『弁護士専門研修講座・建築紛争』 - 民事家事・生活トラブル全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
村田法律事務所 弁護士
東京都
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閲覧数順 2017年02月26日更新

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『弁護士専門研修講座・建築紛争』

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相続

『弁護士専門研修講座・建築紛争』

ぎょうせい、平成23年刊行

弁護士会での研修講義録である。

今日までに、上記書籍のうち、以下の部分を読みました。

「Ⅲ 建築基礎知識と建築紛争への対処法」

 建築関連法規として、建築基準法、都市計画法、宅地造成等規制法、消防法、下水道法、水道法、住宅の品質確保の促進等に関する法律、用途に応じて、医療法、食品衛生法、駐車場法、風営法、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律などがある。

 建築に関する規格として、上記の法令のほかに、JIS(日本工業規格)、木材に関するJAS(日本農林規格)、各種の建築関係の学会基準がある。

 上記の法令、規格、基準を満たさないと、瑕疵と認定されやすい。

 瑕疵で相談事例が多いのは、雨漏り・漏水、ひび割れ、剥がれ、欠損、騒音、振動などである。

「Ⅳ 裁判所から見た建築紛争」

 本稿では指摘されていないが、請負人の損害賠償責任に関する民法の規定は、債務不履行・担保責任の特則であると解するのが、学説上の通説である。

 設計料請求については、国土交通省平成21年告示第15号を参照すべきである。

 工事未完成の場合、履行遅滞の事案があると私見では思われる。催告がないと解除できないとも考えられるが、建築契約には工期が記載しているので、雨が長期間ふって工事できなかった、あるいは役所の工事中止命令などのような例外を除けば、催告をしなくても、確定期限を過ぎていれば、履行遅滞ではなかろうか。期限を過ぎた上で、催告解除もできるし、または、最高裁判決によれば、履行遅滞の場合、解除しなくても、損害賠償できる場合がある。

 本稿では指摘されていないが、シックハウスで、建築基準法令に適合していても、有害物質が出ていれば、部材ではなく、施工の問題と考えられる。あるいは、違う部材を用いている可能性がある。これは、建築基準法に適合していても、建物に雨漏りがあれば瑕疵と考えるのと同じ問題である。ただ、シックハウスの原因自体が未だよくわかっていないし、雨漏りと違って、目に見えにくいから難しいのであるから、有害物質の測定方法を工夫するなどして、瑕疵を特定すればよいのではないか。

 本工事は、追加工事との関係で要件事実ではないという見解らしいが、学説上の当否はともかく、追加工事一覧表の中で当事者は主張しなければならない。

「Ⅴ 建築紛争における損害額の認定状況」

講師は、建築紛争の損害賠償請求額が青天井であるかのようなことを述べているが、誤りである。

建築紛争では、損害賠償費目をコツコツと積み上げてしていくため、むしろ請求者が瑕疵を特定し、瑕疵たる理由付け、補修・建て替えの費用を見積もり、それに対して建築業者・売主の側で個別・具体的に認否・反論し、裁判所が認定していくという方式である。

したがって、やり方は違うが、施工について、見積もり、その査定の作業に近い。しかも、そもそも、なぜ瑕疵なのかという難しい作業が前提としてあるため、建築士の鑑定が必要であり、余計に難しい。当事者双方の主張が並行線のまま、裁判所が果たして瑕疵として認定してくれるか、瑕疵である場合に金額はいくらかという問題となる。

なお、講師は、交通事故の赤本を引き合いに出しているが、交通事故では人身損害、慰謝料、物損であるのに対して、建築紛争では不動産の交換価値または使用価値、補修等費用の物的損害、または、まれに慰謝料が問題となるため、建築紛争と交通事故とでは重なる損害費目は物損・補修費・登録費用・税・慰謝料などであり、それ以外は余り参考とはならない。

むしろ、東京地方裁判所民事22部(建築集中部)で定着している瑕疵等一覧表の方式、建築基準法令、過去の裁判例で瑕疵と認められた先例のほうが重要である。

講師は、契約とは違う建築材料を用いたことが瑕疵と認めた最高裁判決では、損害額として、材料代差額等の結局330万円しか認められなかったことを指摘している。この事件では、最高裁・差し戻し控訴審まで合計4審級の裁判をやって長時間がかかり、建築士の鑑定費用や弁護士費用などを考えると、損害賠償額が多くないと、むしろ経済的に見合わないということになりかねない。

・交換価値の下落分

補修しても補いきれない交換価値の下落分について、損害賠償額となるとするのが裁判例。

なお、シックハウスについて、瑕疵に該当するかが問題となるが、裁判例はまだ確立していないようであるが、私見では、有害物質が建築基準法令の基準を超える場合には瑕疵に当たると考える。

・相殺、同時履行の抗弁

請負人の残代金請求権と施主の補修請求権は同時履行関係にあるが、請負人・施主のいずれからも、相殺でき、相殺後の残代金に対する遅延損害金は相殺の意思表示をした日の翌日から発生する(最高裁平成9・7・15)。

したがって、残代金請求権が残る可能性がある事案では、建築紛争が長引くと、遅延損害金のため、施主に不利になる。そのため、同時履行の抗弁を主張したほうがよい場合がある。

損害費目

・建て替え、補修の工事費用

・仲介業者の仲介手数料

・各種費用の消費税

・建築士などの調査費用

建築士は時間給(本稿では指摘されていないが、一説によると、東京周辺では、往復の移動時間を含めて1時間当たり8千円+消費税)で調査費用を請求するため、多額になる可能性があるが、裁判例は損害賠償額が認められる場合に限定して、調査費用を認めている。建築士の調査結果に間違いがあるかどうかも、裁判例では重視されている。裁判所で認められなかった調査費用は施主の自腹になる。

・補修工事のために居住者の移転が必要な場合の移転費用・移転先の家賃・諸費用

・逸失利益として、賃貸物件について、使用できなかった期間に得べかりし家賃

・契約解除が認められる場合には、新しい物件の登記費用

・既に支払った火災保険料

・ローンの利息

・弁護士費用

慰謝料

慰謝料については、本稿では結論・理由付けが明示されていないが、私見では、以下のとおり、考えるべきである。

原則として、建築紛争は物的損害のため、物の交換価値・使用価値が補填されれば、慰謝料は認められない。

例外的に、瑕疵が請負人の不法行為により生じた場合には、損害賠償請求できる。

過失相殺、寄与度

 注文者の指図について、民法636条が問題となる。請負業者は民法636条本文で免責されると誤解していることが多い。しかし、建築は専門性が高いから、裁判例は、民法636条本文だけで、請負人を全面的に免責することを認めていない。

 施主の指図は過失相殺の対象となる場合がある。

 地震・天災などは、損害発生についての寄与として、考慮される。

損益相殺

建て替え・補修によって建物の耐用年数が延びたことによる利益を控除すべきとする裁判例がある。

また、建て替え前の使用収益(家賃相当額)を控除すべきとする裁判例がある。

物損の交換価値と使用価値の関係について、講師は、大審院の富喜丸事件をご存じないようである。