Blog201401、商標法(その3) - 民事家事・生活トラブル全般 - 専門家プロファイル

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Blog201401、商標法(その3)

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Blog201401、商標法(その3)


商標権の移転
商標権の移転について、旧商標法は、営業とともに移転する場合を規定していた。
現行商標法24条の2は、営業譲渡とは関係なく、指定商品・指定役務ごとに移転できる旨を規定している。
最高裁昭和43・11・5
旧商標法(大正10年法律第99号)第12条第1項にいう商標権をその営業とともに移転するとは、商標権の譲渡人が従来その商標を使用した指定商品の営業において以後これを使用せず、譲受人がその商標を使用して譲渡人と同様の指定商品の営業をなしうる状態を現出すれば足り、その譲渡される商標権とともにこれを行使していた範囲の営業がことごとく包括的に移転されることを要するものではない。
(商標権の移転)
第24条の2  商標権の移転は、その指定商品・指定役務が二以上あるときは、指定商品・指定役務ごとに分割してすることができる。
2  国・地方公共団体・これらの機関又は公益に関する団体であって営利を目的としないものの商標登録出願であって、第4条第2項に規定するものに係る商標権は、譲渡することができない。
3  公益に関する事業であって営利を目的としないものを行っている者の商標登録出願であって、第4条第2項に規定するものに係る商標権は、その事業とともにする場合を除き、移転することができない。
4  地域団体商標に係る商標権は、譲渡することができない。


商標権の更新登録
最高裁昭和42・1・26
商標権の存続期間の更新登録の出願について、出願者の依頼した弁理士の過失により、その出願期間内に出願できなかったときは、これを、商標法第20条第3項にいう出願者がその責に帰することができない理由によったものと解することはできない。
したがって、商標権は更新登録できず、改めて新規に出願しなければならないと解される。
(存続期間の更新登録の申請)
商標法第20条  商標権の存続期間の更新登録の申請をする者は、次に掲げる事項を記載した申請書を特許庁長官に提出しなければならない。
一  申請人の氏名又は名称及び住所又は居所
二  商標登録の登録番号
三  前二号に掲げるもののほか、経済産業省令で定める事項
2  更新登録の申請は、商標権の存続期間の満了前6月から満了の日までの間にしなければならない。
3  商標権者は、前項に規定する期間内に更新登録の申請をすることができないときは、その期間が経過した後であっても、その期間の経過後6月以内にその申請をすることができる。
4  商標権者が前項の規定により更新登録の申請をすることができる期間内に、その申請をしないときは、その商標権は、存続期間の満了の時にさかのぼって消滅したものとみなす。


商標出願公告と商標登録
最高裁昭和36・4・25
 商標登録出願公告に際し指定商品中遺脱されたものがあっても、商標登録で指定商品とされている以上、その遺脱された商品について商標登録は無効ではない。
(参照条文)
 旧商標法(大正10年法律99号)5条,7条1項・2項,24条,旧特許法(大正10年法律96号)73条


商標権侵害罪
最高裁昭和41・6・10
 一 商標が「コニヤツク」を指定商品として登録されている場合に、これを和製の「ブランデー」に使用する行為は、指定商品に類似する商品についての登録商標の使用として商標法第37条第1号により商標権の侵害とみなされるものではなく、指定商品に登録商標を使用したものとして同法第78条の商標権を侵害する行為にあたる
二 商標法第78条の商標権を侵害する犯行は、それが継続して行なわれたときは、登録商標一個ごとに包括一罪となり、また、その行為が、別個の登録商標を表示するラベルが二個貼付されている空瓶にその内容を詰めかえる方法により行なわれたときは、観念的競合の関係に立つと解すべきである。
(参照条文)
 商標法4条1項11号,商標法6条,商標法27条2項,商標法37条1号,商標法78条,商標法2条3項,商標法78条,刑法54条1項前段


商標登録無効審判と訴訟の関係
最高裁昭和39・9・10
 旧商標法(大正10年法律第96号)施行当時に、商標登録がその商標登録出願権を承継しない者の出願に対してなされたことを理由として商標登録の無効を主張する者は、先ず特許庁に対してその無効の審判を請求して登録無効の確定審決を受けるべきであり、右手続を経ないで、直接裁判所に商標登録無効確認訴訟を提起することは許されない。


商標権登録無効審判請求と除斥期間経過後における無効理由の追加
最高裁昭和58・2・17、『商標・意匠・不正競争判例百選』39事件、盛光事件
商標登録無効審判手続において、商標法47条の除斥期間経過後は新たな無効理由を追加主張することは許されない。
(注)この最高裁判例には批判がある。しかし、私見であるが、一般の民事訴訟法理論(旧訴訟物理論)・行政事件訴訟法との整合性を考慮すれば、商標法47条は、商標権無効の主張できる時期を制限した特別な規定であると解される。
(参照条文)
 旧商標法(大正10年法律第99号)2条1項,16条1項,23条,商標法4条1項,商標法46条1項,商標法47条
(商標登録の無効の審判)
第46条  商標登録が次の各号のいずれかに該当するときは、その商標登録を無効にすることについて審判を請求することができる。この場合において、商標登録に係る指定商品・指定役務が二以上のものについては、指定商品・指定役務ごとに請求することができる。
一  その商標登録が第3条、第4条第1項、第7条の2第1項、第8条第1項、第2項若しくは第5項、第51条第2項(第52条の2第2項において準用する場合を含む。)、第53条第2項又は第77条第3項において準用する特許法第25条 の規定に違反してされたとき。
二  その商標登録が条約に違反してされたとき。
三  その商標登録がその商標登録出願により生じた権利を承継しない者の商標登録出願に対してされたとき。
四  商標登録がされた後において、その商標権者が第77条第3項において準用する特許法第25条 の規定により商標権を享有することができない者になったとき、又はその商標登録が条約に違反することとなったとき。
五  商標登録がされた後において、その登録商標が第4条第1項第1号から第3号まで、第5号、第7号又は第16号に掲げる商標に該当するものとなっているとき。
六  地域団体商標の商標登録がされた後において、その商標権者が組合等に該当しなくなったとき、又はその登録商標が商標権者若しくはその構成員の業務に係る商品・役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているもの若しくは第7条の2第1項各号に該当するものでなくなっているとき。
2  前項の審判は、商標権の消滅後においても、請求することができる。
3  審判長は、第1項の審判の請求があったときは、その旨を当該商標権についての専用使用権者その他その商標登録に関し登録した権利を有する者に通知しなければならない。
第46条の2  商標登録を無効にすべき旨の審決が確定したときは、商標権は、初めから存在しなかったものとみなす。ただし、商標登録が前条第1項第4号から第6号までに該当する場合において、その商標登録を無効にすべき旨の審決が確定したときは、商標権は、その商標登録が同項第4号から第6号までに該当するに至った時から存在しなかったものとみなす。
2  前項ただし書の場合において、商標登録が前条第1項第4号から第6号までに該当するに至った時を特定できないときは、商標権は、その商標登録を無効にすべき旨の審判の請求の登録の日から存在しなかったものとみなす。
第47条  商標登録が第3条、第4条第1項第8号、第11号から第14号まで、第8条(先願)第1項、第2項、第5項の規定に違反してされたとき、商標登録が第4条第1項第10号、第17号の規定に違反してされたとき(不正競争の目的で商標登録を受けた場合を除く。)、商標登録が第4条第1項第15号の規定に違反してされたとき(不正の目的で商標登録を受けた場合を除く。)又は商標登録が第46条第1項第3号に該当するときは、その商標登録についての同項の審判は、商標権の設定の登録の日から5年を経過した後は、請求することができない。
2  商標登録が第7条の2第1項の規定に違反してされた場合(商標が使用をされた結果商標登録出願人又はその構成員の業務に係る商品・役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものでなかった場合に限る。)であって、商標権の設定の登録の日から5年を経過し、かつ、その登録商標が商標権者又はその構成員の業務に係る商品・役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているときは、その商標登録についての第46条第1項の審判は、請求することができない。


登録商標不使用取消審判
不使用取消審判取消訴訟における商標使用の事実の立証
 最判平成3・4・23、『商標・意匠・不正競争判例百選』44事件、シェトア事件
 商標登録の不使用取消審決の取消訴訟における当該登録商標の使用の事実の立証は、事実審の口頭弁論終結時に至るまで許される。
(商標登録の取消しの審判)
商標法第50条  継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが各指定商品又は指定役務についての登録商標(書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標、外観において同視される図形からなる商標その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標を含む。以下この条において同じ。)の使用をしていないときは、何人も、その指定商品又は指定役務に係る商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。
2  前項の審判の請求があった場合においては、その審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用をしていることを被請求人が証明しない限り、商標権者は、その指定商品又は指定役務に係る商標登録の取消しを免れない。ただし、その指定商品又は指定役務についてその登録商標の使用をしていないことについて正当な理由があることを被請求人が明らかにしたときは、この限りでない。
3  第1項の審判の請求前3月からその審判の請求の登録の日までの間に、日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務についての登録商標の使用をした場合であって、その登録商標の使用がその審判の請求がされることを知った後であることを請求人が証明したときは、その登録商標の使用は第1項に規定する登録商標の使用に該当しないものとする。ただし、その登録商標の使用をしたことについて正当な理由があることを被請求人が明らかにしたときは、この限りでない。


不使用取消審判における「商標の使用」の事実
最高裁昭和43・2・9、『商標・意匠・不正競争判例百選』85頁、青星事件
一 商標の使用があるとするためには、当該商標が、必ずしも指定商品に付されて使用されていることは必要ではないが、その商品との具体的関係において使用されていなければならない。
具体的には、取締役会・臨時株主総会の通知書の便箋に商標が使用されていても、指定商品であるソースには使用されていなかったとされている。
二、青星の文字を極端に変更、図案化した「(商標は判決文末尾添付)」なる登録商標がその特殊形態または少なくとも取引上これと同視されるべき形態において使用されなかった以上、たとえ「青星」、「アオボシ」、「BLUESTAR」青い星の図形等の標章が右登録商標の指定商品であるソース等に使用されており、また、これらの標章が右登録商標と類似であるとしても、そのことによって、右登録商標そのものの使用があったということはできない。
(注)判決要旨一との関係では、現行商標法では、商標法2条3項8号に該当するかが問題となる。
(定義等)
第2条3項  この法律で標章について「使用」とは、次に掲げる行為をいう。
一  商品・商品の包装に標章を付する行為
二  商品・商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡・引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為
三  役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物(譲渡し、又は貸し渡す物を含む。)に標章を付する行為
四  役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付したものを用いて役務を提供する行為
五  役務の提供の用に供する物(役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物を含む。)に標章を付したものを役務の提供のために展示する行為
六  役務の提供に当たりその提供を受ける者の当該役務の提供に係る物に標章を付する行為
七  電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。)により行う映像面を介した役務の提供に当たりその映像面に標章を表示して役務を提供する行為
八  商品・役務に関する広告、価格表・取引書類に標章を付して展示し、頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為
4  前項において、商品その他の物に標章を付することには、商品・商品の包装、役務の提供の用に供する物又は商品・役務に関する広告を標章の形状とすることが含まれるものとする。

 

商標権者の不正使用による取消審判
商標権者の不正使用による取消審判請求と信義則
 最高裁昭和61・4・22、『商標・意匠・不正競争判例百選』App8事件、ユーハイム事件
 商標権者甲のした自己の登録商標に類似する商標の使用が乙の業務に係る商品と混同を生ずるものであっても、右使用商標が甲乙間の裁判上の和解において乙が甲にその使用を認めたものであり、しかも、右和解において、乙が甲の登録商標に対する登録異議の申立を取り下げてそれが登録されることを認め、その対価として甲から和解金を受領し、その結果甲が右使用商標を継続して使用したという事実がある場合は、乙が商標法51条1項に基づき右登録商標の登録を取り消すことについて審判を請求することは、信義則に反するものとして許されない。
 商標法51条1項,民法1条2項
(注)商標のライセンス契約の実務では「不抗争条項」として、ライセンシー(使用権者)はライセンサー(商標権者)の権利の有効性を審判・訴訟などで争わない旨を定めるのが通例である。


最高裁昭和56・2・24、『商標・意匠・不正競争判例百選』93頁、中央救急心事件
 商標法51条1項にいう「故意」があるとするには、商標権者において指定商品について登録商標に類似する商標を使用し又は指定商品に類似する商品について登録商標若しくはこれに類似する商標を使用するにあたり、右使用の結果、商品の品質の誤認又は他人の業務に係る商品と混同を生じさせることを認識していたことをもって足りる。
(参照条文)
商標法第51条  商標権者が故意に指定商品・指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品・指定役務に類似する商品・役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用であって商品の品質・役務の質の誤認又は他人の業務に係る商品・役務と混同を生ずるものをしたときは、何人も、その商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。
2  商標権者であった者は、前項の規定により商標登録を取り消すべき旨の審決が確定した日から5年を経過した後でなければ、その商標登録に係る指定商品・指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について、その登録商標又はこれに類似する商標についての商標登録を受けることができない。
(除斥期間)
第52条  前条第1項の審判は、商標権者の同項に規定する商標の使用の事実がなくなった日から5年を経過した後は、請求することができない。


不意打ちにならない審判手続の瑕疵
 最判平成14・9・17
商標法56条1項において準用する特許法153条2項所定の手続を欠くという瑕疵がある場合であっても,当事者の申し立てない理由について審理することが当事者にとって不意打ちにならないと認められる事情のあるときは,上記瑕疵は,審決を取り消すべき違法には当たらない。
判決文によれば以下のとおりである。
商標法に基づく審判については,商標法56条において特許法152条,153条が準用されており,職権による審理の原則が採られている。
特許法153条1項によれば,審判においては当事者の申し立てない理由についても審理することができる。
これは,第三者に対する差止め,損害賠償等の請求の根拠となる特許権や商標権の性質上,特許又は商標登録が有効に存続するかどうかは,当該審判の当事者だけでなく,広く一般公衆の利害に関係するものであって,本来無効とされ又は取り消されるべき特許又は商標登録が当事者による主張が不十分なものであるために維持されるとしたのでは第三者の利益を害することになることから,当事者が申し立てない理由についても職権により審理することができるとしたものである。
したがって,審判の請求人が申し立てなかった理由についての審理がされたとしても,そのことによって審決が直ちに違法になるものではない。
 他方,特許法153条2項は,審判において当事者が申し立てない理由について審理したときは,審判長は,その審理の結果を当事者に通知し,相当の期間を指定して,意見を申し立てる機会を与えなければならないと規定している。
これは,当事者の知らない間に不利な資料が集められて,何ら弁明の機会を与えられないうちに心証が形成されるという不利益から当事者を救済するための手続を定めたものである。
殊に,特許権者又は商標権者にとっては,特許又は商標登録が無効とされ又は取り消されたときにはその権利を失うという重大な不利益を受けることになるから,当事者の申し立てない理由について審理されたときには,これに対して反論する機会が保障されなければならない。
しかし,当事者の申し立てない理由を基礎付ける事実関係が当事者の申し立てた理由に関するものと主要な部分において共通し,しかも,職権により審理された理由が当事者の関与した審判の手続に現れていて,これに対する反論の機会が実質的に与えられていたと評価し得るときなど,職権による審理がされても当事者にとって不意打ちにならないと認められる事情のあるときは,意見申立ての機会を与えなくても当事者に実質的な不利益は生じないということができる。
したがって,審判において特許法153条2項所定の手続を欠くという瑕疵がある場合であっても,当事者の申し立てない理由について審理することが当事者にとって不意打ちにならないと認められる事情のあるときは,上記瑕疵は審決を取り消すべき違法には当たらないと解するのが相当である。
(参照条文)
 商標法56条1項で準用されている特許法153条2項
特許法第153条  審判においては、当事者又は参加人が申し立てない理由についても、審理することができる。
2  審判長は、前項の規定により当事者又は参加人が申し立てない理由について審理したときは、その審理の結果を当事者及び参加人に通知し、相当の期間を指定して、意見を申し立てる機会を与えなければならない。
3  審判においては、請求人が申し立てない請求の趣旨については、審理することができない。


商標権の共有と商標登録無効審決取消訴訟の提起の可否
共有者の一人の提起する商標登録無効審決の取消訴訟提起の可否
 最判平成14・2・22、『商標・意匠・不正競争判例百選』App7事件、ETNIES事件
商標権の共有者の1人は,当該商標登録を無効にすべき旨の審決がされたときは,単独で無効審決の取消訴訟を提起することができる。
判決文によれば、その理由は,次のとおりである。
 (1) 商標登録出願により生じた権利が共有に係る場合において,同権利について審判を請求するときは,共有者の全員が共同してしなければならないとされているが(商標法56条1項の準用する特許法132条3項),これは,共有者が有することとなる1個の商標権を取得するには共有者全員の意思の合致を要求したものであるからにほかならない。これに対し,いったん商標権の設定登録がされた後は,商標権の共有者は,持分の譲渡や専用使用権の設定等の処分については他の共有者の同意を必要とするものの,他の共有者の同意を得ないで登録商標を使用することができる(商標法35条の準用する特許法73条)。
 ところで,いったん登録された商標権について商標登録の無効審決がされた場合に,これに対する取消訴訟を提起することなく出訴期間を経過したときは,商標権が初めから存在しなかったこととなり,登録商標を排他的に使用する権利が遡及的に消滅する(商標法46条の2)。したがって,上記取消訴訟の提起は,商標権の消滅を防ぐ「保存行為」(民法252条)に当たるから,商標権の共有者が各自単独でもすることができるものと解される。そして,このように解したとしても,訴え提起をしなかった共有者の権利を害することもない。
 (2) 共有に係る商標権については,これに対する共有者それぞれの利益や関心の状況が異なり得ることから訴え提起について他の共有者の協力が得られない場合や,無効審決後に持分を放棄したにもかかわらず出訴期間内に登録が完了しない場合,さらに,商標権の消滅後においても無効審決がされることがあり(商標法46条2項参照),商標権の設定登録から長期間経過して他の共有者が所在不明になる場合などが想定される。このような場合に共有に係る商標登録の無効審決に対する取消訴訟が固有必要的共同訴訟であると解して,共有者の一部の者のみが提起した訴えは不適法であるとすると,出訴期間の満了と同時に無効審決が確定し,商標権が初めから存在しなかったこととなり,不当な結果となり兼ねない。
 (3) 商標権の共有者が各自単独で無効審決の取消訴訟を提起することができると解しても,その訴訟で請求認容の判決が確定した場合には,その取消しの効力は他の共有者にも及び(行政事件訴訟法32条1項),再度,特許庁で共有者全員との関係で審判手続が行われることになる(商標法63条2項の準用する特許法181条2項)。
他方,その訴訟で請求棄却の判決が確定した場合には,他の共有者の出訴期間の満了により,無効審決が確定し,権利は初めから存在しなかったものとみなされることになる(商標法46条の2)。
いずれの場合にも,合一確定の要請に反する事態は生じない。さらに,各共有者が共同して又は各別に取消訴訟を提起した場合には,これらの訴訟は,類似必要的共同訴訟に当たると解すべきであるから,併合の上審理判断されることになり,合一確定の要請は充たされる。
(参照条文)
民法252条,民訴法40条,商標法35条,商標法46条,商標法56条1項,商標法63条,特許法73条,特許法132条
 なお、最判平成14・2・28も同旨である。


 最判平成23・12・20、アリカ事件
 商標法施行規則(平成13年改正前)別表第35類3に定める「商品の販売に関する情報の提供」とは,商業等に従事する企業に対して,その管理,運営等を援助するための情報を提供する役務をいう。


商標登録拒絶事由の商標法4条1項11号
 最判平成20・9・8、つつみのおひなっこや事件
 「つつみのおひなっこや」の文字を横書きして成り,土人形等を指定商品とする登録商標と,いずれも土人形を指定商品とする「つゝみ」又は「堤」の文字から成る引用商標について,
(1)上記登録商標は,「つつみ」の文字部分だけが独立して見る者の注意をひくように構成されているとはいえないこと,
(2)「つつみ」の文字部分が,土人形等の取引者や需要者に対し,引用商標の商標権者がその出所である旨を示す識別標識として強く支配的な印象を与えるものであったとはいえないこと,
(3)「おひなっこや」の文字部分は,全国の土人形等の取引者,需要者には新たに造られた言葉として理解されるのが通常であり,自他商品を識別する機能がないとはいえないこと
など判示の事情の下においては,「つつみ」の文字部分だけを引用商標と比較し,その類否を判断することは許されず,商標の構成部分全体を対比すると,上記登録商標と引用商標は類似しない。
商標法4条1項11号  当該商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標又はこれに類似する商標であって、その商標登録に係る指定商品・指定役務又はこれらに類似する商品・役務について使用をするもの


商標登録拒絶事由の商標法4条1項15号
 最判平成12・7・11、レールデュタン事件、『商標・意匠・不正競争判例百選』13事件
 1 商標法4条1項15号にいう「他人の業務に係る商品・役務と混同を生ずるおそれがある商標」は、当該商標をその指定商品等に使用したときに、当該商品等が他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれ、すなわち、いわゆる「広義の混同」を生ずるおそれがある商標をも包含する。
判決は、その理由として、「同号の規定は、周知表示・著名表示へのただ乗り(フリーライド)及び当該表示の希釈化(ダイリューション)を防止し、商標の自他識別機能を保護することによって、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り、需要者の利益を保護することを目的とするものであること」を挙げている。
2 商標法4条1項15号にいう「混同を生ずるおそれ」の有無は、
① 当該商標と他人の表示との類似性の程度、
② 他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、
③ 当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の関連性の程度、
④ 取引者及び需用者の共通性その他取引の実状
などに照らし、右指等の取引者及び需用者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断すべきである。
3 化粧用具、身飾品、頭飾品、かばん類、袋物等を指定商品とし、「レールデュタン」の片仮名文字を横書きした登録商標は、他の業者の香水の1つを表示するものとして使用されている引用商標等と称呼において同一であり、引用商標等が香水を取り扱う業者や高級な香水に関心を持つ需用者に著名であり独創的な商標であって、右指定商品と香水とが主として女性の装飾という用途において極めて密接な関連性を有しており、両商品の需要者の相当部分が共通するなど判示の事情の下においては、商標法4条1項15号に規定する商標に該当する。

 最判平成13・7・6、PALM SPRING POLO CLUB事件、『商標・意匠・不正競争判例百選』App17事件
洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類等を指定商品とし,「PALM SPRINGS POLO CLUB」の欧文字と「パームスプリングスポロクラブ」の片仮名文字とを上下2段に横書きして成る商標は,他の業者の被服等の商品を表示するものとして使用されている引用商標「POLO」,「ポロ」をその構成の一部に含むものであって,引用商標の独創性の程度は低いものの周知著名性の程度が高く,その指定商品と引用商標の使用されている商品とが重複し,両者の取引者及び需要者も共通しているなど判示の事情の下においては,商標法4条1項15号に規定する商標に該当する。
(参照条文)
商標法4条1項15号  他人の業務に係る商品・役務と混同を生ずるおそれがある商標(第10号から前号までに掲げるものを除く。)


商標法4条1項の登録拒絶事由と除斥期間(商標法47条)
 最判平成17・7・11、RUDLPH VALENTINO事件、『商標・意匠・不正競争判例百選』40事件
商標法(平成3年改正前)4条1項15号違反を理由とする商標登録の無効の審判請求が商標法(平成8年改正前)47条所定の除斥期間を遵守したものであるというためには,除斥期間内に提出された審判請求書に,請求の理由として,当該商標登録が上記15号の規定に違反するものである旨の主張が記載されていることをもって足りる。
判決文によれば、上記のとおりに解された理由は以下のとおりである。
 商標法47条は,商標法4条1項15号違反を理由とする商標登録の無効の審判は商標権の設定の登録の日から5年の除斥期間内に請求しなければならない旨を規定する。その趣旨は,15号の規定に違反する商標登録は無効とされるべきものであるが,商標登録の無効の審判が請求されることなく除斥期間が経過したときは,商標登録がされたことにより生じた既存の継続的な状態を保護するために,商標登録の有効性を争い得ないものとしたことにあると解される。
このような規定の趣旨からすると,そのような商標は,本来は商標登録を受けられなかったものであるから,その有効性を早期に確定させて商標権者を保護すべき強い要請があるわけではないのであって,除斥期間内に商標登録の無効の審判が請求され,審判請求書に当該商標登録が15号の規定に違反する旨の記載がありさえすれば,既存の継続的な状態は覆されたとみることができる。
商標法4条1項15号  他人の業務に係る商品・役務と混同を生ずるおそれがある商標(第10号から前号までに掲げるものを除く。)
商標法第47条1項  商標登録が第3条、第4条第1項第8号、第11号から第14号まで、第8条第1項、第2項、第5項の規定に違反してされたとき、商標登録が第4条第1項第10号若しくは第17号の規定に違反してされたとき(不正競争の目的で商標登録を受けた場合を除く。)、商標登録が第4条第1項第15号の規定に違反してされたとき(不正の目的で商標登録を受けた場合を除く。)、商標登録が第46条第1項第3号に該当するときは、その商標登録についての同項の審判は、商標権の設定の登録の日から5年を経過した後は、請求することができない。
2  商標登録が第7条の2第1項の規定に違反してされた場合(商標が使用をされた結果商標登録出願人又はその構成員の業務に係る商品・役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものでなかった場合に限る。)であって、商標権の設定の登録の日から5年を経過し、かつ、その登録商標が商標権者又はその構成員の業務に係る商品・役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているときは、その商標登録についての第46条第1項の審判は、請求することができない。


完成品に組み込まれた部品に付された商標
 最判平成12・2・24、パチスロ機(シャープCPU)事件、『商標・意匠・不正競争判例百選』25事件
商標の付された電子部品がいわゆるパチスロ機の構成部分である主基板に装着された場合において、右商標はパチスロ機の外観上は視認できないが、パチスロ機の流通過程において、元の外観及び形態を保っている右電子部品とともに、中間の販売業者やパチンコ店関係者に視認される可能性があったなど判示の事実関係の下では、右商標は、右電子部品が主基板に装着されてパチスロ機に取り付けられた後であっても、なお電子部品についての商品識別機能を保持しており、右商標の付された電子部品をパチスロ機の主基板に取り付けて販売する目的で所持し、又は右パチスロ機を譲渡する各行為について、商標権侵害罪(注、現行法は商標法78条の2)が成立する。
(参照条文)
商標法(平成3年改正前)37条2号,商標法(平成5年改正前)78条
(侵害とみなす行為)
商標法第37条  次に掲げる行為は、当該商標権又は専用使用権を侵害するものとみなす。
一  指定商品・指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品・指定役務に類似する商品・役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用
二  指定商品又は指定商品・指定役務に類似する商品であって、その商品又はその商品の包装に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを譲渡、引渡し又は輸出のために所持する行為
三  指定役務又は指定役務・指定商品に類似する役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを、これを用いて当該役務を提供するために所持し、又は輸入する行為
四  指定役務又は指定役務・指定商品に類似する役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを、これを用いて当該役務を提供させるために譲渡し、引き渡し、又は譲渡若しくは引渡しのために所持し、若しくは輸入する行為
五  指定商品・指定役務又はこれらに類似する商品・役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をするために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を所持する行為
六  指定商品・指定役務又はこれらに類似する商品・役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をさせるために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を譲渡し、引き渡し、又は譲渡・引渡しのために所持する行為
七  指定商品・指定役務又はこれらに類似する商品・役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をし、又は使用をさせるために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を製造し、又は輸入する行為
八  登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を製造するためにのみ用いる物を業として製造し、譲渡し、引き渡し、又は輸入する行為
(侵害の罪)
商標法第78条  商標権又は専用使用権を侵害した者(第37条又は第67条の規定により商標権又は専用使用権を侵害する行為とみなされる行為を行った者を除く。)は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第78条の2  第37条又は第67条の規定により商標権又は専用使用権を侵害する行為とみなされる行為を行った者は、5年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
(両罰規定)
第82条  法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号で定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
一  第78条、第78条の2又は第81第1項 三億円以下の罰金刑
二  第79条又は第80条 一億円以下の罰金刑
2  前項の場合において、当該行為者に対してした第81条第2項の告訴は、その法人又は人に対しても効力を生じ、その法人又は人に対してした告訴は、当該行為者に対しても効力を生ずるものとする。
3  第1項の規定により第78条、第78条の2又は第81条第1項の違反行為につき法人又は人に罰金刑を科する場合における時効の期間は、これらの規定の罪についての時効の期間による。