響きあう木の空間
須永 豪
スナガ ゴウ
(
長野県 / 建築家
)
須永豪・サバイバルデザイン
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【『好き』ってなに?】悩める若者へのレクチャー 6
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建築的
2013-07-02 21:01
大学生へ向けてのレクチャーで話したことの続きです。
【『好き』ってなに?】
あなたはさ、『やりたいこと』『好き』なことって
わかってる?
うん、そうなんだよね、そこがまずわからんよね。
建築学科に居るってことは、
ま、建築がキライじゃないんだろうけど、
一生を捧げるほど好きかって言うと、
…そだね、わからんよね。
私はね、見てもらったように木の建築を作ってる。
あ、基礎のコンクリートを除けば。
だいたい、素材の85%が木、10%が金属、5%ガラスとか樹脂かな。
コレくらいのバランスが、私にとっては最高なの。
今は木造って言っても、
骨だけが木で、あとがジャンク素材のハリボテでしょ。
あれが気持ち悪くてしょうがないんです。
でも「あ、オレ木が好きなんだ」って
気がついたのは、最近なんだよね。
それまでずーっと、
「須永さんは木が好きなんですね」ってまわりから言われるたびに、
「いえ好きなわけじゃなくて、
木は、釘が打てて、加工がしやすくて、硬すぎず柔らかすぎす、
肌で触れて冷たくなくて、断熱性能があって、
しかも植えておけばまたいくらでも生えてくる、
『超合理的』な素材だから使ってるんです」って答えてた。
でもね、あるとき気がついたんだよね。
「それを合理的って判断しているオレの志向、それが嗜好だったんだ」
と。
好きじゃない、って言張ってた一番の理由は、
『木が好きな建築屋』っていうジャンルに
括られるのが嫌いだったの。すっごく。
あ、渋谷先生わかってくれる?
ありがとう。
そうね、
木が好きなひとって原理主義な感じがあってね、
仕口だの、伝統だの、まず正道があって、あれが一番で
そこから外れるものは邪道で、という小ウルサイ世界。
自分があの湿気った煎餅みたいなところへ括られて、
一緒に濡れ煎餅になっていくのが絶対に嫌だったの。
それで「木が好きなわけじゃない」って言張ってただけだったんですね。
いま思えば。
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若いころ私はアコーステックギターの製作家を目指していた、
って言ったけど、
あの生楽器は、木のボディー・部屋の中で
音が反射・響き合いながらグルッと廻って穴から出てきたのが『音色』なんです。
部屋の形が変わったら、どうなると思う?
そう、響き合い方もきっと違うものになるよね。
あの形を成り立たせてる構造のためにある骨・ブレイシング、
木の種類、厚み、色んな要素が影響し合いながら、音色になってる。
一本一本に個性的な響き合いができている。
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これ、建築と全く同じなんだよね、
私にとっては。
いまこの部屋は四角い普通の部屋だけど、
もしその壁が1枚ナナメになってたら、
空間の気配の反射がいきなり変わるでしょ。
そういう空間の響き合いには、
絶妙な「ココしかない」っていう配置・向き・組み合わせがあるんです。
それはもう『絶対的』な位置がね。
私にはそれがハッキリと見えるの。
図面という紙の上でも。
だから私の設計には、ナナメの壁がよくでてくるし、
小さな一軒の箱の中にある、空間がすごく躍動的で楽しいと言われるし、
それでいて落着くとも言われる。
響き合いの空間を作るのには、やっぱり木が最上なんです。
コンクリートや鉄じゃ硬すぎるし、
まして石膏ボードのハリボテじゃどうにもならない。
石膏ボードの壁を叩いてごらん、ボコボコ鈍い音でしょ。
あれじゃ気配も『反射』しないんだよね。
本物の木の扉をノックしたら、
コン!とかゴン!とか、ちゃんと響くでしょ、
やっぱアレでなくちゃ。
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楽器の場合、弾き手には、
自分の求める響きが無意識の領域にあって、
それを満たしてくれる一本のギターをずっと探している。
それとようやく巡り会ったとき、
人と道具とが一体になって、
最高の響きが生まれる。
私が今やってることも同じで、
それを満たしてくれる一本のギターをずっと探している。
それとようやく巡り会ったとき、
人と道具とが一体になって、
最高の響きが生まれる。
私が今やってることも同じで、
その人、その家族が最も活き活きできるための響き合いを
無意識の領域から見つけて、形にしてこの世に出現させる。
そういう、人生の相棒となる道具をつくりたいんだよね。
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はじめに言った木、鉄、樹脂、ガラスのパーセンテージって、
アコースティクギターとほとんど同じなのね。
木はボディ、ネック、ヘッドの素材、
鉄は糸巻きペグ、ネックに埋込んだ鉄芯、弦、フレット、
樹脂はエンドピン、
ガラスは貝細工のインレイ。
アコースティクギターとほとんど同じなのね。
木はボディ、ネック、ヘッドの素材、
鉄は糸巻きペグ、ネックに埋込んだ鉄芯、弦、フレット、
樹脂はエンドピン、
ガラスは貝細工のインレイ。
私が十代の頃、はじめに描いていたギターの製作家、
それにはなれなかったけど、やっぱり点は繋がってたんですねぇ、
今私は、木で響き合いをつくってる。
そして、繋がると明らかに見えるのが、
「やっぱり木が好き」だったってことでした。
だから今は、木が好きだって素直に言えます。
だから今は、木が好きだって素直に言えます。
ついでに言うと、
私の設計した建築は、すっごく音がいいの。
どんな安いスピーカーで鳴らしても、
音が天からキラキラ降ってくるようだし、
どんな小さい音で鳴らしても、
建物全体へ音がめぐっていくし。
硬すぎず、甘すぎず、心地よい。
音響設計なんてぜーんぜん学んだことないし、
考えたこともないけど、
建築がちゃーんと鳴らしてくれるんだよね。
気配の反射がちゃんと響き合うようにしてあげると、
音もちゃんといい具合に響き合うんだよね。
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…あ、そうだった
「"好き"ってなに?」って話しをしようと思ってたのに、
あなたが「好き」を見つけるヒントになる話しをしようと思ってたのに、
ゴメン、私の『好き』を延々喋ってしまった。
ここまで来た話のついでに、もうひとつ言うと、
私は「建築が好きなわけじゃない、たまたま性にあってたから続けてるだけで、
もっとピンと来るものがあれば、いつでも未練なくやめられる」
ってずっと言ってきましたけど、
もっとピンと来るものがあれば、いつでも未練なくやめられる」
ってずっと言ってきましたけど、
まぁ聞いてもらってわかる通り、
…建築作るの、好きですね。
人が作ったのを見るのとか、評論するのはそれほど好きじゃないけど、
木と空間、響き合いをつくること、つまり
…建築作るの、好きですね。
人が作ったのを見るのとか、評論するのはそれほど好きじゃないけど、
木と空間、響き合いをつくること、つまり
『設計するのは、最高に好き』なんだね。
いまココに白状します。
(話しはもう一回、「"好き"ってなに?」へ。
こんどこそ『好き』を解き明かします…)
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