『新・裁判実務体系22著作権関係訴訟法』青林書院 - 民事家事・生活トラブル全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
村田法律事務所 弁護士
東京都
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『新・裁判実務体系22著作権関係訴訟法』青林書院

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新・裁判実務大系 (22)/青林書院
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『新・裁判実務体系

2004年刊。裁判官・学者による共著である。

今日までに、上記書籍のうち、以下の部分を読みました。

「プログラム著作権侵害訴訟における審理」

 プログラムの著作物関係として、印刷・画面での侵害とプログラムの著作物での侵害の双方が有り得る。

 証拠の分量が大量になりやすいので、代表的な侵害部分に絞って、争点整理をする審理方法は参考となる。

「著作権侵害訴訟における和解」

比較的著名な著作権侵害事件の和解条項の実例が掲載されている。

ただし、和解条項の作成方法の一般論が述べられていないので、やや不満が残った。強いて言えば、侵害者側は侵害の事実を認めずに、解決方法(氏名表示、著作権譲渡、和解金など)を定めているようである。

また、謝罪広告は、和解条項には入れないのが通例のようである。もっとも、マスメディア・雑誌などが関係する事件では、別論であろう。

 本稿では指摘されていないが、侵害者が再度著作権侵害しないこ0とを約束する条項を定めるべきであろう。

「キャラクターの侵害」

 漫画ポパイ事件の最高裁判例は必ずしもキャラクターだけで著作物とはいえないとしている。

 しかし、キャラクター自体が、美術の著作物に該当する場合には、あえて著作物性を否定する必要はないと解されている。

 ファンシフル・キャラクター、オリジナル・キャラクター、ストーリー性のあるキャラクターかによって、判断基準が異なるものではなく、その本質的特徴を感得できるかどうかによって、著作物性、著作権侵害の成否を決定するとういのは、判例の判断基準と一致する。

 2次元の著作物を3次元にした場合、本質的特徴に付加した部分があるかどうかというキューピー人形事件の判断基準は、2次元の原著作物で表現されていない部分について3次元で表現した場合に付加された部分が創作的表現か、3次元著作物が2次元著作物(原著作物)の本質的特徴を感得できるかという判断基準であり、上記の判例の一般論を応用したものである。

 オリジナル・キャラクター、ストーリー性のあるキャラクターの場合には、そもそも何の説明がないわけではなく、背景、人物の設定、特徴、特異な容貌・姿態などの要素が付加されているから、著作権侵害の成否を決めやすい。

 言語の著作物を美術の著作物にした場合も、同様であり、原作である言語の著作物を利用した美術の著作物は、二次的著作物である(キャンディ・キャンディ事件)。

「デジタル・コンテンツと著作物性」

 私見として、デジタル・コンテンツについて、静止画と動画に分けるべきであろう。

 静止画は、美術の著作物の侵害と同じ判断基準により、かつ、インターネットにおける送信可能化権・公衆送信権の侵害を加味して考えれば足りる。

 本稿では指摘されていないが、動画については、映画の著作物およびプログラムの著作物と同様の考え方が妥当する。著者は、動画のストーリーは保護対象にならないとしている。単なるアイディアに過ぎない場合は、著作権法で保護されない。しかし、判例によれば、映画の著作物の場合には、ロール・プレイング・ゲームであっても、ストーリー改変は、同一性保持権・翻案権の侵害に該当する。インターネットを利用した場合には、送信可能化権・公衆送信権を侵害する。

 有償の素材集については、原則として対価を得て利用許諾をしているに過ぎず、著作権を留保している点には注意が必要である。ましてや、無償で公開しているブログなどは、対価すら得ていないので、利用許諾すらしていないと考えられる。

 本稿では、自動生成物について、著作権者を観念できないとされる。しかし、私見では、翻訳ソフトなどのソフトウェアを用いる場合には、コンピューターやソフトウェアを操作している人間を想定できる。ただし、原著作物のデッド・コピーや改変物に過ぎない場合は、著作物性がなく、同一性保持権・翻案権・複製権等の侵害となると解される。

「インターネットと著作権」

 著作権法は、有形的再製を複製とし(21条)、無形的な利用方法を21条の2~26条の2で規定している。インターネットに関しては、著作権侵害かどうかは、著作権の支分権である送信可能化権・公衆送信権でほぼ対処できるというのが、現在の判例である。したがって、今日では、複製権侵害かどうかを議論する実益は失われた。

本稿が著作権侵害の成否について、アメリカのプロバイダー法を参照している部分は、著作権侵害者の責任と、単にデジタルデータが経由しているに過ぎないプロバイダーの責任を混同している。プロバイダーを経由するデジタルデータには、著作権があるもの・ないもの、著作権を侵害しないもの・著作権侵害になるものが混じっており、プロバイダーには通常区別できないからである。

アメリカ法を手本にした日本のプロバイダー責任制限法でも、上記と同じ立法趣旨である。

22著作権関係訴訟法』青林書院