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閲覧数順 2024年04月24日更新

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面接で落とされるとなぜこんなに立ち直れないのか

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面接で落とされると、本当になかなか立ち直れない。

落とされたんじゃない、合わなかっただけなんだ、とか
めぐりあわせが悪かっただけなんだ、とか
もし通ったとしても入ってから苦労する会社だぞ、とか
いろいろ慰めの言葉をもらっても、
そしてその言葉は単なる慰めではなく、本当にそうであることも多いのだけれど、
でもやっぱり落ち込むし、
なかなか立ち直れない。

たとえ第一志望ではなかったとしても、
全人格を否定されたような気分は、なかなか抜けない。

なぜか?
理由はちゃんと、あります。

その理由が分かったとしても、
決して立ち直れるような即効性があるわけではないけれど、
そういう構造なのか、と客観的に理解することで
客観的に引いた目で見てみることは可能だし、
それは
次のステージに向けて役に立たないわけではないので、
「気休め」に過ぎないとしても、書いておきたいと思います。

面接を前に、主に私たちは次のようなことを行います。
準備:自分が過去に経験したこと、現在興味を持っていることの列挙(棚卸し、などと呼ばれます)
自己PR作り:
現在の自分の長所。過去の経験と現在の興味により肉付け
志望理由の形成:
なぜその企業に魅力を感じたか、将来やりたいこと。やはり、過去の経験と現在の興味で肉付け

これを私たちは面接の場で、
面接官に伝わるよう、評価されるよう、
過去→現在→将来というひとつの一貫したストーリーとして語っていきます。

あくまで、その企業の面接用に、のはずだったのです。

しかし、実はこの作業は、
社会学、特に構成主義と呼ばれる社会学において、
「自己」「アイデンティティ」を形成する過程そのもの、なのです。

「自己」「自我」というものは、
決して元から自然にあるものではなく、
我々自身が他人に自分のことを物語っていくことで、
そしてそれを語った他者から承認されていくことで、
形成されるものなのです。

「私って○○な人でしょう?」

よく週刊文春とか読んでそうなオッサン達から揶揄されるこんな表現を
そのまま使わなかったとしても、
その当のオッサンたちだって実は毎日やっていることなのです。

もちろん日常生活では、一気に最初から創り上げてしまうのではなく、
少しずつ、更新しながらの作業ですし、
すべてをひとつの物に統一してしまう必要もありません。
場面場面で少しぐらいズレがあっても構いませんし、
昨日話した物語と多少意味づけが変わっていたとしても、まあ許される。

だから、どこかの場面でそれがうまくいかなかったとしても、
リカバリは効きます。

でも。
就活の面接の場面では、
過去から現在までのいくつかの経験を使用し
それこそ生まれて以来の自分のストーリーを、一つにして作り上げてしまいます。

本来なら自分にとって意義のある経験も、
そのストーリーに使用されなければ、「意味のないもの」になっている状態です。

面接で落とされることは、
本来は、単に、たまたま今回作ったこのひとつのストーリーが伝わらなかっただけ、のはずなのですが、
すでに、この手続きから、自分の物語はこの物語に統合した後です。
それが否定されたということは、
「この」自分が殺されたことと、同じこと。
全人格が否定されたというのは、決して比喩でも気分だけのものでもないのです。

「失恋には、日にち薬」とは
とあるマンガ(西村しのぶ『サード・ガール』)のセリフですが、
否定されたのは数ある自分物語のひとつのバリエーションだったことに気づくのにも、
どうすれば物語自体の「強さ」を上げられるか冷静に振り返られるようになるためにも、
「気分転換」は物理的に、必要です。

ゲームじゃないですが、自分の手持ちの「ライフ」は有限です。
闇雲に殺され続けるわけにはいかない。
立ち止まって「自分物語」を変更することも、時に必要なのです。

参考:
浅野智彦『自己への物語論的接近』(勁草書房、2001)
ケネス・ガーゲン『あなたへの社会構成主義』(ナカニシヤ出版、2004)
西村しのぶ『サード・ガール8』(スタジオ・シップ、1993)

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(キャリアカウンセラー)
『稼げる資格』 資格専門誌『稼げる資格』編集長

働く個人の側に立ち、資格や学びを活用したキャリアづくりを提案

編集長を務める資格や大学院の専門誌をはじめ、就職、転職、U・Iターン、進学とこれまで一貫して個人のキャリアを提案するメディアを作ってきました。これまで取り扱ってきた3000人以上にのぼるライフヒストリーを元に、リアリティのある情報を提供します。