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村田 英幸
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村田 英幸
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Blog201403、交通事故

自動車損害賠償保障法
労災保険法・厚生年金法の保険給付と損害賠償の調整まとめ


自動車損害賠償保障法
今月は、自動車損害賠償保障法の条文を読みました。
自動車損害賠償保障法
(昭和三十年七月二十九日法律第九十七号)

 第一章 総則(第一条・第二条)
 第二章 自動車損害賠償責任(第三条・第四条)
 第三章 自動車損害賠償責任保険及び自動車損害賠償責任共済
  第一節 自動車損害賠償責任保険契約又は自動車損害賠償責任共済契約の締結強制(第五条―第十条の二)
  第二節 自動車損害賠償責任保険契約及び自動車損害賠償責任共済契約(第十一条―第二十三条の四)
  第二節の二 指定紛争処理機関(第二十三条の五―第二十三条の二十一)
  第三節 自動車損害賠償責任保険事業及び自動車損害賠償責任共済事業(第二十四条―第三十条)
  第四節 自動車損害賠償責任保険審議会(第三十一条―第七十条)
 第四章 政府の自動車損害賠償保障事業(第七十一条―第八十二条の二)
 第五章 雑則(第八十二条の三―第八十六条)
 第六章 罰則(第八十六条の二―第九十二条)

   第一章 総則

(この法律の目的)
第一条  この法律は、自動車の運行によって人の生命又は身体が害された場合における損害賠償を保障する制度を確立することにより、被害者の保護を図り、あわせて自動車運送の健全な発達に資することを目的とする。

(定義)
第二条  この法律で「自動車」とは、道路運送車両法 第二条第二項 に規定する自動車(農耕作業の用に供することを目的として製作した小型特殊自動車を除く。)及び同条第三項 に規定する原動機付自転車をいう。
2  この法律で「運行」とは、人又は物を運送するとしないとにかかわらず、自動車を当該装置の用い方に従い用いることをいう。
3  この法律で「保有者」とは、自動車の所有者その他自動車を使用する権利を有する者で、自己のために自動車を運行の用に供するものをいう。
4  この法律で「運転者」とは、他人のために自動車の運転又は運転の補助に従事する者をいう。

   第二章 自動車損害賠償責任

(自動車損害賠償責任)
第三条  自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があったこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかったことを証明したときは、この限りでない。



労災保険法・厚生年金法の保険給付と損害賠償の調整まとめ
以下、労働者災害補償保険法を労災保険法、厚生年金保険法を厚生年金法、自動車損害賠償保障法を自賠法と略す。

労働基準法(他の法律との関係)
第84条  この法律に規定する災害補償の事由について、労働者災害補償保険法 又は厚生労働省令で指定する法令に基づいてこの法律の災害補償に相当する給付が行なわれるべきものである場合においては、使用者は、補償の責を免れる。
2  使用者は、この法律による補償を行った場合においては、同一の事由については、その価額の限度において民法 による損害賠償の責を免れる。

労災保険法第12条の4  政府は、保険給付の原因である事故が第三者の行為によって生じた場合において、保険給付をしたときは、その給付の価額の限度で、保険給付を受けた者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する。
2  前項の場合において、保険給付を受けるべき者が当該第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、政府は、その価額の限度で保険給付をしないことができる。

厚生年金法(損害賠償請求権)
第40条  政府は、事故が第三者の行為によって生じた場合において、保険給付をしたときは、その給付の価額の限度で、受給権者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する。
2  前項の場合において、受給権者が、当該第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、政府は、その価額の限度で、保険給付をしないことができる。

損害が同質、同一である限り、両者は相互に補完しあい、労災保険給付による補償がされた場合には、第三者はその限度で損害賠償責任を免れ、第三者が損害賠償した場合には政府はその限度で補償義務を免れるとしなければならない。また政府の行う補償は、その実質において他人の損害賠償義務の履行であるから、賠償をした国は、保険受給権者(被害者)の第三者に対する損害賠償請求権に代位することができると考えるべきものであろう。
このような法理を根拠に、労災保険法12条の4(昭和48年法律第85号改正前は旧20条)は、労働者が保険関係外の第三者の不法行為によって業務災害を被った場合、政府が同法に基づいて保険給付をしたときは、その給付の価額の限度で、政府は保険受給権者が第三者に対して有する損害賠償請求権を代位取得し(同条1項)、また保険受給権者が第三者から同一事由につき損害賠償を受けたときは、政府はその限度で補償義務を免れると規定する(同条2項)。
このように、第三者の民法、自賠法上の賠償責任と労災保険法上の政府の労災補償責任とが相互補完の関係にあることに徴すると、同一事由に基づく同質、同一の損害の二重填補は排除されなければならないから、保険受給権者が政府から休業補償として保険給付を受ければ、保険受給権者の第三者に対する休業損害の賠償請求権はその限度において減縮されなければならない。
労災補償により、被害者・遺族の損害賠償請求権が減縮されるのは、政府によって損害の填補がされたからであって、加害者の不法行為が被害者自身に損失と利得とを生じさせた場合に損害額そのものを利益を受けた限度で減縮する損益相殺とはその性質を異にするが類似するものであり、したがって、保険者の代位と根拠を同じくする労災保険法12条の4(改正前の20条)の代位法理で説明するのが相当であるとするものが多い。


損害賠償額から控除する
○受領済みの自賠法の損害賠償額(最高裁昭和39・5・12民集18・4・583)
○自賠法の政府補償事業のてん補金
受領済みの
○厚生年金保険法による遺族年金(最高裁平成16・12・20)、障害厚生年金(最高裁平成11・10・22)、遺族基礎年金
○労災保険法による休業補償給付金・療養補償給付金、障害補償一時金(下級審)、遺族補償年金(最高裁平成5・3・24、最高裁平成16・12・20)、葬祭給付・遺族年金前払い一時金、障害補償年金前払い一時金、障害補償年金・介護補償給付金
○健康保険法による傷病手当金
○国民健康保険法による高額療養還付金
○地方公務員等共済組合法の遺族共済年金
○地方公務員災害補償法による療養費、葬祭費、遺族補償年金
○所得補償保険契約に基づいて支払われた保険金(最高裁平成1・1・19)

支給が確定しており確実な場合には控除すべきだが、支給が確定していない場合には、控除しない。
○ 最高裁判所大法廷判決平成5年3月24日・民集47巻4号3039頁
一 不法行為と同一の原因によって被害者又はその相続人が第三者に対して損害と同質性を有する利益を内容とする債権を取得した場合は、当該債権が現実に履行されたとき又はこれと同視し得る程度にその存続及び履行が確実であるときに限り、これを加害者の賠償すべき損害額から控除すべきである。
二 地方公務員等共済組合法(昭和六〇年法律第一〇八号による改正前のもの)の規定に基づく退職年金の受給者が不法行為のよって死亡した場合に、その相続人が被害者の死亡を原因として同法の規定に基づく遺族年金の受給権を取得したときは、支給を受けることが確定した遺族年金の額の限度で、これを加害者の賠償すべき損害額から控除すべきである。


損害賠償額から控除しない
○自損事故保険金
○搭乗者傷害保険金(最高裁平成7・1・30)
○生命保険金(最高裁昭和39・9・25)
○傷害保険金
○労災保険法の休業特別支給金、障害特別支給金(最高裁平成8・2・23)
○地方公務員災害補償基金からの休業損害金
○生活保護法による扶助費(最高裁昭和46・6・29)
○香典、見舞金
○雇用対策法に基づく職業転換給付金
○独立行政法人自動車事故対策機構法に基づく介護料
○会社の業務災害特別支給規定に基づく見舞金
○介護費用の公的扶助
○身体障害福祉法に基づく給付等


ただし、控除する場合でも同一の損害項目からのみ控除できる。
慰謝料については、労災保険法の給付には慰謝料が含まれないから、労災保険給付をもって、慰謝料の損害の填補があったものとすることは許されない(最判昭和37・4・26民集16巻4号975頁、最判昭和41・12・1民集20巻10号2017頁)。

最高裁判決昭和58年4月19日・民集37巻3号321頁
労災保険法による障害補償一時金及び休業補償給付は、被災労働者の精神上の損害を填補するためのものではなく(労災保険法に基づく保険給付には慰謝料が含まれていない)、給付された補償金が財産上の損害賠償額を上回る場合であっても、これを慰謝料から控除すべきではない。

最高裁判決昭和50・10・24交通民集8・5・1258
国家公務員退職手当法の退職手当、国家公務員共済組合法の遺族年金、国家公務員災害補償法の遺族補償年金の各受給権者は、妻と子が遺族である場合には妻と定めているから、退職手当の受給額は妻の損害賠償額からだけ控除すべきであり、子の損害賠償額から控除すべきではない。

最高裁判決昭和62年7月10日・民集41巻5号1202頁
労災保険法による休業補償給付・傷病補償年金又は厚生年金法(昭和60年法律第34号改正前のもの)による障害年金は、休業損害・逸失利益から差し引くべきで、被害者の受けた財産的損害のうちのその余の積極損害又は慰謝料から控除すべきでない。

最高裁判決平成元年4月11日・民集43巻4号209頁
労働者が第三者行為災害により被害を受け、第三者がその損害につき賠償責任を負う場合において、賠償額の算定に当たり労働者の過失を斟酌すべきときは、右損害の額から過失割合による減額をし、その残額から労働者災害補償保険法に基づく保険給付の価格を控除するのが相当である。


最高裁判決平成11年10月22日・民集53巻7号1211頁
一 障害基礎年金・障害厚生年金の受給権者が不法行為により死亡した場合には、その相続人は、加害者に対し、被害者の得べかりし右各障害年金額を逸失利益として請求することができる。
二 障害基礎年金・障害厚生年金についてそれぞれ加給分を受給している者が不法行為により死亡した場合には、その相続人は、加害者に対し、被害者の得べかりし右各加給分額を逸失利益として請求することはできない。
三 障害基礎年金・障害厚生年金の受給権者が不法行為により死亡した場合に、その相続人が被害者の死亡を原因として遺族基礎年金及び遺族厚生年金の受給権を取得したときは、当該相続人がする損害賠償請求において、支給を受けることが確定した右各遺族年金は、財産的損害のうちの逸失利益から控除すべきである。

 最高裁判決平成16年12月20日・裁判集民事215号987頁、判例タイムズ1173号154頁
不法行為により死亡した被害者の相続人がその死亡を原因として遺族厚生年金の受給権を取得したときは,当該相続人がする損害賠償請求において,未だ支給を受けていなくても、支給を受けることが既に確定した遺族厚生年金を給与収入等を含めた逸失利益全般から控除すべきである。

○自賠法・労災保険法の給付は人身傷害分のみで、物損には充当できない。
○労災保険法の療養給付・療養補償給付は、治療費・入院雑費に充当され、入院付添費には充当されない。
○労災保険法の休業補償給付・障害補償給付(障害補償年金)は、休業損害・逸失利益に充当される。

最高裁判決平成22年9月13日・民集64巻6号1626頁
1 被害者が,不法行為によって傷害を受け,その後に後遺障害が残った場合において,労働者災害補償保険法に基づく保険給付や公的年金制度に基づく年金給付を受けたときは,これらの各社会保険給付については,これらによるてん補の対象となる特定の損害と同性質であり,かつ,相互補完性を有する損害の元本との間で,損益相殺的な調整を行うべきである。
2 被害者が,不法行為によって傷害を受け,その後に後遺障害が残った場合において,不法行為の時から相当な時間が経過した後に現実化する損害をてん補するために労災保険法に基づく保険給付や公的年金制度に基づく年金給付の支給がされ,又は支給されることが確定したときには,それぞれの制度の予定するところと異なってその支給が著しく遅滞するなどの特段の事情のない限り,てん補の対象となる損害は,不法行為の時にてん補されたものと法的に評価して損益相殺的な調整を行うべきである。


社会保険給付がある場合の過失相殺
○厚生年金保険法、厚生年金保険法、健康保険
損害賠償額から保険給付額を控除した残額に対して過失相殺する
○労災保険法
過失相殺後の損害賠償額から差し引く( 最判平成1・4・11)
○政府補償事業によるてん補金
労災保険法と同じ( 最判平成17・6・2)


先に損害賠償の支払された場合に国民健康保険法64条1項に基づき代位取得する額
最高裁判決平成10年9月10日
裁判集民事189号819頁、判例タイムズ986号189頁
求償金請求事件
【判示事項】 国民健康保険の保険者からの療養の給付に先立って自動車損害賠償保障法16条1項の規定に基づく損害賠償額の支払がされた場合に右保険者が国民健康保険法64条1項の規定に基づき代位取得する損害賠償請求権の額
【判決要旨】 国民健康保険の被保険者である交通事故の被害者が、保険者から療養の給付を受けるのに先立って、自動車損害賠償保障法16条1項の規定に基づき損害賠償額の支払を受けた場合には、保険会社が支払に当たって算定した損害の内訳のいかんにかかわらず、右被保険者の第三者に対する損害賠償請求権は右支払に応じて消滅し、右保険者は、国民健康保険法64条1項の規定に基づき、療養の給付の時に残存する額を限度として損害賠償請求権を代位取得する。
【参照条文】 国民健康保険法64条、自動車損害賠償保障法16条1項
 一 本件は、国民健康保険事業を行う保険者であるX(市)が、国民健康保険を使った治療を受けた交通事故の被害者Aの加害者Yに対する損害賠償請求権を、国民健康保険法(以下「法」という。)64条1項に基づき代位取得したとしてその請求をする事件である。 Yは、昭和63年9月4日、交通事故を起こしてAに傷害を負わせた。
Aは、法36条に基づき保険者であるXから療養の給付を受けた。
Xが療養の給付に要した費用は96万7650円であり、法42条によりAが負担しなければならない一部負担金(給付額の3割)を除いたXの負担額は67万7355円であった。
一方、Aは、療養の給付の継続中及びその後に、Yが契約していた自賠責保険の保険会社から、自賠法17条に基づく仮渡金及び自賠法16条1項に基づく内払金として4回にわたり合計120万円の支払を受けていた。
Xが、Xの負担額に過失相殺による減額(7割)を施した後の額20万3206円につき、法64条1項に基づき、AのYに対する損害賠償請求権を代位取得したとして、Yにその支払を求めたのが本件訴訟である。
Aの過失割合が7割であること、Aが被った身体傷害に基づく損害額が400万円超えないこと、したがって、AがYに対して取得した損害賠償請求権の額が120万円を超えないことは当事者間に争いのない事実である。
 Yは、保険会社からAに120万円が支払われたことによって、損害賠償義務を尽くしているから、XはAの損害賠償請求権を代位取得しないなどの抗弁を主張した。
なお、内払金の支払に当たり、保険会社が算定した損害賠償額の内訳は、Aの一部負担金、休業損害及び慰謝料であり、療養給付につきXが負担した費用は計上されていなかった。
 原判決は、(1)右内訳によると、保険会社の支払により療養の給付についてXの負担した費用と同一の事由につき支払があったといえないから、その部分の損害賠償請求権は消滅していない(2)保険会社の算定の内訳に示された治療期間からすると、保険会社の支払は療養の給付に遅れるから、その支払によって、Xが既に代位取得している損害賠償請求権に消長を来さない、としてYの抗弁を排斥してXの請求を認めた。
 二 これに対して、本判決は、自賠責の保険会社が自賠法16条1項の被害者請求に基づいてした損害賠償額の支払は、事故による身体傷害から生じた損害賠償請求権全体を対象としており、保険会社が損害賠償額の支払に当たって算定した損害の内訳は、支払額を算出するために示した便宜上の計算根拠にすぎないことを理由として、国民健康保険の被保険者の第三者に対する損害賠償請求権は、保険会社からの支払に応じて消滅し、Xは、療養の給付の時に残存する額を限度として、Aの損害賠償請求権を代位取得することを明らかにした。
なお、自賠法17条に基づく仮渡金については、同法16条1項に基づき支払われる損害賠償額の一部先渡しであるとして、仮渡金についても右と同様に解すべきものとした。
そして、本件の事案のもとで、Xが代位取得する損害賠償請求権の額を算出するためには、審理が不足していることを説示して、本件を原審に差し戻したのである。
 三 国民健康保健法に基づく保険給付の原因となる事故が第三者の行為によって惹起され、第三者が被保険者に生じた損害につき賠償責任を負うべき場合、被保険者は保険給付を求めることも、第三者に対して損害賠償請求を行うこともできるが、保険者が先に保険給付をしたときは、被保険者の第三者に対する損害賠償請求権は右給付の価額の限度(ただし、被保険者が負担しなければならない一部負担金に相当する額を除く。)で保険者に移転し(法64条1項、いわゆる代位取得)、第三者が保険給付に先立ちこれと同一の事由について被保険者に対して損害賠償をしたときは、保険者はその価額の限度で保険給付をしないことができ(法64条2項)。
仮に保険給付をしても、被保険者の第三者に対する損害賠償請求権が弁済により消滅しているので損害賠償請求権を代位取得することはできない。
同一の事由により、二重に損害がてん補される不合理を防止するために、このような制度が定められているもので、同様の規定は労災保険法12条の4、厚生年金保険法40条、健康保険法67条などにも置かれている(社会保険給付と損害賠償の関係について、西村健一郎「社会保険給付と損害賠償」民商93巻臨増(2)406頁など)。
 法64条1項の代位取得の要件は、(1)給付事由が第三者の行為によって生じたこと、(2)被保険者の第三者に対する損害賠償請求権が存在していること、(3)保険者が保険給付を行うことである(厚生省保険局国民健康保険課監修・逐条詳解国民健康保険法252頁、炭谷茂=井口直樹・国民健康保険における第三者行為の理論と実務20頁、厚生省保険局国民健康保険指導室監修・国民健康保険第三者行為求償事務の手引き25頁参照)。
右の要件を満たす場合、保険者が行った給付の価額の限度(ただし、一部負担金相当額を除く。)において被保険者の第三者に対して有する損害賠償請求権は、給付の都度当然保険者に移転すると解される(最3小判昭42・10・31裁判集民事88号869頁参照)。
 本判決が取り上げた被告の抗弁は、(2)の要件を争うものであり、自賠法17条及び16条1項の規定に基づく請求に応じて保険会社がした支払によって、Xが代位取得すべき損害賠償請求権が消滅したかどうかが問題となる。
 ところで、「同一の事由」の意義につき、最2小判昭62・7・10民集41巻5号1202頁は、保険給付の対象となる損害と民事上の損害賠償の対象となる損害とが同性質で、保険給付と損害賠償とが相互補完性を有する関係にあることをいうと述べているところ、原審は、自賠責保険の保険会社が行った算定による損害の内訳を基準とし、保険会社から支払われた損害賠償額は、国民健康保険による療養の給付に要したXの負担額と同一の事由の関係にある損害を対象としたものではないし、また、右支払は療養の給付に先立ってされたものでもないとして、Xが代位取得すべき損害賠償請求権は消滅していないと判断したものである。
 しかし、自賠責保険の被害者請求に対する損害賠償額の支払は、事故による身体傷害から生じた損害賠償債務の支払であるから、その支払によって身体傷害を理由とする損害賠償請求権(これは、請求権として1個である。最1小判昭48・4・5民集27巻3号419頁)は、その支払額だけ減少するのであって、単に便宜上の計算根拠を示したものにすぎない保険会社が算定した損害の内訳によって充当関係が生ずるものではない。
 前掲62年最判が明らかにしているように、労災保険給付などの社会保険給付は、損害の一般的なてん補を目的としたものではなく、それぞれ一定の要件の下に各種の保険給付をするものであるから、給付の実質的性質に応じてどの損害にてん補されるのかが考慮されるのであるが、自賠責保険による被害者への損害賠償額の支払はそのような性質の給付ではないのである。
また、自賠法17条に基づく仮渡金が16条1項の規定による損害賠償額の一部前渡しの性質を有するものであることも異論のないところであろう(注解交通損害賠償法155頁[成瀬=小林執筆分]など)。
 右のとおり、本判決は、個々の論点について異論のないところに基づき、自賠責保険による損害賠償額の支払と療養の給付が前後する場合における、法64条1項による代位取得額の算定方法を明らかにしたものであり、実務上参考になるとともに、自賠法に基づく損害賠償額の支払に当たり保険会社が算定した損害の内訳に何の拘束力もないことを明らかにしている点において意義ある判決といえよう。
なお、Xは、国民健康保険(健康保険も同じ)における求償実務の取扱(前掲、「第三者行為の理論と実務」47頁、昭54・4・2保険発24号、庁保険発6号)に従い療養の給付の価額のうちのXの負担分に過失相殺を施した額につき代位取得を主張し、本判決も右主張に沿って判断を行っている。
この点、本件ではこの点につき何ら議論はされていないので、本件判決が、国民健康保険についていわゆる控除後過失相殺説に立つものかどうかは不明である
ただし、労災保険については、最12小判平1・4・11民集43巻4号209頁がいわゆる控除前過失相殺説に立つことを明らかにしている。


付添看護が必要な被害者が近親者の付添看護を受けた場合に付添看護料相当額の賠償請求ができる
最高裁昭和46年6月29日・民集25巻4号650頁、損害賠償請求事件
【判決要旨】 受傷のため付添看護を必要とした被害者は、付添看護をした者が近親者であるため、現実に看護料の支払をせずまたはその支払請求を受けていない場合であっても、近親者としての付添看護料相当額の損害を被ったものとして、加害者に対しその賠償請求をすることができるものと解するのが相当である。