早わかり中国特許: 第10回 (1) - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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早わかり中国特許: 第10回 (1)

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早わかり中国特許

~中国特許の基礎と中国特許最新情報~

第10回 外観設計特許の新規性及び創作非容易性について解説する。(第1回)

河野特許事務所 2012年6月6日 執筆者:弁理士 河野 英仁

(月刊ザ・ローヤーズ 2012年2月号掲載)

 

  

1.外観設計の新規性

 専利法第23条第1項は外観設計の新規性について規定している。

 

第23条

 特許権を付与する外観設計は、現有設計に該当しないものであり、かつ、いかなる機関又は組織又は個人により出願日前に国務院特許行政部門に出願されて出願日後に公告された特許書類には、同一の外観設計が記載されていないものでなければならない。

 ここで、現有設計とは、出願日前に国内外で公衆に知られている外観設計をいう(専利法第23用第4項)。

 

 専利法第23条第1項の後半は所謂抵触出願について規定している。すなわち、後願の出願時に、先願が公開されていなくとも、先願が後に公告された場合、後願は抵触出願(先願)の存在を理由に新規性無しとして拒絶される。このように中国では現有設計に係る外観設計と抵触出願に係る外観設計との2つを含めて新規性の判断を行っている。

 

(1)同一性の判断

 出願に係る外観設計と、先願に係る外観設計とが同一または実質的に同一の場合、新規性無しと判断される。

 意匠の同一とは、出願に係る外観設計と先願に係る外観設計とが、同種別の製品であり、かつ、出願に係る外観設計の全要素が先願に係る外観設計のデザイン要素と同一であることをいう。ここで、デザイン要素とは形状、図案および色彩をいう。

(i)デザインの同一性

 単なる慣用材料の変更、製品の機能、内部構造、技術的性能または寸法だけの相違であり、デザイン上の変化が存在しない場合、同一の外観設計と判断される。

(ii)製品の同一性

 製品の用途を基準に、製品の同一性が判断される。なお、製品の同一性を判断する場合、製品名称、国際意匠分類及び販売時の陳列棚の分類位置等が参考とされる。

 例えば用途に関しては、機械式腕時計と電子腕時計とは内部構造が相違するものの、用途が同一であるため、同一製品に該当する。

 

(2)実質同一の判断

 完全に同一の場合のみならず、製品及びデザインが実質的に同一である場合も、新規性無しと判断される。

(i) 製品の実質同一性

 製品の実質同一性は種別が同一または類似する製品に限られ、非類似の製品にまで拡大されない。例えば、タオルと絨毯とは非類似製品であるため、新規性の判断は行われない。

 種別が類似する製品とは、用途が類似する製品をいう。例えば、用途が相互に類似する玩具と小置物とは、種別が類似する製品と判断される。なお、製品に複数の用途が存在し、相互に異なる用途が存在したとしても、一部の用途が同一であれば、類似製品に該当する。例えば、MP3機能付き腕時計と通常の腕時計とは共に時計としての用途を備えるため、類似製品に該当する。

 

(ii)デザインの実質同一性

 一般消費者が、出願に係る外観設計と先願に係る外観設計とを全体観察し、両者の相違点が以下の(a)~(f)のいずれかに該当する場合、実質同一と判断される。

(a)相違点が、一般の注意を払う程度では感じられないほど局部上の軽微な差異にすぎない場合。例えば、ブラインドのデザインでルーバーの枚数が相違するにすぎない場合である。

(b)相違点が、使用する際に容易に見えない、または、見えない部分にある場合。ただし、容易に見えない部分の特定のデザインが一般消費者にとって目をひくような視覚効果を生じる場合は除かれる。

(c)相違点が、デザイン要素全体を、ありふれたデザインの相応するデザイン要素に置換したにすぎない場合。例えば、図案と色彩とが付された菓子箱の形状を正方体から長方体に置換したにすぎない場合である。

(d)相違点が、先願に係る外観設計を一デザイン単位とし、製品の通常の配列方式により配列を繰り返しているか、または、配列数に増減の変化を施したにすぎない場合。例えば、映画館の座席を行に沿って配列を繰り返しているか、または、行に沿った座席の数を増減させたにすぎない場合等である。

(e)相違点が、相互にミラー対称にすぎない場合。

 

(3)判断主体

 異なる種別の製品は、異なった消費者群を持つことから、出願に係る外観設計の製品の一般消費者の知識レベル及び認知力を基に評価する。製品の一般消費者は以下の特徴を有する。

(i) 出願に係る外観設計の出願日以前の同種または類似製品のデザイン、または、通常のデザイン手法について、常識程度の認識を持っている。例えば自動車の場合、一般消費者は市販されている自動車、または、マスコミで頻繁に見かける自動車広告で開示された情報等について、ある程度の認識を持っている者でなければならない。通常のデザイン手法とは、例えば、設計の転用、つなぎ合わせ、置換等である。

(ii)製品同士の形状、図案、色彩の相違点について、ある程度の識別力を備えているが、製品の形状、図案、色彩の軽微な変化まで注意が行き届かない。

 なお、判断主体について争われた事件については別途紹介する。

 

(4)直接観察の原則

 出願に係る外観設計と先願に係る外観設計とを比較する場合、視覚で直接に観察しなければならない。拡大鏡、顕微鏡または化学分析等の工具・手段を用いて比較してはならない。視覚により直接に区別できない部分または要素は、判断の根拠とすることはできない。例えば、視覚で観察した場合、形状、図案及び色彩が同一である織物同士は、拡大鏡の下で観察すれば、図案は大きく異なるが、類否判断の根拠とすることができない。

 

(5)全体観察・総合判断

  出願に係る外観設計と先願に係る外観設計とを比較する場合には、全体観察・総合判断方式を用いて行わなければならない。全体観察・総合判断とは、出願に係る外観設計と先願に係る外観設計との全体から判断することをいい、デザインの一部または局部から判断の結論を出してはならないことをいう。

 

(i) 先願に係る外観設計の特定

 先願に係る外観設計の図面または写真により、製品各面の図が反映されていない場合、一般消費者の認知力をもとに、先願に係る外観設計に公開された情報を確定しなければならない。

 このように、一般消費者の認知力に基づき、先願に係る外観設計の図面または写真に公開された内容を通じて、製品の他の部分または他の変化状態時のデザインを推定することが可能な場合、当該他の部分または他の変化状態時のデザインも、公開されたものと見なされる。例えば、軸対称、面対称、または、中心対称であり、図面または写真により製品のデザインの一つの対称面だけが公開されている場合でも、他の対称面も公開されているものと見なされる。

 

(ii) 出願に係る外観設計の特定

 出願に係る外観設計を特定する場合、出願に係る書類中の図面または写真によって示されるデザインを基準としなければならない。簡単な説明は、図面または写真により示された製品のデザインの釈明に用いることができる。

 

(iii) 出願に係る外観設計と先願に係る外観設計との比較

 上述したとおり、全体観察・総合判断方式を用いて行われる。先願に係る外観設計の図面または写真で公開されていない箇所が、当該種別の製品の使用状態において、一般消費者に注目されないものであって、かつ、出願に係る外観設計の相応する部分のデザイン上の変化もまた製品全体の視覚効果に影響を与えない場合、全体観察・総合判断に影響を与えず実質同一とされる。

 例えば、エアコン用ファンの場合、先願に係る外観設計の図面または写真においてエアコン用ファンの底面または背面が公開されておらず、かつ、出願に係る外観設計の底面または背面でのデザイン上の変化も、製品全体の視覚効果に顕著な影響を与えていない場合、両者の全体観察・総合判断に影響を与えることはない。

 出願に係る外観設計において、先願に係る外観設計の図面または写真に公開されていない内容が、単に当該種別の製品の通常のデザインにあたり、かつ、一般消費者から注目されない場合、全体観察・総合判断に影響を与えない。

 例えば、先願に係る外観設計の図面または写真に公開されていない部分がトラックの荷台の尾板であり、かつ、出願に係る外観設計のトラックの荷台の尾板も製品の通常のデザインにすぎない場合、全体観察・総合判断に影響を与えない。

 

(6)組物製品の新規性判断

 組物製品とは、複数の構成品の結合により構成される製品をいう。中国においても日本国意匠法第8条と同じく専利法第31条第2項の規定に基づき組物製品の登録が認められている。

 

専利法第31条第2項

・・・同一の分類に属しかつ一組として販売又は使用される製品に用いられる二つ以上の外観設計は、一件の出願とすることができる。

 

 ここで、「同一の分類に属しかつ一組として販売され又は使用される製品に用いられる二つ以上の外観設計」とは、各製品が分類表の同一の大分類に属し、習慣上同時に販売され、または、同時に使用され、かつ各製品の意匠が同一の設計思想により形成されたものをいう(実施細則第35条第2項)。

 同時に販売されるものとしてはベッドカバー、シーツ、枕カバー等により構成されるベッド用品等が該当する。また同時に使用されるものとしてはコーヒー器具のうち、コーヒーカップ、コーヒーポット、シュガーポット、ミルクポット等が該当する。

 

 組物製品の新規性判断は製品同士の関係により以下の基準に則って行われる。

(i)組立関係が唯一である組物製品

 例えばケトルと電熱プレートからなる電気ケトルの組物製品の場合、当該製品を購入・利用する際の一般消費者にとって、各構成品を組み付けた後の電気ケトル全体のデザインが印象に残る。従って、個々の構成品の外観を対象とせずに、組み合わされた状態の全体のデザインを対象に新規性の判断が行われる。

 

(ii)組立関係が唯一でない組物製品

 例えば差込ユニット玩具製品の場合、当該製品を購入または利用する一般消費者にとって、個々の構成品の外観が印象に残るため、差し込んだ後の全体のデザインを対象とせずに、差込ユニットの全ての個々の構成品の外観を対象として新規性の判断を行う。

 

(iii)各構成品の間で組立関係のない組物製品

 例えばトランプまたは将棋の駒等の組物製品の場合、当該製品を購入または利用する一般消費者にとって、個々の構成品の外観が印象に残るため、全ての個々の構成品の外観を対象として新規性の判断を行う。

 

(7)状態が変化する製品

 状態が変化する製品とは、販売の際と使用の際とで異なる状態となる製品をいう。先願に係る外観設計の異なる全ての状態についてのデザインと、出願に係る外観設計の使用状態時のデザインとを総合的に比較し、新規性の判断を行う。

 

(第2回へ続く)

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