米国特許法改正規則ガイド 第3回 (第1回) - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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米国特許法改正規則ガイド 第3回 (第1回)

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米国特許法改正規則ガイド (第1回)

 第3回

河野特許事務所 2012年6月13日 執筆者:弁理士  河野 英仁

 

1.概要

 米国特許商標庁(以下、USPTO)は2012年2月10日に米国特許法の改正に伴う改正規則案を公表した。第3回では

(1)対象ビジネス方法特許に対する暫定プログラム(以下、CBM:Covered Business Methodという)(AIAセクション18)、

(2)CBMにおける技術上の発明の定義(AIAセクション18)、及び、

(3)由来手続(AIAセクション3)

について解説を行う[1]。

 

 公表された規則に対しUSPTOは意見を募集しており、2012年4月10日までに意見をUSPTOに提出する必要がある。意見募集期間終了後2012年9月16日の施行日に向けてUSPTOは規則の内容を最終確定する。遅くとも1月前の2012年8月16日には最終的な規則が公表される。

 

2. 対象ビジネス方法特許に対する暫定プログラム(CBM)(AIAセクション18)

(1)概要

 CBMとは特許成立後の一定期間経過後に、ビジネス方法特許について係争に巻き込まれた者が、USPTOに対し当該特許のレビューを求める暫定的な制度をいう。

 米国ではビジネス方法そのものは抽象的なアイデアとして特許を受けることができないが、情報処理技術に組み込むことで一定条件下で特許を受けることができる。しかしながら、ビジネス方法特許については影響力が大きいため、通常のPGRに加えて、8年を限度としてビジネス方法特許に対する暫定的なCBMを認めることとしたものである。

 

(2)主体的要件

 申立人、または、申立人の実際の利害関係人若しくは利害関係人が、特許権侵害訴訟で提訴(sued)されない限り、または、特許権侵害を問われ(charged)ない限り、申立人は、CBMの申し立てを提出できない(AIAセクション18(a)(1)(B))。

 

(3)申し立て理由

 PGRの規定を準用しており、PGRと同じく全ての無効理由、すなわち、保護適格性、新規性、非自明性、記載要件等について争うことができる(AIAセクション18(a)(1)(A)で準用する321条(b))。なお、ベストモード要件は争うことができない。

 

(4)申し立て対象特許要件

 BM特許のみがCBMの対象となる。なお、BM特許の定義については後述する。

 

(5)時期的要件

 1年後のAIAセクション18発効後であれば、遡っていつでもBM特許に対するCBMを請求することができる(AIAセクション18(a)(2))。

 参考図1に示すように、2012年9月16日にAIAセクション18が施行された場合、セクション18の有効日前に、または、後に発行されたビジネス方法特許に対し、CBMを申し立てることができる。なお、PGR申立可能期間中(登録後9月内)はCBMを申し立てることができない(AIAセクション18(a)(2)但し書き)。

 

 参考図1

 

(6)手数料

 CBMを申し立てる場合、クレーム数に応じた料金を支払う必要がある。クレーム数が1~20の場合、$35,800必要となる。クレーム数21~60までの手数料は以下のとおりである(規則42.10)。

    クレーム総数21~30--$44,750.00.

    クレーム総数31~40--$53,700.00.

   クレーム総数 41~50--$71,600.00.

   クレーム総数 51~60--$89,500.00.

 

(7)暫定PGRの手続

 原則として通常のPGRと同様の手続により処理が進められるが、一部のPGRに関する規定は準用されていない。例えば上述した請求期間に関する規定(米国特許法第321条(c))は準用しない。

 

(8)申し立て内容

  CBMの申し立てに際しては以下の記載が必要とされる(規則42.304)。

(i) 客体的要件及び主体的要件に合致する理由

 申立人はレビューが求められる特許が対象とされるビジネス方法特許であることを示さなければならない。

 また、申立人が規則42.302に規定する適格性に合致することを示さなければならない。つまりBM特許に対する係争当事者であり、かつ、禁反言による制限を受けていないことを示す必要がある。

 

(ii) 争点の特定

 クレームの各々について請求された正確な救済手段(relief)に係る陳述を提供することが必要である。当該陳述は以下を特定しなければならない。

 (a)クレーム;

 (b) クレームに対する争点が依拠する米国特許法第282条(b)(2)または(3)に基づき認められた特定の法定理由;

  (c)争われたクレームがどのように解釈されるか。解釈されるクレームが米国特許法第112条第6パラグラフに基づき許可されるミーンズプラスファンクションまたはステッププラスファンクション限定を含む場合、クレームの解釈は、各クレームされた機能に対応する構造、材料または作用(acts)を記載した明細書の具体的部分を特定しなければならない。;

  (d)どのように解釈されたクレームが、本セクションパラグラフ(b)(2)にて特定される法定理由に基づき特許性を有しないか。非特許性の理由が、先行技術に基づく場合、申し立ては、クレームの各要素の先行技術中での記載箇所を特定しなければならない。全ての他の非特許性の理由については、申し立ては、提起された法定理由に従っていないクレームの具体的部分を特定しなければならず、特定された法定主題がいかに当該法律に適合しないかを言及しなければならない。

 (e)争点をサポートし、かつ、提起された争点に対して当該証拠の関連性に言及すべく依拠された証拠の添付書類番号。

 

(9)審理期間

 第2回で説明したとおり、PGRと同じく審判部はレビューを開始すると決定した場合、当該決定日から原則として1年以内に決定がなされるようスケジューリング命令、すなわち各種手続の期限日を決定する(規則42.300(c))。

  ただし、当該期間は行政特許審判長による正当な理由により最大6月延長することができる。

 

(10)先発明主義及び先願主義とCBMとの関係

 CBMは2012年9月16日に効力を発するが、それ以前に成立したBM特許に対しても申し立てることができる。その際、参考図2に示すように、有効出願日が2013年3月16日前の有効出願日を有するBM特許に対しては、改正前102条及び103(先発明主義)が適用され、有効出願日が2013年3月16日以降の有効出願日を有するBM特許に対しては、改正後102条及び103(先願主義)が適用される(AIAセクション18(a)(C))。

 

参考図2

 

(11)BM特許の禁反言

 BM特許に対するCBMの申立人、または、申立人の実際の利害関係人は、民事訴訟において、または、ITCにおいて、申立人が暫定手続において既に主張しまたは合理的に主張したであろういかなる理由によっても、クレームが無効であるとの主張をすることができない(AIAセクション18(a)(D))。この点禁反言が発生するPGRとIPRと共通する。

 



[1] 規則を除く米国改正特許法の詳細については拙著「決定版 改正米国特許法全理解」ILS出版 2012年1月を参照されたい。

 

(第2回へ続く)

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