荒川 雄一
アラカワ ユウイチ今後のマーケット動向と対策の考え方!ーその1
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今回の震災を受けて、「自分に何ができるか」は、人それぞれの立場や環境によって、違ってくると思います。
そんな中、わたし自身ができることのひとつは、やはり自分の専門としている分野で、
社会、そして皆さんに情報発信していくことではないかと、改めて考えました。
震災の影響で、日本を取り巻くマーケットは、大きく揺れ動いています。
今回は、今後の景気や為替の状況、そして、今考えるべきポイントについて、
お話させて頂きたいと思います。
震災直後から、マーケットは大きく変動しました。
日経平均株価は、2日連続で大きく下げ、一時は8000円台をつけ、
その後徐々にですが、値を戻している状況です。
震災もさることながら、原発のリスクも大きく取りざたされ、
日本経済へのダメージの大きさが、株価へも影響していると言えます。
事実、日本の信用リスクが低下したことによって、
CDS(クレジットデフォルトスワップ)の保証料も一気に上昇しました。
(特に上昇したのは言うまでもなく東電でした・・・)
一方、大幅に高くなったのが、「円」です。
何と、1995年4月に付けた最高値「79円75銭」をあっさり抜き去り、
一時海外では「76円25銭」まで値を飛ばしました。
本来であれば、日本の経済へのダメージが大きければ、
株価と同じく、「円安」に振れると言うのが、
昔の“定説”でしたが(少なくとも、私が学校で習ってきた経済学では)、
逆に「円」に買いが入っています。
この要因はいくつか言われていますが、マーケットの動きとしては、
今まで外貨にシフトしてきた企業の資金や個人の投資マネーが、
国内の資金需要を受けて、日本の国内に還流するというものです。
実際に、現時点ではそのような顕著な動きがあるわけではありませんが、
マーケットは“先読み”をしますので、その予測に、
「投機マネー」が一斉に動いたというのが、実態ではないかと思います。
一説には、復興に向けての日本の取組みを見て、
「将来必ず再起する確信を持った外国人の買いも入っているのでは・・・」
という論調もありました。
その“想い”は強く受け取めたいところではありますが、
現実の「お金の動き」はもっと冷淡なものだと思います。
それは、このあと津波のように押し寄せてくる「円売り」が現実になった時に、
はっきりしてくるかもしれません。
いずれにしても、実体経済をはるかに上回る「投機マネー」が、
この日本の災害に対して、目ざとく反応しているのです。
特に、短期的にバイアスをかけて、投資(投機)をしている人にとっては、
この株価や為替の大幅な動き(ボラティリティ)は、
ピンチでもあり、チャンスともなるからです。
しかしながら、中長期で「海外分散投資」を提唱している私にとっては、
その取るべきスタンスは、全く違うものです。
正直、このところの何度となくおとずれる“想定外”の出来事に対処するために、
私は「海外分散投資」を提唱しているからです。
私自身の「資産運用」に関していえば、今回の出来事があったからといって、
何か慌てふためいて行ったようなことは、何一つありません。
敢えていえば、仕事において、「日経平均」が大幅に下がったことで
売りのアドバイスが出たファンドがあったので、それについて早急に
スイッチのご提案をしたということでしょうか。
しかし、分散比率は、わずかであるため、
「ポートフォリオ」のパフォーマンスに大きな影響を与えるものではありません。
私がここで申し上げたいのは、震災を起因とする「市場の目先の動き」と、
これから訪れる「日本の将来の問題」とは明確に分けて考えるべきであるということです。
今回の大震災、そしていまだ解決しない原発問題は、
日本の経済や景気にとっても、かなりの大きな打撃であることは間違いありません。
広域に渡る災害だったため、復興するまでには、相当数の時間もかかるでしょう。
復興段階に入れば、政府の資金や民間の資金が回りだすため、
“景気循環”は良くなると予測するエコノミストもいますが、問題は、その“原資”です。
ただでさえ、財政問題が取りざたされている日本の財政事情を考えると、
この復興費用を捻出することは、そうたやすいことではありません。
間違いなく、増税が早い時期に(前倒し)でやってくることでしょう。
「復興」という大義名分が、政府を強く動かすと思われます。
そして、増税により、世界からみた日本の“評価”は上がります。
それによって、株価は若干戻していく可能性はありますが、
為替はそう単純ではないと考えています。
為替については、特に関心が高い方が多いので、ここでは、
想定できるシナリオを考えてみたいと思います。
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