部下へ贈る言葉の花束【第3章-3】 - キャリアプラン全般 - 専門家プロファイル

松山 淳
アースシップ・コンサルティング コンサルタント/エグゼクティブ・カウンセラー
東京都
経営コンサルタント

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閲覧数順 2024年04月25日更新

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部下へ贈る言葉の花束【第3章-3】

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部下へ贈る言葉の花束

日に新た(3)



 「返信したのか」

 「はい」

 「なんでだ」

 「なんでって、何年も前からお願いしている通り、
  製品開発が私の夢なんです」

 「そんなことはわかってる。
  今の仕事はどうするんだ、投げ出すのか」

 「投げ出すなんて言ってません。
  サラリーマンが部署を異動するのは普通のことだと思いますが」

 「なんだその態度は」

 「だいたい、私の異動希望ってちゃんと上にあげてくれてるんですか」

  課長の目が一瞬泳いだ。

 「やっぱり」

 「何がやっぱりだ、だいだいなあ、お前はなあ・・・」

 「私が何ですか」

 「もういい、勝手にしろ」

扉を閉める大きな音と
机をこぶしで叩く音が小さな会議室に同時に響いた。

 (会社ってこんなところなのか)

背筋を伸ばしてパイプ椅子に座っていた遼太は
腰を緩め両手をポケットに入れ天井を眺めた。
あふれそうになる涙を必死にこらえた。

***

ほとんどの若手社員は希望を出さず、
出した十数名も上司に説得され翻意した。

創業者である大貫社長は、
来期、相談役に退くこと宣言していて、
次期社長有力候補の竹下常務は、このプロジェクトに賛成していない。

社内の風評は、「
竹下さんが社長になったらどうせ、すぐ潰される」であり、
先行きのないプロジェクトに参加したところで
「何の得にもならない」
という判断と説得が若手の意欲を削ぎ落とした。

逆風の中、プロジェクトはスタートした。
皮肉なことに、総務課長と喧嘩した小会議室に臨時の机が置かれた。

新しくもらった名刺を眺め
「総務部総務課兼新製品開発プロジェクトチーム主任」
という文字が、
名刺からはみ出しそうになっているのを見て遼太は苦笑した。

まあいいか、とつぶやくと、
社長が地方の営業支店から呼び寄せた上島課長が、
他人の給与明細を横目でのぞき込むように、
遼太の手もとを見ていた。

窓の外では銀杏の彩りが錦秋の季節になることを知らせていた。