Blog201403-3、金融商品取引法(判例百選-1) - 民事家事・生活トラブル全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
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Blog201403-3、金融商品取引法(判例百選-1)

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金融商品取引法判例百選 (別冊ジュリスト 214)/有斐閣
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Blog201403、金融商品取引法(判例百選-1)

・無断売買(金融商品取引法)
・信用取引(金融商品取引法)
・金融商品取引法による損失補てん等の禁止
・金融商品取引業者の外務員


無断売買(金融商品取引法)
現行の金融商品取引法では、金融商品取引業者の無断売買を禁止している(金融商品取引法38条7号、金融商品取引業等に関する内閣府令117条1項11号)。そもそも、私法の一般原則として、本人に無断でなされた法律行為は、本人に効果が帰属しない。また、金融商品取引業者は問屋であり、顧客との間に、委任・代理に関する規定が適用される(商法552条2項)ので、顧客の具体的注文のない無断売買は無効である。
また、信用取引において、金融商品取引業者等またはその役員等は、顧客の信用取引を、自己の計算においてする買付け・売付け(取引一任契約の場合も含む)と対当させ、かつ、金銭・有価証券の受け渡しを伴わない方法により成立させた場合において、当該買付け・売付けに係る未決済の勘定を決済するため、これと対当する売付け・買付けをすることが禁止されている(金融商品取引法38条7号、金融商品取引業等に関する内閣府令117条1項24号)。

最高裁判所第2小法廷判決平成4年2月28日、損害賠償請求事件
裁判集民事164号113頁、判例タイムズ783号78頁、金融商品取引法判例百選45事件
【判決要旨】 証券会社の従業員が顧客の信用取引口座を利用して無断売買をし、その結果生じた差損などに相当する金員をその顧客の信用取引口座から引き落とす処理がされたとしても、顧客には無断売買の効果が帰属しないから、差損金相当の損害が生じたものということはできない。
【参照条文】 旧・証券取引法49条、商法552条、民法644条、民法415条
 一 本判決は、信用取引の顧客である投資家Xが、Y証券会社の従業員の無断売買によって生じた差損等に相当する金員をXの信用取引口座から引き落とし処理されたとして、Yに対して右引き落とし処理にかかる金員と同額の損害賠償を請求する事案につき、証券会社の従業員が顧客の信用取引口座を利用して無断売買をした結果生じた売買差損などに相当する金員が右信用取引口座から本件引き落とし処理されても、その効果は顧客に帰属せず、右処理は顧客が証券会社に対して有する委託証拠金や売買差益金などの返還請求権に何らの消長を及ぼすものではないから、顧客に右金員相当の損害が生じたものということはできないとして、これと同旨の原審の判決を正当として是認したものである。
 二 Xは、昭和59年2月8日に信用取引口座を設けた以後、Y証券会社との間で、右信用取引口座を通じ、同60年2月ころまで、かなり頻繁に有価証券の信用取引を継続した。
Xは、Yとの間でした多数回の取引のうち本件で問題とされた14回の取引に限っては、Yの従業員Aが「Xからの注文を受けずにXの名義及び計算においてXの信用取引口座を利用して債券や株式等の無断売買を行ったもので、その結果生じた手数料、利息及び売買差損など(以下「売買差損など」という。)に相当する金員をYがXの右信用取引口座から引き落とし処理(以下「本件引き落とし処理」という。)し、Xに右金員相当の損害を被らせたと主張し、Yに対して、損害賠償を求めて、本訴を提起した。
Xは、Yの責任原因として、(1)Yは取次業務の受託者として信用取引口座を設けたXの指図に忠実に従う義務があるのに、Yの履行補助者Aは右義務に違反する無断売買をしたので、Yには債務不履行責任がある、(2)Yの従業員のAがYの事業の執行に付いてXに加えた損害につき、Yには使用者責任がある、(3)Xは本件引き落とし処理にかかる金員相当の損害を被ったのに対し、Yは右金員相当の負担を免れて同額の利得を得たので、Yには不当利得返還の責任があるなどと主張した。
 Yは、(1)本件各取引は、Xの代理人である妻の委託や承認を受けたもの、及び、Xの決済がないために東京証券取引所の受託契約準則に基づき強制手仕舞したものなどであり、全て適法になされた、(2)仮にそうでないとしても、Xは、本件各取引の数日後に送付された売買報告書や毎月2回に分けて送付された月次報告書に対する回答書によって、本件各取引を事後に追認した、(3)また、仮に無断売買により信用取引口座から売買差損などの引き落とし処理がされたものであるとしても、その法律効果はXに帰属しないから、右引き落とし処理は、XのYに対する正当な寄託物(清算金)返還請求権に何ら影響を与えるものではない旨主張した。
 第1審は、信用取引口座の設定契約がなされた以後は、右口座をXの注文による取引の決済にのみ用いるべき義務を負うので、従業員の無断売買によって右口座において損害が生じたときは、Yは、右契約上の義務の不履行に基づき、その損害を賠償する責任を負うとした上、問題とされた本件各取引のうち追認もされていない無断売買による損害額から既に填補された額を控除した残額の限度でXの請求を認容した。右判決に対してXから控訴。
 控訴審は、無断売買の効果はXに帰属しないから、信用取引口座において計算上差損を生じたり、信用取引口座に手数料などが計上されても、それはXに全く関係のないものであって、それがXの損害となるものではないから、本来Xの本訴請求は主張自体失当として全部棄却すべきものではあるが、Yからの附帯控訴がないため不利益変更禁止の原則に照らし、Xの控訴を棄却するにとどめた。
 Xが上告し、Yの従業員のAがXの資金を使用して無断売買の決裁をしているのでXは現実に損害を被っていると主張して、Xに損害はないとした二審の判断を争った。
本判決は、Xに本件引き落とし処理にかかる金員相当の損害が生じたものということはできないとして、これと同旨の二審の判断を正当として是認した。
 三 信用取引とは、証券会社が顧客に信用を供与して行う有価証券の売買その他の取引、すなわち、顧客から保証金の預託を受けて、有価証券を買い付けようとする者にはその買付資金を、また、有価証券を売却しようとする者にはその売付有価証券を貸し付けて行う売買又は売買の取次等をいう(証券取引法49条)。
そして、顧客が信用取引を行うには、予め証券会社に信用取引口座の設定を申し込み承認を得た上で、信用取引口座設定約諾書を差し入れなければならない(東京証券取引所受託契約準則12条)。
この手続が済むと、以後の后用取引における買付、売付及び損益金などの処理は、すべて証券会社に設けられている信用取引口座の中で行われる。
なお、信用取引の決済の方法としては、
(a)顧客が現金又は株券を調達してこれを返済に充て、担保として預託してある株券又は金銭の返還を受ける方法(現引き、現渡し)と、
(b)借り入れた金銭又は株券自体を返済しないで、反対売買により決済する方法(買付のときは、証券会社に担保として預託してある株券を他に売付けてその売付代金と借入金とを相殺して決済し、売付のときは、担保として預託してある代金をもって同銘柄の株式を他から買付けてそれを証券会社に返済する)とがある。
また、右のような信用取引において顧客が証券会社に預託する委託証拠金の法的性質は、敷金と同性質のものであり、停止条件付返還債務を伴う金銭所有権の移転であると解されている(鈴木竹雄=河本一郎『証券取引法〔新版〕』506頁、神崎克郎「証券売買委託者の法的地位(三)」神戸法学雑誌14巻2号326頁。)。したがって、委託証拠金の交付を受けた証券会社は、その所有権を取得するとともに、顧客の債務が弁済されたときは全額を返済しなければならないが、顧客に債務不履行があれば、証券会社はその金額を控除した差額についてのみ返還債務を負うという関係にある。
また、証券会社は、他人の委託に基づく有価証券の売買取引を業とする者であるから、その業務は「自己ノ名ヲ以テ他人ノ為メニ物品ノ販売又ハ買入ヲ為スヲ業トスル者」として、商法上の問屋営業に該当し(商法551条)、顧客との関係については委任及び代理の規定が準用される(商法552条2項、民法644条)。
したがって、証券会社は、顧客が信用取引口座を設けて信用取引口座約諾書を交付したからといって、直ちに問屋としての忠実義務を負うものではなく、具体的な注文を待ってはじめて受任者としての善良なる注意義務(民法644条)を負うに至るものである。
それゆえ、証券会社は、売買取引について顧客からの個別的委託がなければ、売買の結果を顧客の計算に帰せしめることはできない。
したがって、無断売買の効果は顧客に帰属しないから、無断売買をした外務員によって無断売買の差損などに相当する金員が顧客の信用取引口座から引き落とし処理されたとしても、顧客は右処理を自己に関係のないものとして否認し、無断売買がなかったことを前提として、証券会社に預託している委託証拠金や正常な取引によって生じている売買差益金等の金員の返還請求をすることができるものと解される。
無断売買の相手方に対しては、自己の名で売買取引をした証券会社自身が、売主又は買主としての責任を履行すべき義務を負うものであって、顧客は無断売買に基づく何らの権利義務も負担するものではない。
 四 なお、最3小判昭49・10・15金法744号30頁は、証券取引所の取引員である株式会社丙が、委託者甲の依頼に基づいて正当に買付をして買建玉を取得した後に、委託者から承諾があった旨の外務員乙の虚偽の報告に基づき、委託者の依頼なくして無断で右買建玉を売付けた事案につき、「(一)委託者甲は、取引員乙との関係で、売付にかかる取引の計算が自己に帰属することを否認することができるが、取引員乙がその名においてした反対売買の取引自体は無効とならないこと、(二)それゆえ、委託者甲は、取引員丙が委託者甲の指図に基づく買建玉の売却に応ずることのない限り、指図による右買建玉の反対売買により得べかりし利益を喪失したことになり、これと同額の損害を被ることがあり得ること、(三)したがって、右反対売買が外務員乙の虚偽の報告に因り行われたときは、右損害は、右外務員乙の不法行為により生じたものとして同人に対してその損害賠償を請求することができる」旨判示したものである。
すなわち、右判例は、無断売買により取引口座から差損などの引き落とし処理がされたこと自体を損害としてその賠償を請求するような事例ではなく、被告たる外務員の虚偽の報告により、正当に取得していた買建玉の無断売却をされた結果、これを適時に売却して得べかりし利益を喪失したことによる逸失利益の損害賠償を、右外務員に対して請求する事例であって、本件の場合とは請求内容や相手方が異なるので、右判例の結論は右事案の処理としては正当であると解されるが、本件には適切ではないものというべきであろう。
 五 本判決は、証券会社の従業員の無断売買によって生じた差損などが顧客の信用取引口座から引き落とす処理がされても、顧客には損害が発生しないことを明らかにしたものである。
本判決と前掲昭和49年最高裁判決と合わせて考えると、具体的な事案に応じて、顧客は有利な法的構成によることができるようにも思われる。


信用取引(金融商品取引法)
現行の金融商品取引法では、信用取引において、金融商品取引業者等またはその役員等は、顧客の信用取引を、自己の計算においてする買付け・売付け(取引一任契約の場合も含む)と対当させ、かつ、金銭・有価証券の受け渡しを伴わない方法により成立させた場合において、当該買付け・売付けに係る未決済の勘定を決済するため、これと対当する売付け・買付けをすることが禁止されている(金融商品取引法38条7号、金融商品取引業等に関する内閣府令117条1項24号)。
 したがって、後掲・最高裁昭和62年判決とは、状況が違うことに注意しなければならない。

最高裁判所第1小法廷判決昭和62年4月2日、株券返還請求事件
裁判集民事150号557頁、判例タイムズ639号120頁、金融商品取引法判例百選31事件
【判決要旨】 株式の信用取引において顧客が証券会社に対して特定の株式の売付委託をしたことがないと主張していたなど原判示のような事情がある場合に、右顧客が更に書面で同旨の告知をしたときは、右告知によって清算の意思が表示されたものとして、証券会社は、右株式について手仕舞をすべき義務がある。
【参照条文】 証券取引法49条、証券取引法130条 、民法415条

 判例は、顧客が信用取引に関して証券会社に対して委託保証金を預託することを怠る場合には、顧客が証券会社に対して当該信用取引に関する売買取引につき反対売買の委託をしても、証券会社は決済義務はないと解している(最3小判昭50・7・15裁判集民事115号419頁)。
 本件では、Xは、Yとの間で株式の信用取引を行ってきたが、その後Yに対して、未決済の信用取引がなかったとして信用取引を中止する旨を告げて、委託保証金代用有価証券として預託してあった株券の返還を求めた。
しかし、Yは、当時Xから株式の売付の委託を受けていたとしてこれに応じないで、かえって右株式の値上りによる委託保証金の追加差入(追証)を要求するとともに、後になって右売付を執行したために差損金を生じることになったが、その差損金に右預託株券を充当した。
そこで、Xは、Yに対して、右株券の返還を、予備的にXの主張した時に清算しなかったことによる損害の増額分の支払を求めた。
本件は、結局、XがYに対して株式の手仕舞の意思を明らかにしたか否か、さらには、Xのした中止の意思表示を手仕舞の意思と解しうるかどうかに帰することになる。
判決は、XがYとの間の未決済の信用取引は一切なく以後取引は中止するので、預託中の株式を返還するなどして清算して欲しい旨申し入れしているなどの経緯をふまえて、意思表示の内容からXが信用取引による売買取引の委託のなかったことを確定的に主張する段階で当該信用取引を維持する意思を有しないことが明らかになったと判断したものと思われる。
 なお、信用取引において顧客が委託保証金の預託を怠る場合には、①委託証拠金は証券会社の債権担保のものであること、②旧・証券取引法の下で許容されていた証券会社の反対売買権は証券会社の損失防止のために認められていること、③顧客は、証券会社に対して反対売買の委託をして有価証券の市場価格が自己に不利に変動することによる危険を回避することができるのであるから、商品の市場価格の変動による損失自体は委託者がみずから防衛すべきであること等を理由に、市場の変動による損失を受託者たる仲買人に負担させることはできないというのが判例・通説である(鈴木竹雄ほか『証券取引法』255頁、鴻常夫・法協86年3号394頁、竹内昭夫・商事判例研究昭和34年度152頁、同『証券商品取引判例百選』150頁、神崎克郎・民商59巻2号329頁)。
 なお、最高裁判例は、商品先物取引についても、旧法の下で許容されていた反対売買権は商品取引会社の権利であって、委託建玉の処分義務を課すものではないと解している(最3小判昭43・2・20民集22巻2号257頁、最1小判昭44・2・13民集23巻2号336頁、最1小判昭49・4・25裁判集民事111号599頁、最3小判昭57・10・26裁判集民事137号413頁)。


金融商品取引法による損失補てん等の禁止
金融商品取引法により、金融商品取引業者・顧客に対して、損失補てん等が禁止されている。
ただし、例外的に、金融商品取引業者の違法・不当な行為による「事故」に対する補償については、許容されている。

◎最高裁判例
最高裁判例は、証券取引法の平成3年改正後は、損失保証、損失補てんの契約を公序に反し無効とし、履行請求できないと解している(最高裁判所第1小法廷判決平成9年9月4日・民集51巻8号3619頁、金融商品取引法判例百選35事件 、最高裁平成15年4月18日・民集57巻4号366頁、金融商品取引法判例百選33事件)。
 なお、最高裁判所第1小法廷判決平成9年4月24日(裁判集民事183号263頁、判例タイムズ956号155頁、金融商品取引法判例百選37事件)は、 証券会社の営業部員が、株式等の取引の勧誘をするに際し、取引の開始を渋る顧客に対し、法令により禁止されている利回り保証が会社として可能であるかのように装って利回り保証の約束をして勧誘し、その旨信じた顧客に取引を開始させ、その後、同社の営業部長や営業課長も右約束を確認するなどして取引を継続させ、これら1連の取引により顧客が損失を被ったもので、顧客が右約束の書面化や履行を求めてはいるが、自ら要求して右約束をさせたわけではないなど判示の事実関係の下においては、顧客の不法性に比し、証券会社の従業員の不法の程度が極めて強いものと評価することができ、証券会社は、顧客に対し、不法行為に基づく損害賠償責任を免れないと判示している。現行の金融商品取引法であれば、金融商品取引法39条3項以下の「事故」に該当するかが問題となる事案であろう。
また、證券会社の損失補てんについて、取締役に対する株主代表訴訟事件において、最高裁判所第2小法廷判決平成12年7月7日・民集54巻6号1767頁は、證券会社の損失補てんについて、平成3年改正前の証券取引法には違反しないが、独占禁止法19条(不公正な取引方法)に違反するが、役員に違法性の認識がなかったとしている。

◎金融商品取引業者の損失補てん等の禁止(39条1項)
 金融商品取引業者等は、顧客に対して、次に掲げる行為をしてはならない。
39条における「顧客」には、信託会社等(信託会社又は金融機関の信託業務の兼営等に関する法律第1条第1項 の認可を受けた金融機関をいう。)が、信託契約に基づいて信託をする者の計算において、有価証券の売買・デリバティブ取引を行う場合にあっては、当該信託をする者を含む。
①  有価証券の売買その他の取引(買戻価格があらかじめ定められている買戻条件付売買その他の政令で定める取引を除く。)・デリバティブ取引(以下この条において「有価証券売買取引等」という。)につき、当該有価証券・デリバティブ取引(以下この条において「有価証券等」という。)について顧客に損失が生ずることとなり、又はあらかじめ定めた額の利益が生じないこととなった場合には自己又は第三者がその全部又は一部を補てんし、又は補足するため当該顧客又は第三者に財産上の利益を提供する旨を、当該顧客又はその指定した者に対し、申し込み、約束し、又は第三者に申し込ませ、約束させる行為
② 有価証券売買取引等につき、自己又は第三者が当該有価証券等について生じた顧客の損失の全部若しくは一部を補てんし、又はこれらについて生じた顧客の利益に追加するため当該顧客・第三者に財産上の利益を提供する旨を、当該顧客・その指定した者に対し、申し込み、若しくは約束し、又は第三者に申し込ませ、約束させる行為
③  有価証券売買取引等につき、当該有価証券等について生じた顧客の損失の全部若しくは一部を補てんし、又はこれらについて生じた顧客の利益に追加するため、当該顧客・第三者に対し、財産上の利益を提供し、又は第三者に提供させる行為

◎顧客の損失補てん等の要求等の禁止(39条2項)
 金融商品取引業者等の顧客は、次に掲げる行為をしてはならない。
(1)  有価証券売買取引等につき、金融商品取引業者等又は第三者との間で、前項第1号の約束をし、又は第三者に当該約束をさせる行為(当該約束が自己がし、又は第三者にさせた要求による場合に限る。)
(2)  有価証券売買取引等につき、金融商品取引業者等又は第三者との間で、前項第2号の約束をし、又は第三者に当該約束をさせる行為(当該約束が自己がし、又は第三者にさせた要求による場合に限る。)
(3)  有価証券売買取引等につき、金融商品取引業者等又は第三者から、前項第3号の提供に係る財産上の利益を受け、又は第三者に当該財産上の利益を受けさせる行為(前2号の約束による場合であって当該約束が自己がし、又は第三者にさせた要求によるとき及び当該財産上の利益の提供が自己がし、又は第三者にさせた要求による場合に限る。)

◎事故の場合の適用除外(39条3項)
 「事故」とは、金融商品取引業者等又はその役員・使用人の違法又は不当な行為であって当該金融商品取引業者等とその顧客との間において争いの原因となるものとして内閣府令で定めるものをいう(39条3項)。
39条第1項の規定は、同項各号の申込み、約束又は提供が「事故」による損失の全部又は一部を補てんするために行うものである場合については、適用しない。
ただし、39条1項第2号の申込み又は約束及び同項第3号の提供にあっては、その補てんに係る損失が事故に起因するものであることにつき、当該金融商品取引業者等があらかじめ内閣総理大臣の確認を受けている場合その他内閣府令で定める場合に限る(39条3項ただし書)。39条第3項ただし書の確認を受けようとする者は、内閣府令で定めるところにより、その確認を受けようとする事実その他の内閣府令で定める事項を記載した申請書に当該事実を証するために必要な書類として内閣府令で定めるものを添えて内閣総理大臣に提出しなければならない(39条5項)。

 顧客の損失補てんの要求等の禁止(39条第2項)の規定は、同項第1号又は第2号の約束が事故による損失の全部又は一部を補てんする旨のものである場合及び同項第3号の財産上の利益が事故による損失の全部又は一部を補てんするため提供されたものである場合については、適用しない(39条4項)。

◎投資助言・代理業、投資運用業の同旨の規定
第38条の2  金融商品取引業者等は、その行う投資助言・代理業又は投資運用業に関して、次に掲げる行為をしてはならない。
2号  顧客を勧誘するに際し、顧客に対して、損失の全部又は一部を補てんする旨を約束する行為
(禁止行為)
第41条の2  金融商品取引業者等は、その行う投資助言業務に関して、次に掲げる行為をしてはならない。
5号  その助言を受けた取引により生じた顧客の損失の全部又は一部を補てんし、又はその助言を受けた取引により生じた顧客の利益に追加するため、当該顧客又は第三者に対し、財産上の利益を提供し、又は第三者に提供させること(事故による損失の全部又は一部を補てんする場合を除く。)。
 (禁止行為)
第42条の2  金融商品取引業者等は、その行う投資運用業に関して、次に掲げる行為をしてはならない。
6  運用財産の運用として行った取引により生じた権利者の損失の全部若しくは一部を補てんし、又は運用財産の運用として行った取引により生じた権利者の利益に追加するため、当該権利者又は第三者に対し、財産上の利益を提供し、又は第三者に提供させること(事故による損失の全部又は一部を補てんする場合を除く。)。

◎損失補てん等の罰則
第198条の3  第38条の2若しくは第39条第1項(これらの規定を第66条の十5において準用する場合を含む。)、第41条の2第2号若しくは第5号又は第42条の2第1号、第3号若しくは第6号の規定に違反した場合においては、その行為をした金融商品取引業者等若しくは金融商品仲介業者の代表者、代理人、使用人その他の従業者又は金融商品取引業者若しくは金融商品仲介業者は、3年以下の懲役若しくは3百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

第200条  次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
14号  第39条第2項(第66条の15において準用する場合を含む。)の規定に違反した者
15号  第39条第5項(第66条の15において準用する場合を含む。)の規定による申請書又は書類に虚偽の記載をして提出した者

第207条1項  法人(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。以下この項及び次項において同じ。)の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
3号  第198条(第4号の2及び第5号を除く。)又は第198条の3から第198条の5まで 3億円以下の罰金刑
5号  第2百条(第12号の3、第17号、第18号の2及び第19号を除く。)又は第201条第1号、第2号、第4号、第6号若しくは第9号から第11号まで 1億円以下の罰金刑
6号  第198条第4号の2、第198条の6第8号、第9号、第12号、第13号若しくは第15号、第200条第12号の3、第17号、第18号の2若しくは第19号、第201条(第1号、第2号、第4号、第6号及び第9号から第11号までを除く。)、第205条から第205条の2の2まで、第205条の2の3(第13号及び第14号を除く。)又は前条(第5号を除く。) 各本条の罰金刑
3  第1項の規定により法人でない団体を処罰する場合には、その代表者又は管理人がその訴訟行為につきその団体を代表するほか、法人を被告人又は被疑者とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用する。


金融商品取引業者の外務員
◎外務員の定義
外務員(64条1項)とは、勧誘員、販売員、外交員その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、金融商品取引業者等の役員又は使用人のうち、その金融商品取引業者等のために、64条1項に定める有価証券(第2条第2項の規定により有価証券とみなされる権利を除く。)、デリバティブ取引に係る売買その他の行為を行う者をいう。

◎外務員の登録
第64条  金融商品取引業者等は、勧誘員、販売員、外交員その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、その役員又は使用人のうち、その金融商品取引業者等のために次に掲げる行為を行う者(以下「外務員」という。)の氏名、生年月日その他内閣府令で定める事項につき、内閣府令で定める場所に備える外務員登録原簿(以下「登録原簿」という。)に登録を受けなければならない。
一  有価証券(第2条第2項の規定により有価証券とみなされる同項各号に掲げる権利を除く。)に係る次に掲げる行為
イ 第2条第8項第1号から第3号まで、第5号、第8号及び第9号に掲げる行為
 すなわち、有価証券の売買(デリバティブ取引に該当するものを除く。以下同じ。)、市場デリバティブ取引又は外国市場デリバティブ取引(有価証券の売買にあっては、第10号に掲げるものを除く。)、有価証券の売買、市場デリバティブ取引又は外国市場デリバティブ取引の媒介、取次ぎ(有価証券等清算取次ぎを除く。)又は代理(有価証券の売買の媒介、取次ぎ又は代理にあっては、第10号に掲げるものを除く。)
次に掲げる取引の委託の媒介、取次ぎ又は代理 (イ) 取引所金融商品市場における有価証券の売買又は市場デリバティブ取引、(ロ) 外国金融商品市場(取引所金融商品市場に類似する市場で外国に所在するものをいう。以下同じ。)における有価証券の売買又は外国市場デリバティブ取引、
有価証券等清算取次ぎ 、有価証券の売出し又は特定投資家向け売付け勧誘等、有価証券の募集若しくは売出しの取扱い又は私募若しくは特定投資家向け売付け勧誘等の取扱い
ロ 次に掲げる行為
(1) 売買又はその媒介、取次ぎ(有価証券等清算取次ぎを除く。)若しくは代理の申込みの勧誘
(2) 市場デリバティブ取引若しくは外国市場デリバティブ取引又はその媒介、取次ぎ(有価証券等清算取次ぎを除く。)若しくは代理の申込みの勧誘
(3) 市場デリバティブ取引又は外国市場デリバティブ取引の委託の勧誘
二  次に掲げる行為
イ 第2条第8項第4号、第6号及び第10号に掲げる行為
  すなわち、店頭デリバティブ取引又はその媒介、取次ぎ(有価証券等清算取次ぎを除く。)若しくは代理(以下「店頭デリバティブ取引等」という。)
  有価証券の引受け(有価証券の募集若しくは売出し又は私募若しくは特定投資家向け売付け勧誘等に際し、2条第6項各号に掲げるもののいずれかを行うことをいう。)
  有価証券の売買又はその媒介、取次ぎ若しくは代理であって、電子情報処理組織を使用して、同時に多数の者を一方の当事者又は各当事者として次に掲げる売買価格の決定方法又はこれに類似する方法により行うもの(取り扱う有価証券の種類等に照らして取引所金融商品市場又は店頭売買有価証券市場(第6十7条第2項に規定する店頭売買有価証券市場をいう。)以外において行うことが投資者保護のため適当でないと認められるものとして政令で定めるものを除く。)、 競売買の方法(有価証券の売買高が政令で定める基準を超えない場合に限る。)、金融商品取引所に上場されている有価証券について、当該金融商品取引所が開設する取引所金融商品市場における当該有価証券の売買価格を用いる方法、第67条の11第1項の規定により登録を受けた有価証券(以下「店頭売買有価証券」という。)について、当該登録を行う認可金融商品取引業協会が公表する当該有価証券の売買価格を用いる方法、顧客の間の交渉に基づく価格を用いる方法
ロ 店頭デリバティブ取引等の申込みの勧誘
三  前2号に掲げるもののほか、政令で定める行為
 金融商品取引業者等は、64条1項の規定により当該金融商品取引業者等が登録を受けた者以外の者に外務員の職務(同項各号に掲げる行為をいう。)を行わせてはならない(64条2項)。
 第1項の規定により登録を受けようとする金融商品取引業者等は、外務員に関して登録申請書を内閣総理大臣に提出し(3項)、内閣総理大臣は指定する協会に登録しなければならない(5項)。

◎外務員の権限
 外務員は、その所属する金融商品取引業者等に代わって、第64条第1項各号に掲げる行為に関し、一切の裁判外の行為を行う権限を有するものとみなす(64条の3第1項)。前項の規定は、相手方が悪意であった場合においては、適用しない(2項)。

現行の金融商品取引法でも、有価証券等管理業務(28条5項)が64条1項・64条の3に掲げられておらず、外務員が顧客から株券や金銭の預託を受けた場合に、外務員の権限の範囲内かが問題となる。

 外務員は、証券会社の営業所以外の場所で有価証券の売買等の勧誘を行う者であり、通常、その代理権には何らかの内部的制限がある。昭和40年改正前の証券取引法には外務員の代理権に関する規定がなかったため、これをめぐる学説・裁判例上の争いがあり、外務員が勧誘以外について証券会社の代理権を有するのか、外務員は証券会社と顧客のいずれの代理人であるかという基本的な点が問題とされていた。
 最3小判昭38・12・3民集17巻12号1596頁は、外務員は、特別の事情のない限り、証券会社の商業使用人として、保護預かりや名義書換えのための株券の預託を受けるなど株式取引の付随的事項について、一般に証券業者を代理する権限を有するものと解するのが相当である旨判示している。この判例は、それまでの下級審裁判例の流れを総括したものと評されている。
 上記最高裁昭和38年判決が出てから、昭和40年に証券取引法64条が新設された。その後、平成10年の法改正で、旧・証券取引法(現行の金融商品取引法)64条から64条の3に条番号が繰り下がった。
 旧・証券取引法64条1項は、外務員が、その所属する証券会社に代わって、「その有価証券の売買その他の取引」に関し、一切の裁判外の行為を行う権限を有するものとみなす旨規定している。その趣旨は、外務員に代理権があると信じて取引した顧客を保護するため、その外務員が所属証券会社より現実に代理権を付与されているか否かを問わず、また現実に授権された代理権の範囲いかんを問わず、善意の顧客に対する関係では、外務員に一定範囲の私法上の代理権の存在を擬制し、外務員が顧客との間でした行為の効果が証券会社に帰属することを認めたものであると解するのが通説である。
通説は、旧・証券取引法64条1項にいう「その有価証券の売買その他の取引」とは、当該外務員が所属する証券会社が現実に営んでいる取引のことをいい、同条で擬制される外務員の一般的代理権の範囲は、当該証券会社の現実に営んでいる営業範囲に限定されると解している(鈴木竹雄=河本一郎『証券取引法〔新版〕』370頁、神崎克郎「有価証券外務員」経済法8号4頁、小島孝「有価証券外務員」『証券取引法大系』364頁、龍田節「証券取引法と外務員」ジュリ500号566頁など)。
通説の理由としては、
(1)商業使用人である支配人の代理権に関する商法38条1項にいう「其ノ営業ニ関スル」とは、当該営業主の営業に関し、という意味であるところ、外務員も商業使用人であり、証券取引法64条1項の「その所属する証券会社に代わって、その有価証券の売買その他の取引・・・・・・に関し」という文言は、支配人同様外務員の代理権の範囲を限定する趣旨のものと解されること、
(2)顧客は、個々の外務員の権限については、これを知り得ないことが多いのに反し、自己が取引しようとする外務員の属する証券会社の営業範囲についてはこれを知り得る機会が多いのであるから、外務員の行為についての証券会社の責任負担の範囲をその営業範囲に制限しても顧客の保護のために欠けるところは大きくないこと
などが挙げられている。
下級審裁判例として、東京地判平7・2・16判時1550号65頁は、この通説と同様の一般論を明確に示した上、外務員がした他人名義で取得した株式等の売付け、新規公開株について制限数を大きく上回る株数の売付け等を当該外務員の所属する証券会社の業務の範囲外とし外務員の権限外の行為であるとした。他人名義である点が外務員の権限外とされたポイントと思われる。
また、大阪地判昭57・11・26金判674号41頁は、所属証券会社には割当てがなく買付けをすることが不可能な大量の公募株の買付けの注文を受けることは架空の取引であり、外務員の権限外の行為であるとしている。公募株の注文については、証券会社が現実に営む業務かどうかは一般的かつ客観的に判断すべきであり、個別的かつ主観的に判断すべきではなく、当該証券会社が現実かつ一般的に公募株の売却又はその媒介を営んでいる以上、これは外務員の代理権の範囲に属することであり、現実に当該公募株について会社に割当てがあるか、したがって、売却可能であったかどうかは問題とならないと批判する学説がある(並木俊守・上記大阪地裁昭57判決の評釈・金判695号47頁)。前記通説にいう「現実に営む業務」に当たるかどうかについて、なお考慮すべき問題があるように思われる。
これに対し、東京地判昭57・4・27判例タイムズ482号155頁は、外務員が、真実は証券会社が引受幹事会社になっていないので販売することができない公募株の買付注文を受けたという事案について、外務員に代理権がなかったことを認めるに足りる証拠はないとして、外務員が当該取引について一般的代理権を有していたと認めた(ただし、同判決は、外務員は、権限を濫用し、顧客である原告の代理人として金員を保管していたとして、結局顧客の預託金返還請求を棄却している。)。

最高裁判所第3小法廷判決平成15年3月25日、預託金返還請求事件
裁判集民事209号269頁、判例タイムズ1121号112頁、金融商品取引法判例百選41事件
証券会社に所属する外務員が、顧客に対し、同証券会社の架空の取引口座の存在をかたって同口座の利用を勧誘し、金銭の預託を受けるなどしたが、その入出金の経過が同社から同顧客に交付された取引報告書等には全く記載されておらず、同外務員がした説明からは同口座において同顧客のための証券取引が行われるものと解することが困難であるなど判示の事情の下においては、同外務員がした上記金銭の受託等の行為は、証券取引法(平10年改正前)64条1項にいう「その有価証券の売買その他の取引」に当たらない。
 本件事案については、「客方」口座が実在しないYの取引口座であること、入出金の経過がYからXに交付された取引報告書等には全く記載がないこと、Aの説明からは同口座に入金された金銭は会社が運用し、複利の利息が付されるというのであり、同口座において行われる証券取引の損益が顧客に帰属するとの説明があったことはうかがわれず、同口座においてXのための証券取引が行われるものと解することが困難であるなどの事情がある。また、原判決は、Aが預託を受けて「客方」に入金した金銭でXのため株式を購入した事実があることを指摘するが、このような事実があったとしても、その株式の買付けは、Aに交付された金銭について「客方」から出金した処理をした上で行われた別個の取引であるとみられる。本判決は、これらの事情から、Aがした「客方」口座の利用は、Yが証券会社として行うことのできる取引としての実体を有しない架空のものであり、証券取引法64条1項にいう「その有価証券の売買その他の取引」に当たらないとしたものである。外務員が所属する証券会社が現実に営む取引といえるかどうかについて、一般的・客観的にみるという立場に立ったとしても、Yが当時証券会社として一般的・客観的に上記のような取引を現実に営んでいたとみることは困難であると思われる。
 本判決は、上記規定にいう「その有価証券の売買その他の取引」の意義について一般的な判示をしたものではないが、同規定の適用の限界を示した事例として意義のある判例といえよう。
 なお、本判決は、予備的請求である不法行為に基づく損害賠償請求について原審に差し戻しており、使用者責任の要件の存否、過失相殺の当否等が更に審理され、差戻審において、不法行為に基づく損害賠償請求が一部認められた。

◎最高裁判所第3小法廷判決昭和51年2月17日
金融法務事情798号35頁、株券引渡請求事件、金融商品取引法判例百選40事件
顧客が外務員を通じて証券会社に株式売却の委託をするにあたり、指値による株式売却をするまでの間、外務員個人の用に供することを許容して株券を外務員に預託した場合においては、顧客が外務員に株券を預託したときに直ちに顧客と証券会社との間に株券預託の関係が生ずるものではなく、外務員が委託の趣旨に従い株式売却のため株券を証券会社に交付したときにはじめて証券会社がその預託をうけたものと解すべきである。

 本件事案の概要は次のとおりである。Xは、Y証券会社の登録外務員Aを通じてYに株式の売却の委託をするにあたり、Xの指値によって株式の売却がなされるまでの間、Aが個人として株券を利用することを許して右株券をAに交付したところ、Aは、これをA個人の用に供し、Yに交付しなかつた。Xは、外務員AはYの代理人として右株券の預託をうけたものであると主張して、Yに対し株券の返還を求めたが、原審は、Xにおいて株券を個人として利用することをAに許していた以上、その株券の返還をYに求めるとすれば、その株券が現実にAを通じてYに存するか、少なくとも1度はAからYに交付されたことが必要であるところ、右事実が認められないとしてXの請求を棄却すべきものとし、本判決も右原審の結論を維持した。
 証券会社と顧客との取引に際し外務員が介在する場合に、外務員が証券会社の代理人たる地位に立つか顧客の代理人たる地位に立つかは、具体的事情によって決せられるベき事実認定の問題である。
 Xは、上告理由において、証券取引法64条によればAがYの代理人として本件株券の預託をうけたことは明らかであると主張するが、同条は、従来外務員がその職務に関し証券業者を代理する権限があるか否かおよびその範囲について紛争が絶えなかつたため、前記昭和38年最高裁判決が契機となって、昭和40年の法改正によって外務員の権限の範囲を明らかにした規定であって、外務員を顧客の代理人と認定しうることとは直接の関係をもたない。