間に「我が社の内情」をわざわざ見せるはずもない。
また、旧独占禁止法9条の改正により、銀行・保険会社以外の事業会社について、株式の保有制限がなくなった。事業会社であれば、安定株主対策目的や取引先と商売上の付き合いだけでなく、株式を相互保有することによって、少なくとも年1回開催される株主総会に出席して、主要株主や経営陣の動向などの企業統治(ガバナンス)を把握し、決算書を入手できる。それによって、取引先の情報を確実に入手できるツールの1つであり、また、今後の商売上の付き合いを継続すべきか・拡大縮小すべきか、あるいは平常時からの債権保全の手段の1つでもあるからである。
「8 共同研究開発契約」
本稿は、民法上の組合、有限責任事業組合契約に関する法律の有限責任事業組合契約に関して検討している。
しかし、共同研究開発契約には、合弁会社、委託契約、商法上の匿名組合、事業者団体、中小企業等協同組合法に基づく協同組合、ライセンス契約、出資や資金貸与などを行う形式などのさまざまな法的形式が考え得る。これらの論点について、本稿は検討していない。
なお、本稿では「ライセンス」を独占的実施権のみを指す用語に理解しているが、適切ではない。また、実施権がある場合、特許権の準共有者に対して影響を与えないかのごとき記述があったが、大きな誤解であろう。
特許法改正により、特許権が移転等した場合にも、移転前に設定された通常実施権は、登録なくして、特許権の譲受人に対して対抗できる(特許法99条)点の指摘が抜けている。
また、職務発明(特許法35条)について、対価の点の検討が抜けていた。職務発明の対価についての分担などをどのようにするかは1つの問題である。
また、本稿では、独占禁止法上の取扱いの検討がされていない。
一方的に知的財産の成果物を委託者に帰属させるのは、優越的地位の濫用に該当する(優越的地位濫用ガイドライン)。
また、公正取引委員会によれば、下請代金支払遅延等防止法にも違反する場合があると解されている。
また、情報交換が独占禁止法(不当な取引制限または、不公正な取引方法)に該当するかが問題となる場合がある。
有限責任事業組合契約に関する法律についての記述は、おおむね妥当であろう。
本稿では検討されていないが、大学等における技術に関する研究成果の民間事業者への移転の促進に関する法律も問題となる。
「9 企業間提携契約と継続的契約」
本稿は、平井宣雄教授、内田貴教授の学説を検討している。しかし、中田裕康教授に依拠しているとしつつ、中田教授の見解を紹介していないのは、学説上のプライオリティを遵守していない。
無償契約について補償を要するとの見解は、やや違和感を覚える。例えば、有償委任の場合の解除の損害賠償、役員の解任の場合の損害賠償のような事例は、いずれも、有償契約が前提だからである。もっとも、例えば、無償使用貸借契約のように、事前に予告期間を置くべきとするのは、賛同したい。ただし、企業間で、全くの無賞という事例は想定するのは困難だが。
履行利益と信頼利益の区別がよくできていないようである。ただし、平井宣雄教授、内田貴教授ともに、両者の利益を峻別する通説に批判的である。そして、裁判例も、必ずしも、両者の利益の名称にとらわれずに、具体的事案に応じて、相当因果関係のある損害の場合に限って、損害賠償を認めているのではないかという一部の学説の指摘もある。
本稿では指摘されていないが、資生堂事件、花王事件の最高裁判決においては、継続的契約の打ち切りについて、「やむを得ない理由」は必要ないが、「正当な理由」は必要であると解されている。
某週刊誌が鉄道会社を批判する記事を掲載したところ、当該掲載号から、鉄道会社での売店での当該週刊誌の販売打ち切りをしたため、雑誌会社が鉄道会社に継続的契約の地位にあるという仮処分を起こして、結局、契約を継続する和解で終了した事件があるが、そのような指摘が抜けていた。
下請代金支払遅延等防止法が関係する場合には、下請代金支払遅延等防止法を遵守すべきである。この点の指摘が抜けていた。
また、継続的契約について、企業間であれば独占禁止法、(事業者と消費者間では特定商取引法、消費者契約法なども)が問題となる。この点の検討も弱いようである。
「10 OEM契約」
OEM契約に含まれる契約類型と関連する法律が列挙されている。
民法(売買、請負)
商法(商事売買、商行為法)
独占禁止法
下請代金支払遅延等防止法
製造物責任法(なお、OEM契約当事者間では債務不履行・契約責任も問題となる)
保険法(生産物責任保険と免責特約)
知的財産法として、特許法・実用新案法、意匠法、商標法、不正競争防止法(営業秘密)
外為法
租税法
仲裁法(商事仲裁)
「11 企業提携交渉をめぐる法的諸問題」
信義則に基づいて情報提供義務が認められている。
契約の相手方の救済万円手段として、
契約の相手方の虚偽の情報提供・不告知(秘匿)による詐欺に基づく契約の取消、
錯誤による契約の無効、
不法行為に基づく損害賠償請求、
契約締結上の過失に基づく損害賠償請求、
が考えられる。
なお、詐欺に至らない程度の不実告知などについて、民法改正で問題とされている。
情報提供義務の対象が何についてかは、問題となるが、契約類型・契約を締結しなかった理由などによって異なる。
もっとも、上場企業の場合、情報は企業自ら収集すべきとして、相手方企業は積極的情報提供義務を負わないとされた裁判例もある。また、提供義務があるかどうかは、情報の内容にもよるであろう。そのため、M&Aなどでは、デューディリジェンスが重要とされている。
契約を締結しなかった理由として、何が正当な理由に該当するかが問題となるが、当初予想できなかった事情が判明したなど、事案によって異なるであろう。経済的な不況が深刻化したという程度では、正当な理由ではないと解した裁判例もあるが、他方、家賃保証システムで保証すべき家賃が契約交渉中1年間に変更になったことが正当な理由とされた裁判例もある。
なお、バブル崩壊でも事情変更の法理が適用されないと 最判平成9・7・1は判示したが、サブリースに対しても借地借家法による賃料減額できると判決しているので、傍論にとどまる。
 損害賠償の内容については、履行利益ではなく、信頼利益にとどまると解されている。
 中間合意のうち、レターオブインテント(M&Aの基本合意書)の独占的交渉条項について、最高裁のUFJ事件の仮処分事件は法的拘束力を認めたが、近時のM&Aは、いきなり基本合意だけではなく、段階的に中間合意を積み上げていく方式がとられているようである。もっとも、同事件の本案訴訟では、信頼利益しか認められず、東京高等裁判所で和解で終了している。
 M&Aでは、表明保証条項が必要であるが、第三者に保有株式を売却するような事例では有効であろうが、合併・会社分割などでは相手方が自社に吸収されたり、事業譲渡では相手方が清算してしまうなどによって、義務を履行する相手方が存在しない場合も多いので、実効性については、悩ましい問題である。
「12 合弁事業者の法形態選択」
合弁事業の形態として、株式会社、合同会社、有限責任事業組合契約に関する法律に基づく有限責任事業組合(LLP)、組合を比較している。
1、 合弁事業の契約を会社などにどう反映させるか(株主間契約、定款など。なお、株主間契約の契約当事者は株主であって、会社ではないから、株主間契約に会社は拘束されないと解されている。)
2、 出資比率
3、 事業形態の設立の費用・登記
4、 不動産の登記
5、 知的財産権の登録
6、 業務執行者
7、 機関設計・権限分配
8、 重要事項の決定(議決権行使)
9、 損益分配・損失負担
10、 資金調達
11、 合弁事業の終了
12、 出資持分の譲渡制限(好ましくない第三者が加入することの防止)
13、 出資持分の譲渡・払い戻し、先買権、買取請求権(プットオプション)、譲渡価格・清算の際の価格の取り決め
14、 構成員の脱退の防止(有効な対策はない。)
15、 金融機関・取引先からの評価(本稿では指摘されていないが、金融機関に対しては融資の際に定款を提出する必要があり、定款に構成員の権利義務が詳細に規定されていれば、金融機関がどう評価するかは問題である。)
16、 第三者に対する損害賠償責任(本稿では指摘されていないが、どの事業形態を選択しても、会社そのもの、あるいは、業務執行の担当者の所属する会社に対して、使用者責任などが追及される可能性がある。)
17、 構成員の倒産リスク(本稿では指摘されていないが、上場企業どうしの建設事業の共同事業で、組合の構成員企業が法的倒産し、他の構成員企業が損失を負担した事例が過去にあった)
18、 合弁事業や構成員に対する課税
なお、本稿では指摘されていないが、株式会社以外の法律請負形態であれば会計監査人設置会社とする必要がないのがメリットであるとの指摘があったが、私見では、逆に会計・監査の面でのデメリットになると思われる。上場企業の場合、連結対象であれば、監査の対象になる。また、法人税法上、連結対象とされていなくとも、税務調査の対象となる。
組合は、特定の商品・役務、建設事業の共同受注に向いているとされている。また、本稿では触れられていないが、映画の「製作委員会」方式も該当すると解される。
「15 企業間提携契約としての技術ライセンス契約とその条項」
特許権等侵害訴訟で和解した場合のライセンス条項が不抗争条項であるとの記述には疑問がある。ライセンス契約であれば、実施料(ロイヤリティ)、クロス・ライセンス契約などの定められることが多い。
「17 映画製作に関する提携契約」
 映画製作について、製作委員会方式と匿名組合方式を比較している。
 製作委員会方式
 組合と解されている。
金融商品取引法が適用されない。
 著作権が製作委員会の共有となる。しかし、本稿では指摘されていないが、契約により、著作権を1社に集中させる方策を取ることができる。ただし、出資、売上、収益分配と損失負担に応じて、あえて映画の著作権を準共有とするようである。映画の場合、ヒット作となる可能性もある反面、製作費すら回収できない場合も多いからである。
 著作権の存続期間が長期間のため、構成員の変動・倒産が有り得る。
 また、著作権の先買権条項を定める必要があるとされている。しかし、組合財産として、合有であれば、特に規定を設けなくとも、構成員が倒産した場合、脱退により、清算する必要がある。
また、本稿では指摘されていないが、著作権が組合財産や準共有の場合、譲渡・質入には著作権の共有者の同意が必要である。したがって、著作権の持分を処分しようとした場合、構成員の全員の同意が必要である。そのため、先買権条項を設けておかなくとも、予期しない第三者が加入してくるリスクはあまり考えられない。
本稿では指摘されていないが、譲渡価格について紛争になるケースが考えられるが、倒産の場合には清算価値である。もっとも、ヒット作品の場合、将来の収入が見込めるため、ことに対価について深刻な対立が生じることも考えられないではない。もっとも、著作権の持分には構成員全員の同意が必要となるため、反対する一部の構成員がいる場合には、対処が必要である。
製作後、新たな二次的利用が出てきた場合に著作権の持分処分に該当するため、どうすべきかについて、組合方式では難点があるとされる。しかし、本稿では指摘されていないが、二次的利用の場合、利用者に必ずしも著作権の持分の共有や支分権を譲渡する必要はなく、当該支分権に対して使用許諾を与えロイヤリティを取る方式で対処できる。例えば、商品化事業(マーチャンダイジング)の場合、商品について、非独占的な許諾を与え、生産量ないし売上に応じた使用料を取る方式である。非独占的な使用権の場合、複数の相手方に重複して許諾を与えることができるのもメリットである。有体物と異なり、著作権では使えば使うほど価値が増す特徴があるからである。また、本稿では指摘されていないが、衛星放送・インターネットが想定されていなかった時代に、衛星放送権・公衆送信権についても許諾を与えたと解している裁判例もあるが、組合方式の場合には、映画の著作権が組合財産と考えれば構成員の合有であるから、処分について構成員の同意を得ていないとして、別の考えが成り立つとも解される。実務上はむしろ、持分譲渡ではなく、許諾を与える方式が普通であろう。
原作・原画・音楽などのクラシカルオーサーの場合、当該原作等が著作権侵害した場合、第一次的には製作委員会が対処する必要がある。その場合の費用・損失分担について、本稿では指摘されていないが、あらかじめ構成間で契約で取り決めておく必要があるが、何も定めていなかった場合、組合法理ないし持分に応じた損失負担となろう。
匿名組合方式の場合、金融商品取引法の集団投資スキームに該当するため(金融商品取引法2条2項5号)、金融商品取引法上の規制が適用される。また、本稿では指摘されていないが、金融商品の販売等に関する法律が適用されるかが問題となる。ただし、匿名組合の場合、著作権を集中させることができるメリットがある。
匿名組合の出資者が一般人と事業者・投資ファンドがあるとされるが、本稿では指摘されていないが、この場合の一般人は資産家・投資家などであろう。ただし、適格投資家の場合、金融商品取引法では、別の規制が適用される。
課税について、本稿では指摘されていないが、フィルム・リース事件がある。