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村田 英幸
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村田 英幸
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Blog201402、廃棄物処理法の最高裁判例、行政訴訟

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Blog201402、廃棄物処理法の最高裁判例、行政訴訟
廃棄物の処理及び清掃に関する法律についての最高裁判例、行政事件訴訟


福岡高判平成23・2・7 産業廃棄物措置命令処分等の義務付け請求控訴事件
判例タイムズ1385号135頁
1 事案の概要
 本件は,産業廃棄物処理場(以下「本件処分場」という。)の周辺地域に居住する原告ら13名が,本件処分場においては廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」という。)所定の産業廃棄物処理基準に適合しない産業廃棄物の処分が行われており,その結果,原告らの生活環境の保全上の支障が生じ,又は生ずるおそれがあると主張して,県知事に対し,
主位的には,廃棄物処理法19条の8第1項に基づき,県知事が前記支障の除去等の措置を講ずべきこと(以下「本件代執行」という。)の義務付けを求め,
予備的には,廃棄物処理法19条の5第1項に基づき,県知事が本件処分場の事業者に対して前記支障の除去等の措置を講ずべきこと(以下「本件措置命令」という。なお,以下,本件代執行及び本件措置命令とを併せて「本件各処分」という。)を命ずることの義務付けを求めるという,非申請型の義務付け訴訟の事案である。
 本件の争点は,
本案前の争点として,
① 本件各処分は行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)37条の2第1項にいう「一定の処分」として特定されているか,
② 原告らは本件各処分の義務付けを求める原告適格を有するか,
③ 本件各処分がなされないことにより行訴法37条1項にいう重大な損害を生ずるおそれがあるか,
④ 損害を避けるために他に適当な方法がないか,
また,本案の争点として,
⑤ 本件処分場において産業廃棄物処理基準に適合しない産業廃棄物の処分が行われたか,
⑥ 廃棄物処理法19条の8第1項,19条の5第1項にいう生活環境の保全上支障が生じ,又は生ずるおそれがあると認められるか,
⑦ 本件代執行について廃棄物処理法19条の8第1項所定の義務付けの訴えの要件を満たすか,
⑧ 本件措置命令について廃棄物処理法19条の5第1項,行訴法37条の2第5項所定の義務付けの訴えの要件を満たすか,である。

(義務付けの訴えの要件等)
行政事件訴訟法第37条の2  第3条第6項第1号(「義務付けの訴え」とは、次に掲げる場合において、行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずることを求める訴訟をいう。
一  行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされないとき(次号に掲げる場合を除く。)。
二  行政庁に対し一定の処分又は裁決を求める旨の法令に基づく申請又は審査請求がされた場合において、当該行政庁がその処分又は裁決をすべきであるにかかわらずこれがされないとき。 )に掲げる場合において、義務付けの訴えは、一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあり、かつ、その損害を避けるため他に適当な方法がないときに限り、提起することができる。
2  裁判所は、前項に規定する重大な損害を生ずるか否かを判断するに当たっては、損害の回復の困難の程度を考慮するものとし、損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質をも勘案するものとする。
3  第1項の義務付けの訴えは、行政庁が一定の処分をすべき旨を命ずることを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り、提起することができる。
4  前項に規定する法律上の利益の有無の判断については、第9条第2項の規定を準用する。
5  義務付けの訴えが第1項及び第3項に規定する要件に該当する場合において、その義務付けの訴えに係る処分につき、行政庁がその処分をすべきであることがその処分の根拠となる法令の規定から明らかであると認められ又は行政庁がその処分をしないことがその裁量権の範囲を超え若しくはその濫用となると認められるときは、裁判所は、行政庁がその処分をすべき旨を命ずる判決をする。

廃棄物の処理及び清掃に関する法律
第19条の5  産業廃棄物処理基準又は産業廃棄物保管基準(特別管理産業廃棄物にあっては、特別管理産業廃棄物処理基準又は特別管理産業廃棄物保管基準)に適合しない産業廃棄物の保管、収集、運搬又は処分が行われた場合において、生活環境の保全上支障が生じ、又は生ずるおそれがあると認められるときは、都道府県知事(第19条の3第3号に掲げる場合及び当該保管、収集、運搬又は処分を行った者が当該産業廃棄物を輸入した者(その者の委託により収集、運搬又は処分を行った者を含む。)である場合にあっては、環境大臣又は都道府県知事。次条及び第19条の8において同じ。)は、必要な限度において、次に掲げる者(次条及び第19条の8において「処分者等」という。)に対し、期限を定めて、その支障の除去等の措置を講ずべきことを命ずることができる。
一  当該保管、収集、運搬又は処分を行った者(第11条第2項又は第3項の規定によりその事務として当該保管、収集、運搬又は処分を行った市町村又は都道府県を除く。)
二  第12条第5項若しくは第6項、第12条の2第5項若しくは第6項、第14条第16項又は第14条の4第16項の規定に違反する委託により当該収集、運搬又は処分が行われたときは、当該委託をした者
三  当該産業廃棄物に係る産業廃棄物の発生から当該処分に至るまでの一連の処理の行程における管理票に係る義務(電子情報処理組織を使用する場合にあっては、その使用に係る義務を含む。)について、次のいずれかに該当する者があるときは、その者
イ 第12条の3第1項(第15条の4の7第2項において準用する場合を含む。以下このイにおいて同じ。)の規定に違反して、管理票を交付せず、又は第12条の3第1項に規定する事項を記載せず、若しくは虚偽の記載をして管理票を交付した者
ロ 第12条の3第3項前段の規定に違反して、管理票の写しを送付せず、又は同項前段に規定する事項を記載せず、若しくは虚偽の記載をして管理票の写しを送付した者
ハ 第12条の3第3項後段の規定に違反して、管理票を回付しなかった者
ニ 第12条の3第4項若しくは第5項又は第12条の5第5項の規定に違反して、管理票の写しを送付せず、又はこれらの規定に規定する事項を記載せず、若しくは虚偽の記載をして管理票の写しを送付した者
ホ 第12条の3第2項、第6項、第9項又は第10項の規定に違反して、管理票又はその写しを保存しなかった者
ヘ 第12条の3第8項の規定に違反して、適切な措置を講じなかった者
ト 第12条の4第2項の規定に違反して、産業廃棄物の引渡しを受けた者
チ 第12条の4第3項又は第4項の規定に違反して、送付又は報告をした者
リ 第12条の5第1項(第15条の4の7第2項において準用する場合を含む。)の規定による登録をする場合において虚偽の登録をした者
ヌ 第12条の5第2項又は第3項の規定に違反して、報告せず、又は虚偽の報告をした者
ル 第12条の5第10項の規定に違反して、適切な措置を講じなかった者
四  前三号に掲げる者が第21条の3第2項に規定する下請負人である場合における同条第1項に規定する元請業者(当該運搬又は処分を他人に委託していた者(第12条第5項若しくは第6項、第12条の2第5項若しくは第6項、第14条第16項又は第14条の4第16項の規定に違反して、当該運搬又は処分を他人に委託していた者を除く。)を除く。)
五  当該保管、収集、運搬若しくは処分を行った者若しくは前三号に掲げる者に対して当該保管、収集、運搬若しくは処分若しくは前三号に規定する規定に違反する行為(以下「当該処分等」という。)をすることを要求し、依頼し、若しくは唆し、又はこれらの者が当該処分等をすることを助けた者があるときは、その者
2  第19条の4第2項の規定は、前項の規定による命令について準用する。

第19条の8  第19条の5第1項に規定する場合において、生活環境の保全上の支障が生じ、又は生ずるおそれがあり、かつ、次の各号のいずれかに該当すると認められるときは、都道府県知事は、自らその支障の除去等の措置の全部又は一部を講ずることができる。この場合において、第2号に該当すると認められるときは、相当の期限を定めて、当該支障の除去等の措置を講ずべき旨及びその期限までに当該支障の除去等の措置を講じないときは、自ら当該支障の除去等の措置を講じ、当該措置に要した費用を徴収する旨を、あらかじめ、公告しなければならない。
一  第19条の5第1項の規定により支障の除去等の措置を講ずべきことを命ぜられた処分者等が、当該命令に係る期限までにその命令に係る措置を講じないとき、講じても十分でないとき、又は講ずる見込みがないとき。
二  第19条の5第1項の規定により支障の除去等の措置を講ずべきことを命じようとする場合において、過失がなくて当該支障の除去等の措置を命ずべき処分者等を確知することができないとき。
三  第19条の6第1項の規定により支障の除去等の措置を講ずべきことを命ぜられた排出事業者等が、当該命令に係る期限までにその命令に係る措置を講じないとき、講じても十分でないとき、又は講ずる見込みがないとき。
四  緊急に支障の除去等の措置を講ずる必要がある場合において、第19条の5第1項又は第19条の6第1項の規定により支障の除去等の措置を講ずべきことを命ずるいとまがないとき。
2  都道府県知事は、前項(第3号に係る部分を除く。)の規定により同項の支障の除去等の措置の全部又は一部を講じたときは、当該支障の除去等の措置に要した費用について、環境省令で定めるところにより、当該処分者等に負担させることができる。
3  都道府県知事は、第1項(第3号に係る部分に限る。)の規定により同項の支障の除去等の措置の全部又は一部を講じたときは、当該支障の除去等の措置に要した費用について、環境省令で定めるところにより、当該排出事業者等に負担させることができる。
4  都道府県知事は、第1項(第4号に係る部分に限る。)の規定により同項の支障の除去等の措置の全部又は一部を講じた場合において、第19条の6第1項各号のいずれにも該当すると認められるときは、当該支障の除去等の措置に要した費用の全部又は一部について、環境省令で定めるところにより、当該排出事業者等に負担させることができる。この場合において、当該排出事業者等に負担させる費用の額は、当該産業廃棄物の性状、数量、収集、運搬又は処分の方法その他の事情からみて相当な範囲内のものでなければならない。
5  前三項の規定により負担させる費用の徴収については、行政代執行法第5条 及び第6条 の規定を準用する。
6  第1項の規定により同項の支障の除去等の措置の全部又は一部を講じた場合において、当該支障の除去等の措置が特定産業廃棄物最終処分場の維持管理に係るものであるときは、都道府県知事は、当該特定産業廃棄物最終処分場に係る第15条の2の4において読み替えて準用する第8条の5第6項に規定する者(以下この項において「設置者等」という。)及び機構にあらかじめ通知した上で、当該支障の除去等の措置に要した費用に充てるため、その費用の額の範囲内で、当該特定産業廃棄物最終処分場に係る維持管理積立金を当該設置者等に代わって取り戻すことができる。

2 第1審及び本判決の要約
 第1審(判時2122号50頁)は,争点①,②についてはいずれも積極的に解し,次いで本案前の争点である争点③,④を判断する前提として,争点⑤,⑥を先に判断することとし,争点⑤については積極的に解したものの,争点⑥については消極的に解した。すなわち,本件処分場においては産業廃棄物処理基準に適合しない産業廃棄物の処分が行われたことにより,人の生活に密接な関係のある環境に何らかの支障が現実に生じ,又は通常人をしてそのおそれがあると思われるに相当な状態が生じているというべきであるとしたものの,原告らが主張するところの硫化水素等の検出ないし基準値の超過の主張については,浸透水基準や排出基準の検査項目に含まれていない,あるいは基準を超えているとは認められないのであって,硫化水素等の検査結果をもって生活環境の保全上の支障のおそれの根拠とすることはできないとの判断をした。そして,本案前の争点である③につき,争点⑥で判示したように本件処分場自体に生活環境の保全上の支障が生じ又は生ずるおそれを肯定したものの,検査結果等から本件処分場周辺の地下水の水質は汚染された状況にはないとして,原告らに重大な損害が生ずるおそれがあるとはいえないと認定し,その結果,原告らの訴えは義務付けの訴えの要件を満たさず不適法であるとして,主位的,予備的いずれもの訴えをも却下した。
 これに対し原告らが控訴したところ,控訴審裁判所は,本判決で,争点①,②,⑤についてはおおむね第1審の判断どおりとしたが,争点⑥についての判断で,本件処分場においては産業廃棄物処理基準に適合しない産業廃棄物の処分が行われたことにより,人の生活に密接な関係のある環境に何らかの支障が現実に生じ,又は通常人をしてそのおそれがあると思われるに相当な状態が生じているというべきであることをもって,積極的に解されると結論付け,第1審とは異なり,争点⑥の判断では硫化水素等についての検査結果を問題としなかった。その上で本案前の争点である③の判断において,本件処分場の地下に浸透水基準を大幅に超過した鉛を含有する水が浸透しており,それが地下水を汚染して本件処分場の外に流出する可能性は高く,控訴人13名のうち8名は井戸水を飲料水及び生活水として利用していることからすれば,8名については本件処分場において産業廃棄物処理基準に適合しない産業廃棄物の処分が行われたことにより,その生命,健康に損害を生ずるおそれがあるものと認められ,重大な損害を生じるおそれがあると判断した。次いで,8名についてはその余の争点について判断し,争点④については控訴人8名に損害を生じさせるおそれのある直接の原因は本件処分場の事業者(第三者)にあり,事業者に民事訴訟を提起して権利救済を図る可能性があるとしつつも,事業者が経営上の問題を抱えていることを考慮すると事業者に対する民事訴訟による損害回避の具体的可能性は低いとして,補充性につき積極的に解した。そして争点⑦については検査結果から廃棄物処理法19条の8第1項の要件は満たされないとして主位的請求は認められないとしたものの,争点⑧については鉛で汚染された地下水が8名ら周辺住民の生命,健康に損害を及ぼすおそれがあること等から積極的に解し,控訴人8名について原判決を取り消した上,予備的請求の限度で認容した。
3 論点・学説等との対応
 争点①の「一定の処分」としての特定については,行政庁には効果裁量が与えられていることから,根拠法令の趣旨等に照らして執るべき措置の選択肢の範囲が特定されていればよいと解されている(南博方=高橋滋編『条解行政事件訴訟法』643頁以下)。原判決も本判決もこの立場に立脚していると思われる。
 争点②の原告適格については,多数の裁判例が存することはいうまでもなく,本件も一事例を加えるものといえる。
 争点⑤の産業廃棄物処理基準に適合しない産業廃棄物の処分の有無の点は,純粋に事実認定の問題といえるが,原判決の認定の手法,論理は参考になると思われる。
 争点⑥の生活環境の保全上支障が生じ,又は生ずるおそれの有無の点については,第1審は本件処分場の問題点を肯定しつつ,地下水の水質についての検査結果からして原告ら各自に支障が生じ又は生ずるおそれがあるとはいえないとして,消極に解したのに対し,控訴審は本件処分場の問題点を肯定したことをもって争点⑥につき積極に解したものであるが,原告らは第1審において,硫化水素等の検出ないし基準値の超過をもって,生活環境の保全上の支障の根拠としていたことから,第1審はその点を判断要素に持ち込んだことが考えられる。しかしながら,そもそも生活環境の保全上の支障という概念は,産業廃棄物の最終処分場に対する法的規制で登場する概念であることから(原判決の第2の1(3)「産業廃棄物の処分に関する法的規制」における判示部分参照),周辺住民の個別具体的な生活環境の問題というよりはむしろ,本件処分場自体の特性として把握すべきものとも考えられるのであって,控訴審はかような考え方を採用したものと推察される。この点は,今後議論の余地があろう。
 そして,争点③の損害の重大性について,第1審は地下水の水質に問題がないと判断したのに対し,控訴審は控訴人8名について前記のとおりこれを肯定したが,この点も事実認定の問題といえよう。
 争点④の補充性については,この要件を欠く例として,(ア)損害を避ける方策が個別法で特別に法定されている場合にもかかわらず当該方策を取らずに義務付けを求める場合,(イ)既にされた不利益処分が可分でその不利益処分自体の一部取消しを求めることによって適切に損害を避け得るのにこれをせず新たな処分の義務付けを求める場合,(ウ)法令において一定の処分を求めるための申請権が与えられているのにその申請をせずに処分をすることの義務付けを求める場合などが挙げられ,他方,損害を生じさせている直接の原因が行政庁以外の第三者の行為にあり,当該第三者に損害を避けるための措置を求めることによってある程度の権利救済を図ることが可能であるという場合であっても,直ちにそのことだけで補充性が否定されるわけではないとされている(南=高橋編・前掲639頁以下)。本件では,当該第三者が別途原告らを含む近隣住民の申立てに基づく仮処分決定により本件処分場の使用及び操業を仮に差し止められていること等の事情から,民事訴訟による権利救済は期待できないとしており,参考になろう。
 争点⑦及び⑧については,本判決は廃棄物処理法19条の8第1項,19条の5第1項,行訴法37条の2第5項の要件具備について判断をした一事例といえるのであり,廃棄物処理法の代執行,措置命令の要件に関し参考になろう。
 なお,本件については,最高裁決定平成24年7月3日にて,上告については棄却,上告受理申立については不受理と判断されている。


最高裁平成21年6月5日、一般廃棄物処理業及び浄化槽清掃業の各不許可処分取消請求事
裁判所裁判集民事231号121頁、判例タイムズ1304号149頁

【判示事項】 浄化槽の清掃により引き出される汚泥等の収集運搬に必要な一般廃棄物収集運搬業の許可を有しない者に対してされた浄化槽清掃業不許可処分を違法とした原審の判断に違法があるとされた事例

【判決要旨】 浄化槽の清掃により引き出される汚泥等の収集運搬に必要な一般廃棄物収集運搬業の許可を有しない者からされた浄化槽清掃業の許可申請につき,浄化槽法(平成16年法律第147号による改正前のもの)36条2号ホ所定の欠格事由に該当することを理由として不許可処分がされた場合において,上記許可申請に係る区域内では浄化槽の清掃と上記汚泥等の収集運搬を一体として併せて行わせる趣旨の下に他の事業者に対する一般廃棄物収集運搬業等の許可がされていたなど判示の事情の下で,上記申請者から上記汚泥等の収集運搬の要請があった場合には上記事業者はこれに応ずる義務があるとし,両者の間で上記汚泥等の収集運搬につき業務委託契約が締結される見込みがあったのかどうかなどの事実について審理を尽くすことなく,上記申請者は上記汚泥等の収集運搬を上記事業者に業務委託することができる体制にあったとして,上記不許可処分を違法とした原審の判断には,違法がある。

【参照条文】 浄化槽法(平16法147号改正前)36 、浄化槽法35-1

1 Xらは,一般廃棄物(し尿汚泥)の収集運搬及び浄化槽の清掃が既存許可業者Z(補助参加人)によって行われている区域において,これらの事業に新規に参入しようとし,廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」という。)7条1項に基づく一般廃棄物収集運搬業の許可申請(以下「申請①」という。)及び浄化槽法35条1項に基づく浄化槽清掃業の許可申請(以下「申請②」という。)をしたが,旧大野広域連合長(地方自治法284条3項参照)から,いずれも不許可とする処分を受けた。
本件は,広域連合長の事務を承継したY(豊後大野市長)に対し,Xらが各処分の取消しを求める訴訟である。控訴審判決は,申請①に係る不許可処分は適法としたが,申請②に係る不許可処分は違法としてこれを取り消したことから,これについてYから上告受理の申立てがあった。Xらからの不服申立てはなかったため,上告審で審判の対象となったのは,申請②に係る不許可処分の違法性の有無のみである。
2 本件に関連する法制度についてみると,まず,一般廃棄物の処理については,市町村が,一般廃棄物処理計画を定め(廃棄物処理法6条1項),自ら又は第三者に委託してこれを行うとされており(同法6条の2),当該市町村は,自らこれを処理することが困難な場合で許可申請の内容が上記計画に適合するものである等所定の条件を満たした場合に,一般廃棄物収集運搬業の許可をすることができる(同法7条1項,5項)。そして,この許可につき,判例(最高裁判決平成16年1月15日・判タ1144号158頁)は市町村長に広範な裁量を認めている。
 他方,浄化槽清掃業の許可基準についてみると,まず浄化槽の清掃は環境省令で定める浄化槽の清掃の技術上の基準に従って行われるベきものであり(浄化槽法4条8項,9条),当該技術上の基準の一つとして,引き出し後の汚泥等が適正に処理されるよう必要な措置を講じることが定められている(環境省関係浄化槽法施行規則3条12号)。そして,判例(最高裁判決平成5年9月21日・裁判集民事169号807頁,判タ829号141頁)は,浄化槽清掃業の許可申請者が,浄化槽の清掃により引き出される汚泥等の収集,運搬につき,これに必要な一般廃棄物処理業の許可を有せず,また,他の一般廃棄物処理業者に業務委託すること等により適切に処理する方法も有していないという事実関係の下において,上記許可申請者には,浄化槽法36条2号ホ所定の欠格事由(浄化槽清掃業の業務に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者)があるとしている。本件で,上記広域連合長が申請②を不許可とした理由も,浄化槽の清掃の結果,引き抜かれた汚泥等を適正に処理する体制が確認できないためというものであった。
3 控訴審判決は,申請①に係る不許可処分については,裁量逸脱はないとしたが,申請②に係る不許可処分については,Zのみで広域連合の区域内におけるし尿汚泥の収集運搬を行うことを前提としてZに一般廃棄物収集運搬事業の許可等がされている以上,Zは,当該町村の住民等からし尿汚泥の収集運搬の要請があった場合には,特段の事情のない限り,これに応じる義務があるから,Xらは,Zに対し,浄化槽の清掃により引き出される汚泥等の収集運搬を業務委託することができる体制にあったとして,これと異なる判断の下にされた不許可処分は違法としたものである。
 これに対し,本判決は,広域連合が定めた一般廃棄物処理計画は,区域内での浄化槽の清掃とこれにより引き出される汚泥等の収集運搬については,両者を一体として併せてZのみに行わせるという趣旨であり,この趣旨の下にZに対しし尿汚泥の収集運搬に係る一般廃棄物収集運搬業の許可がされたものであるから,Zとしては,住民等から浄化槽の清掃とこれにより引き出される汚泥等の収集運搬とを併せて依頼された場合に,これを引き受けて業務を適切に行いさえすれば,同計画に従った業務を遂行しているということができるのであり,これを超えて,他の事業者が行う浄化槽の清掃により引き出される汚泥等につき収集運搬を行うことを義務付けられる理由はないとして,控訴審判決を破棄した。
4 浄化槽清掃業の許可基準について判示した平成5年の上記判例は,その判示内容からすれば,他の一般廃棄物処理業者に控訴審判決がいうような業務引受け義務があるとはいえないとの立場に立っているもののように思われるが,この点につき明示的に判断を示したものではなかった。この点,本件の控訴審判決が一般廃棄物収集運搬業者であるZに引受義務があるとしたため,本判決がこれについて明示的に判断をすることになったものと解される。
 なお,現行法制上,国民生活に不可欠な一定の公共サービスについては,法律の規定により,事業者に対し供給義務や業務引受け義務が課されているが(電気事業法18条,ガス事業法16条,鉄道営業法6条,道路運送法13条等),一般廃棄物処理業者には,法律の条項上,こうした義務は課されていない。
しかしながら,本判決は,そのことから一般的にZには業務引受義務がないとはせず,本件における廃棄物処理計画の趣旨等を踏まえて,Zが当該計画で予定されている以上の業務引受義務を課されることはないとしたものである。
なお,このような業務引受義務を肯定するものとして北村喜宣「判評」自研66巻5号111頁,この見解に疑問を呈するものとして阿部泰隆「一般廃棄物処理業・浄化槽清掃業の許可法制の問題点(2・完)」自研68巻4号3頁がある。


最高裁平成16年1月15日、 一般廃棄物処理業不許可処分取消請求事件
最高裁判所裁判集民事213号241頁, 判例タイムズ1144号158頁

【判示事項】 1 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(平成15年法律第93号による改正前のもの)7条3項1号にいう「当該市町村による一般廃棄物の収集又は運搬」の意義
       2 既存の一般廃棄物収集運搬業者等によって一般廃棄物の適正な収集及び運搬が行われてきていることを踏まえて市町村の一般廃棄物処理計画が作成されている場合にこれとは別にされた一般廃棄物収集運搬業の許可申請の内容の同計画適合性

【判決要旨】 1 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(平成15年法律第93号による改正前のもの)7条3項1号にいう「当該市町村による一般廃棄物の収集又は運搬」とは,当該市町村が自ら又は委託の方法により行う一般廃棄物の収集又は運搬をいい,一般廃棄物収集運搬業の許可を受けた業者が行う一般廃棄物の収集又は運搬はこれに当たらない。
       2 既存の一般廃棄物収集運搬業者等によって一般廃棄物の適正な収集及び運搬が行われてきていることを踏まえて市町村の一般廃棄物処理計画が作成されている場合には,市町村長は,これとは別にされた廃棄物の処理及び清掃に関する法律(平成11年法律第160号による改正前のもの)7条1項に基づく一般廃棄物収集運搬業の許可申請について廃棄物の処理及び清掃に関する法律(平成15年法律第93号による改正前のもの)7条3項2号適合性を審査するに当たり,一般廃棄物の適正な収集及び運搬を継続的かつ安定的に実施させるためには,既存の業者等のみに引き続きこれを行わせることが相当であるとして,当該申請の内容は一般廃棄物処理計画に適合するものであるとは認められないという判断をすることができる。

【参照条文】 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(平15法93号改正前)7条3項
       廃棄物の処理及び清掃に関する法律(平11法87号改正前)6条
       廃棄物の処理及び清掃に関する法律(平11法160号改正前)7条1項

 1 Xは,Y(市長)に対し,廃棄物の処理及び清掃に関する法律(平成11年法律第87号による改正前のもの。以下「廃棄物処理法」という。)7条1項に基づき,甲市内で事業活動に伴って生じる一般廃棄物(し尿・浄化槽汚泥を除く。)の収集・運搬を業として行うことの許可申請をした。これに対し,Yは,「甲市において,既存の許可業者で一般廃棄物の収集,運搬業務が円滑に遂行されており,新規の許可申請は廃棄物処理法7条3項1号及び2号に適合しない」との理由で不許可処分をした。本件は,この処分の取消訴訟である。
 2 甲市においては,一般家庭から排出される一般廃棄物(家庭系廃棄物)については,A社に収集・運搬を委託しているが,事業活動に伴って排出される一般廃棄物(事業系廃棄物)については,甲市が自ら又は委託の方法により処理することはなく,一般廃棄物処理業の許可を受けた唯一の業者であるA社がこれを処理している。Xは,このようにA社が一般廃棄物処理業の許可を受けて行っている甲市の事業系廃棄物の処理について,Yの許可を受けて参入しようとしたものである。
 甲市の一般廃棄物処理計画のうち平成10年度及び平成11年度の各実施計画においては,事業活動に伴って排出されるごみは,排出者自らの責任において適正に処理し,多量に発生したごみは排出者が自己処理し,又は許可業者に委託して適正に処理することが,廃棄物を排出する際の原則として求められていた。
 3 第1,2審とも,Xの請求を認容して本件不許可処分を取り消すべきものとした。
 原判決の理由の要旨は,次のとおりである。
 (1)甲市が自ら又は委託の方法により事業者の排出する一般廃棄物の収集・運搬を行うことは困難であるものと認められるから,本件許可申請は廃棄物処理法7条3項1号に適合するものである。
 (2)甲市の一般廃棄物処理計画は,A社のみに事業系廃棄物の収集・運搬業の許可を与えることを内容としているものではなく,また,それを前提としているものでもない。それにもかかわらず,かかる一般廃棄物処理計画が円滑に遂行されている以上,新規の許可申請に対して許可することは同計画に適合しないこととなるとしたYの判断は,廃棄物処理法7条3項2号の適用を誤ったものである。
 4 上告受理申立ての理由は,廃棄物処理法7条3項1号及び2号の解釈適用の誤りをいうものである(判例違反をいう論旨は排除された。)。
 5 本判決は,廃棄物処理法7条3項1号については,原審と同様に解したものの,同項2号については,「既存の許可業者等によって一般廃棄物の適正な収集及び運搬が行われてきており,これを踏まえて一般廃棄物処理計画が作成されているような場合には,市町村長は,これとは別にされた一般廃棄物収集運搬業の許可申請について審査するに当たり,一般廃棄物の適正な収集及び運搬を継続的かつ安定的に実施させるためには,既存の業者等のみに引き続きこれを行わせることが相当であるとして,当該申請の内容は一般廃棄物処理計画に適合するものであるとは認められないという判断をすることもできる」との判断を示した。その上で,本判決は,甲市ではA社により一般廃棄物の収集及び運搬が円滑に遂行されてきていることを踏まえて一般廃棄物処理計画が作成されていると解されるところ,本件不許可処分は,その点を考慮した上,一般廃棄物の適正な収集及び運搬を継続的かつ安定的に実施させるためには,新たにXに対して許可を与えるよりも,引き続きA社のみに一般廃棄物の収集及び運搬を行わせる方が相当であるとして,本件許可申請は一般廃棄物処理計画に適合するものであるとは認められないと判断したものと解することができ,そのようなYの判断は許されないものとはいえないから,本件不許可処分は適法であると判断した。
 6 廃棄物処理法は,一般廃棄物の処理に関する事務を市町村の固有事務としており,市町村は,当該市町村の区域内の一般廃棄物処理計画を定めなければならないとされている(同法6条1項)。そして,市町村は,一般廃棄物の処理について統括的な責任を有するものとされている(同法6条の2第1項)。そこで,市町村は,自ら又は第三者に委託して一般廃棄物の処理を行うことになるところ,そのようにして処理することが困難な場合に限って,一般廃棄物処理業を行おうとする業者に廃棄物処理法7条1項所定の一般廃棄物処理業の許可がされることになっている。これは,市町村が一般廃棄物処理計画を作成し,これに従って業務を実施するに当たって,当該計画との整合性を欠く業者が存在したのでは,計画どおりに業務を遂行することができなくなるという理由から,計画との整合性が確保される場合に許可をしようという制度である(厚生省水道環境部編『〔新〕廃棄物処理法の解説A』96頁)。
 7 廃棄物処理法は,昭和45年に清掃法の全面改正として制定されたものであり,一般廃棄物処理業の許可制度について定める廃棄物処理法7条の規定は,清掃法15条の汚物取扱業の許可制度を引き継いだものである。
清掃法は,当初は具体的な許可要件を定めてはいなかったが,昭和40年の改正により,その15条の2において若干の許可要件が追加され,これがその後、廃棄物処理法に引き継がれ,その後更に要件が整備された。
 ところで,この清掃法15条の許可の性質について,最一小判昭47.10.12民集26巻8号1410頁は,市町村長がこの許可を与えるかどうかは,清掃法の目的と当該市町村の清掃計画とに照らし,市町村がその責務である汚物処理の事務を円滑完全に遂行するのに必要適切であるかどうかという観点から,これを決すべきものであり,その意味において,市町村長の自由裁量にゆだねられていると判示している。
 廃棄物処理法7条の一般廃棄物処理業の許可についても,最三小判平5.9.21裁判集民事169号807頁,判例タイムズ829号141頁は,一般廃棄物処理業の不許可処分について行政庁に裁量権の逸脱濫用はないとした原審の判断を是認している。また,一般廃棄物処理業の不許可処分の取消請求を棄却した静岡地判平8.11.22判例タイムズ958号118頁について,その控訴審の東京高判平9.12.3及び上告審の最三小判平11.4.13も,請求棄却の結論を維持している。
 8 本判決は,このような判例等を視野に入れ,廃棄物処理事業が本来的には市町村が自己の責任において実施すべき事業と定められていることや,廃棄物処理法7条3項の規定の文言上,市町村長には相当広範な裁量が与えられているものと考えられることから,前記のような判断を示したものである。
 結果的には新規業者の参入を認めないことになっているが,本判決の趣旨は,既存業者を保護することにあるのではなく,廃棄物処理事業が本来市町村が自己の責任において遂行すべきものであって,一般廃棄物処理業の許可が通常の営業許可とは異なる性質を持っていること,廃棄物処理法7条3項が市町村長の裁量を認める余地のある規定となっていること等を考慮して,計画適合性に関する市町村長の裁量を認めるべきであるとしたものである。
 一般廃棄物処理業の許可については,その効力等が訴訟で争われることが少なくないところ,本判決は廃棄物処理法7条の解釈について最高裁判所が初めて明確に判断を示したものであり,実務に与える影響は小さくない。