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東郷 弘純
東郷法律事務所 代表
東京都
弁護士

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閲覧数順 2017年02月23日更新

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『最高裁平成8年11月12日第三小法廷判決』を題材とした事例を取り上げます。

<事案の概要>

Xらは,Y社からリゾートマンションの1区分を5,000万円で購入すると共に,Y社が同所で所有・運営するスポーツクラブの会員権1口を購入し入会預託金100万円を支払った。

マンションの売買契約書や新聞広告には,「倶楽部会員権付」との記載があった。また,倶楽部会則には会員権の分離譲渡はできない規定があった。

広告や案内書には,クラブ施設として屋内プール完備とあった。しかし,Xらの再三の要求にもかかわらずYは屋内プールを着工しなかった。

そこで,Xらはマンション売買契約とスポーツ会員権契約を解除し,売買代金,預託金の返還等を求めた。

 

<契約書,その他具体的事実など>

ア 本件売買契約書には,特約事項として,買主は,本件不動産購入と同時に本件クラブの会員となり,買主から本件不動産を譲り受けた者についても,本件クラブの会則を遵守させることを確約する旨の記載があった。

イ マンション分譲の新聞広告には,本件マンションの区分所有権の購入者が本件クラブ会員として利用することができる旨の記載があった。

ウ 本件クラブの会則には,本件マンション区分所有権は,本件クラブの会員権付であり,これと分離して処分することはできないこと,区分所有権を譲り受けた者は,売主の承認を得て新会員として登録を受けることができる旨,記載があった。

エ 新聞広告,案内書等にプール完備を明記していた。

<設問>

Xらは,①スポーツ会員権契約を解除するだけでなく,②マンションの売買契約をも解除して,預託金及び売買代金の返還等を求めることはできますか?

<争点>

1 マンションの売買契約と本件会員権契約は不可分一体化したものといえますか?

2 Y社が屋内プールを建設して利用させるという債務が,会員権契約の,『必須の要素たる債務』といえますか?

3 両者が2個の独立した契約であっても,一方(会員権契約)の契約上の債務不履行を理由として他方の契約(マンション売買契約)を解除できますか?

<争点1について>

マンションの売買契約と本件会員権契約は不可分一体化したものといえますか?

◎最高裁→本件売買契約と本件会員権契約は2個の独立した契約とみている。

◎控訴審→本件不動産と本件会員権とは別個独立の財産権であり,これが1個の客体として本件売買契約の目的となっていたものとみることはできない

<争点2について>

Y社が屋内プールを建設して利用させるという債務が,会員権契約の,『必須の要素たる債務』といえますか?

 ◎最高裁

スポーツクラブというもの特質を考えると,屋内プールを建設して会員の使用に供するというYの債務は,(会員権契約においては)要素たる債務であると判断した。したがって,本件会員権契約自体は解除できる。

<争点3について>

両者が2個の独立した契約であっても,一方(会員権契約)の契約上の債務不履行を理由として他方の契約(マンション売買契約)を解除できますか?

 ◎控訴審

会員権購入契約上の義務が約定どおり履行されることが不動産の売買契約を締結した主たる目的の達成に必須であり,かつ,そのことが不動産の売買契約に表示されていたときは,売買契約の要素たる債務が履行されないときに準じて,会員権購入契約上の義務の不履行を理由に不動産の売買契約を解除することができる」とし,本件では屋内プールの利用が本件不動産の売買の主要な動機となっていたことがうかがわれないではないが,そのことが売買契約において何ら表示されていなかった,としてXらの請求を棄却した。

 ◎最高裁

「本件マンションの区分所有権の得喪と本件クラブの会員たる地位の得喪は密接に関連づけられている」

「同一当事者間の債権債務関係がその形式は甲契約及び乙契約といった2個以上の契約から成る場合であっても,それらの目的とするところが相互に密接に関連づけられていて,社会通念上,甲契約又は乙契約のいずれかが履行されるだけでは契約を締結した目的が全体としては達成されないと認められる場合には,甲契約上の債務の不履行を理由に,その債権者が法定解除権の行使として甲契約と併せて乙契約をも解除することができる。」本件では,本件不動産は,屋内プールを含むスポーツ施設を利用することを主要な目的としたいわゆるリゾートマンションであり,前記の事実関係の下においては,Xらは,本件不動産をそのような目的をもつ物件として購入したものであることがうかがわれ,Yによる屋内プール完成の遅延という甲契約の要素ある債務の履行遅滞により,乙契約を締結した目的を達成することができなくなったものというべきであるから,乙契約においてその目的が表示されていたかどうかにかかわらず,右の履行遅滞を理由として民法541条により契約を解除することができるものと解するのが相当であると判断した。

<設問に対する回答>

Xによるマンションの売買契約をも解除を認めなかった。

最高裁

Xによるマンションの売買契約の解除を認めた。すなわち,スポーツ会員権契約を解除するだけでなく,マンションの売買契約も解除できる。

 

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