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早わかり中国特許
~中国特許の基礎と中国特許最新情報~
第12回は重複特許の禁止、発明特許と実用新型特許の重複出願、単一性及び公序良俗違反について説明する。(第3回)
河野特許事務所 2012年7月13日 執筆者:弁理士 河野 英仁
(月刊ザ・ローヤーズ 2012年4月号掲載)
コラム 中国への特許審査ハイウェイ(PPH)申請について
特許審査ハイウェイとは、出願人の外国での早期権利化を容易にすると共に、各国特許庁が日本国特許庁の先行技術調査及び審査結果を利用することで、審査の負担を軽減し質の向上を図る制度をいう。
日中間特許審査ハイウェイでは、日本国特許庁で特許可能と判断された発明を有する出願について、出願人の申請により、中国知識産権局において簡易な手続で早期審査を受けることができる。日中間の特許審査ハイウェイは2012年10月31日まで試験的に行われる。
1.日本国特許庁の審査結果を利用したPPHの要件
日本国特許庁の審査結果を利用して中国にてPPHの適用を受けるためには以下の条件を満たす必要がある。
(1)対応する日本出願が存在し、すでに特許可能と判断された一または複数の請求項を有すること。
請求項は、出願が特許査定となっていなくても、最新のオフィスアクションにおいて日本国特許庁の審査官が明確に当該請求項を特許可能であると特定した時に「特許可能と判断された」ことになる。オフィスアクションには特許査定の外、拒絶理由通知書、拒絶査定及び審決が含まれる。
例えば、拒絶理由通知において、
「<拒絶の理由を発見しない請求項>
請求項( )に係る発明については、現時点では、拒絶の理由を発見しない。」
が記載されている場合、当該請求項については特許可能と判断される。
(2) 中国出願の全請求項が、対応する日本出願の特許可能と判断された一または複数の請求項と十分に対応しているか、十分に対応するように補正されていること。
(i)十分に対応する場合
一般的には、日本で特許可能された請求項を翻訳し、日本の請求項と同一内容の請求項を中国知識産権局に提出すればよい。なお、中国での請求項は日本の特許可能な請求項と完全に一致している必要はなく、日本の請求項よりも狭い範囲であっても良い。例えば日本の特許可能な請求項にない構成要件を追加する限定を行っても良い。
日本国特許庁で特許可能と判断された「全ての」請求項を中国出願に含める必要はない。すなわち、請求項の削除が許容される。例えば、日本出願が5つの特許可能と判断された請求項を有する場合、中国出願はこれら5つの請求項のうち3つのみを有していても良い。
(ii)十分に対応するとはいえない場合
日本国特許庁で特許可能と判断された請求項に対し、新たなまたは異なるカテゴリーの請求項は、十分に対応しているとはみなされない。例えば、日本国特許庁における請求項が製品を製造する方法に関するもののみであり、中国国家知識産権局において、対応する方法の請求項に従属した製品に関する請求項を導入した場合、当該中国出願の請求項は十分に対応しているとはみなされない。
(3)中国出願が公開されていること
出願人は、PPHの申請以前に中国国家知識産権局から当該出願の公開の通知を受領していることが必要である。
(4)中国出願が実体審査段階に移行していること
出願人は、PPHの申請以前に中国国家知識産権局から当該出願の実体審査移行の通知を受領していなければならない。ただし、この例外として、出願人は審査請求と同時であればPPHの申請を行うことができる。
(5) 当該出願に関し中国国家知識産権局において、PPH申請時に審査の着手がされていないこと。
出願人は、PPHの申請以前に中国国家知識産権局の実体審査担当部署よりいかなるオフィスアクションも受領していない必要がある。
(6)PPHの申請が2012年3月1日以降になされた場合には、当該出願が電子特許出願であること。
(7)提出書類
以下の書類を提出する必要がある。
(i) 対応する日本出願に対して日本国特許庁から発行された特許性の実体審査に関連する全てのオフィスアクションの写し、及びその翻訳文(中国語または英語)
(ii) 対応する日本出願の特許可能と判断されたすべての請求項の写し、及びその翻訳文
(iii) 日本国特許庁の審査官が引用した引用文献の写し
特許文献については提出不要であるが、非特許文献については提出しなければならない。なお翻訳文の提出は不要である。
(iv) 請求項対応表
対応表には、日本の請求項番号と中国の請求項番号とを記載し、完全に一致するまたは構成要件を追加した等のコメントを併せて記載する。
2.日本国特許庁のPCT国際段階成果物を利用したPPH
国際調査機関としての日本国特許庁がPCT出願に対し作成した見解書を利用したPPH申請も可能である。具体的には以下の要件を満たす必要がある。
(1)中国出願に対応する国際出願の国際段階における成果物、すなわち
国際調査機関が作成した見解書(WO/ISA)、
国際予備審査機関が作成した見解書(WO/IPEA)及び
国際予備審査報告(IPER)
のうち、最新に発行されたものにおいて特許性(新規性・進歩性・産業上利用可能性のいずれも)「有り」と示された請求項が少なくとも1つ存在すること。
(2)PCT-PPHに基づく審査がなされるすべての請求項が、対応する国際出願の最新国際成果物で特許可能と判断された一又は複数の請求項と十分に対応しているか、十分に対応するように補正されていること。
(3) 中国出願が公開されていること、
(4)出願が実体審査段階に移行していること、
(5) 出願に関し中国国家知識産権局において、PPH申請時に審査の着手がされていないこと、及び
(6)PPHの申請が2012年3月1日以降になされた場合には、当該出願が電子特許出願であること、の条件は日本国特許庁の審査結果を利用する場合と同一であるので詳細な説明を省略する。
(7)提出書類
(i)特許性有りとの判断が記載された最新国際成果物の写しと中国語又は英語によるその翻訳文
(ii)対応する国際出願の最新国際成果物で特許性有りと示された請求項の写しと中国語又は英語によるその翻訳文
(iii)対応する国際出願の最新国際成果物で引用された文献の写し
(iv) 中国出願の全ての請求項と、特許性有りと示された請求項とが十分に対応していることを示す請求項対応表
なお、提出書類の詳細については日本国特許庁の審査結果を利用する場合と同一であるので詳細な説明を省略する。
3.PPH申請による効果
中国国家知識産権局は、上述した書類とともにPPHの申請を受理した場合、当該出願をPPHに基づく早期審査の対象として選定するか否かを決定する。中国国家知識産権局が申請を認めた場合、当該出願はPPHに基づく早期審査の対象案件として特別な地位が与えられる。なお、あくまで早期審査を受けることができるだけであり、日本と同様の請求項で特許されることが保証されるものではない。
4.利用形態
実務上多いケースは以下の2つのパターンになると考えられる。
(1)パリルートで中国へ特許出願する場合 |
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日本出願後パリ条約に基づく優先権主張を行い、中国へ特許出願を行う。その際審査請求を併せて行う。その後中国で出願公開がなされる。一定期間経過後知識産権局から実体審査に進行する旨の通知がなされる。通知後3月以内は自発補正が可能であることから(実施細則第51条)、この段階に日本国特許庁の審査結果があれば、日本国で特許性の認められた請求項を翻訳した補正書と共にPPH申請を行う。 |
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(2)PCTルートで出願する場合 |
PCTルートによる場合、PCT出願後、見解書が国際調査機関から通知される。PCT国内移行期限内に中国へ国内移行を行うと共に審査請求を行う。
国内移行後数ヶ月で、中国で出願公開がなされる。審査請求から一定期間経過後、知識産権局から実体審査に進行する旨の通知がなされる。通知後3月以内は自発補正が可能であることから(実施細則第51条)、見解書にて特許性有りと判断されている請求項を翻訳した補正書と共にPPH申請を行う。または、この段階で日本国特許庁の審査結果があれば、日本国で特許性の認められた請求項を翻訳した補正書と共にPPH申請を行っても良い。
以上
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