藤森 哲也
フジモリ テツヤグループ
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不動産売買 トラブル相談例④【他人名義の土地に無償で建築できるか②】
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前回は、他人の土地を借り、そこに新築することは可能ですし、無償・有償どちらの
借り方でも建築に問題はないこと。
但し、無償で借りる場合は「使用貸借」、有償で借りる場合は「賃貸借」として扱われ、
土地を借りる際に関係してくる法律の違いに伴って、借主の権利も違うものになることに
注意が必要と話しました。
例えば使用貸借(無償)の場合、
・借主(相談者)が亡くなってしまうと効力を失い、遺族に相続されず土地を借り続ける権利
がなくなるなど、土地を借る権利(保護される部分)が弱い立場となることが多い。
・貸借の終了期間に取り決めがない場合、使用貸借(無償)は原則として、土地所有者や
土地の相続人から立ち退きを求められた場合、即時返却する必要がある弱い立場になる。
・使用貸借契約(無償)は貸主と借主間の信頼関係に基礎をおく契約なので、離婚や
看護の放棄など、当事者間の信頼関係が破綻していると、短い期間でも解約、建物収去、
土地明渡しを認められる可能性がある。
といった、有償の賃貸借契約と比較した際に弱い立場となる話です。
では、有償か無償化の線引きとはどこになるのかについてですが、
その線引きは、単に金銭を支払っているかどうかではありません。
権利金の授受の慣習がある地域であれば権利金、そして地代の支払いです。
また税務上、固定資産税相当額以下の金銭を負担していたとしても、
それは実費負担であり使用貸借(無償)扱いした判例があります。
つまり、固定資産税を負担していたからと言って、使用貸借(無償)より
強い権利(有償:賃借権)の主張はできません。
尚、権利金授受の慣習がある地域で、月々の地代支払いのみ(権利金の授受がなかった)
の場合、扱いは賃貸借(有償)となりますが、支払っていない権利金分は、地主から借り主に
贈与しものとして贈与税(認定課税)が課される場合があります。
有償・無償のどちらが良いのかについてですが、状況により良く検討する必要があります。
個人間、特に身内や親子間では、法人税の節税等の要素が少ないので、
権利金の授受や認定課税(贈与税)の心配がない使用貸借(無償)で土地を
使用することが多いのかと思いますが・・・
今回のように相談者と土地所有者(義母の内縁の夫)のような他人に近い関係から、
・将来的に義母と土地所有者が別れてしまう可能性がある
・そのことが原因で相談者との関係が壊れる可能性がある
・上記の状況から、明け渡しを求められ、裁判等で土地所有者に有利な判決が出ては
住まいに困る
・立ち退きしてもローン残高や支払いが残り、新たな住まいを確保する為の支払いと
当該ローンとの二重支払いは生活が困難になる
・万一、相談者(賃借人)が亡くなり使用貸借が終了すると、遺族が住まいに困る可能性が大
などの、「人間関係の破綻の可能性」「破綻した際に新たな住まいの確保が金銭的に困難」
といったリスクが色濃く予見でき、その解消や対策がないようであれば、無償・有償かの
判断には十分な注意と検討が必要ということです。
ちなみに、契約書の取り交わしについては、ローン審査の際に金融機関からも求められると
思いますし、無償・有償に限らず、契約内容を明確に証明できるよう取り交わすべきです。
無償(使用貸借)で契約を交わすのであれば、有償(賃借権)に比べ権利の弱さは有りますが、
経済的には助かったり、その分(土地の賃貸料や土地購入時のローンなど)の貯蓄等も
できる状況になると思います。
今現在の状況・人間関係だけで判断せず、「将来的な関係は本当に大丈夫か」
「立ち退きの際に住まいの確保やその為の資金計画等は問題ないか」それらを考慮して、
有償・無償どちらが有益なのか判断されると良いかと思います。
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