早わかり中国特許:第7回 特許要件 新規性と新規性喪失の例外(1) - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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早わかり中国特許:第7回 特許要件 新規性と新規性喪失の例外(1)

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早わかり中国特許

~中国特許の基礎と中国特許最新情報~

第7回 特許要件 新規性と新規性喪失の例外(第1回)

河野特許事務所 2012年3月2日 執筆者:弁理士 河野 英仁

(月刊ザ・ローヤーズ 2011年11月号掲載)

 

 中国で特許を取得するためには新規性と創造性(進歩性)の2つのハードルを乗り越える必要がある。新規性は出願前に既に存在する技術と同一の技術については特許を付与しないとする要件である。既に知られた技術と同一の技術について独占排他権を認めるのは妥当でないからである。一方、創造性は、新規性を具備するものの既に存在する技術から見て容易に想到できるものについては特許を付与しないとする要件である。第7回では新規性及び新規性喪失の例外について解説する。

 

1.新規性に関する規定

 新規性の要件は専利法第22条に規定されている。

 

専利法第22条

 特許権を付与する発明及び実用新型は、新規性、創造性及び実用性を有しなければならない。

 新規性とは、その発明又は実用新型が現有技術に該当せず、かつ、いかなる機関又は組織又は個人により出願日前に国務院特許行政部門に出願されて出願日後に公開された特許出願書類又は公告された特許書類には、同一の発明又は実用新型が記載されていないことをいう。

 

 専利法第22条第2項は新規性について以下の2つの面から要件を課している。すなわち、日本でいう新規性と拡大先願の地位との2つの規定がミックスされて、新規性の概念を構成している点に注意すべきである。

(1)公知・公用・刊行物公知

 前半は、「その発明又は実用新型が現有技術に該当せず、」と規定しており、日本国特許法第29条第1項各号と同様に出願に係る発明または実用新型が公知、公然実施または刊行物公知となっていないことが必要とされる。

(2)抵触出願

 後半は、「いかなる機関又は組織又は個人により出願日前に国務院特許行政部門に出願されて出願日後に公開された特許出願書類又は公告された特許書類には、同一の発明又は実用新型が記載されていないこと」と規定している。本規定は日本国特許法第29条の2に規定する所謂「拡大先願の地位」に対応するものである。ただし、「いかなる機関又は組織又は個人」と規定されているとおり、日本国第29条の2括弧書き、及び、但し書きに規定する同一発明者及び同一出願人の例外規定は存在しない点に注意すべきである。中国では本願よりも先に出願され、本願の出願後に公開された出願を抵触出願という。

 

2.新規性の適用要件

(1)現有技術に該当すること

 現有技術とは、「出願日前に国内外で公衆に知られている技術」をいう。現有技術には、出願日(優先権を主張している場合には、優先日)以前に、国内外の出版物において公式に発表、国内外において公式に使用、或いはその他の方式により公然知られた技術が含まれる(専利法第22条第5項)。

 第3次法改正以前は、刊行物公知については世界主義を採用していたが、公知・公用については国内主義を採用していた。そのため、例えば文献としては存在しないが、日本で既に公然実施していた技術についても、中国にて合法的に特許権が付与されるという問題があった。そこで、第3次法改正により、公知・公用についても国際的調和の観点から世界主義を採用することとしたものである。

(2)情報に対し第3者のアクセスが可能であること

 現有技術は、出願日以前に公衆が知り得た技術的内容でなければならない。換言すれば、現有技術は、出願日以前に公衆が取得できる状態にあり、かつ、公衆がその中から実体的な技術知識を知り得るような内容を含んでいなければならない。

 従って、秘密保持状態にある技術内容は、現有技術には当たらない。秘密保持状態とは、守秘規定または協定により制約を受けている場合のみならず、社会観念或いは商習慣上守秘義務を負うと考えられるものも含む。例えば、黙示の了解による守秘も含まれる。ただし、守秘義務を負う者が規定、協定或いは黙示の了解に反して秘密を漏洩し、技術内容が開示され、公衆が当該技術を知った場合、新規性を喪失する。この場合、後述する新規性喪失の例外規定の適用を受ける必要がある。

(3)時期的要件 出願日前に公開されていること

 現有技術に該当するか否かの時期的基準は出願日である。なお、優先権を主張している場合には、優先権日を指す(実施細則第11条[1])。同日に開示された技術については専利法第22条にいう現有技術には該当しない(審査指南第2部分第3章2.1.1)。

(4)出版物、使用、または、その他の方式により公開されたこと

(i)出版物による公開

  専利法上の出版物とは、技術またはデザインの内容を記載しており、独自に存在しているメディアであり、かつ公式な発表または出版の時期を表示しているか、或いはその他の証拠で時期を証明することができるものをいう。出版物は例えば特許公報、科学技術関連雑誌・書籍、学術論文、専門文献、教科書、技術マニュアル、正式に公表された会議議事録或いは技術報告書、新聞、製品サンプル、製品カタログ、広告宣伝パンフレット等である。なお、印刷物以外に、マイクロフィルム、映画、写真のネガ、ビデオテープ、磁気テープ、レコード、CD等、電気・光・磁気・撮影等により作製された視聴資料であっても良い。

 さらに、インターネットまたはその他オンラインデータベースにある資料等、その他の形式で存在している資料であっても良い。出版物は地理的位置、言語または取得方法による制限を受けることなく、年代による制限も受けない。

 出版物の出版・発行部数の量、実際に読まれたか、出願人が知っているか否かは問題とならない。

 ただし、「内部資料」、「内部発行」等の文字が付されている出版物が、確かに特定の範囲以内で発行されており、かつ秘密保持が求められている場合には、出版物による公開に該当しない。

 印刷日として、年月或いは年のみを記載している場合、月の末日、若しくは記載された年の12月31日が公開日となる。

(ii)使用による公開

 使用による公開は、公衆が技術の内容を知り得る製造、使用、販売、輸入、交換、贈呈、実演、展示等が該当する。以上述べた方式を通じて、関連技術を公衆が知り得る状態となっている限り使用による公開に当たる。現実に公衆がその場所にいたかどうかは問題とならない。ただし、関連技術の内容説明が一切なければ、当業者が、当該構造、機能、或いは材料成分を知ることができない場合、単に製品を展示したというだけでは、公開による使用に該当しない。

 製品が公開された場合、たとえ製品または装置を破壊しなければ内部の構造及び機能を知ることができないものであっても、使用による公開に該当する。

(iii)その他の方法による公開

 その他の方法としては主に、口頭での公開をいう。例えば、口頭による会話、報告、討論会での発言、放送、テレビ、映画等、公衆が技術内容を知り得る方法が該当する。口頭による会話、報告、討論会での発言は、その発生日を公開日とするが、公衆が受信できる放送、テレビまたは映画についての報道は、その放送日を公開日とする。

 

 



[1] 実施細則第11条

 特許法第28 条(出願の受理)及び第42 条(存続期間)に規定した状況を除き、特許法にいう出願日とは、優先権を有するものについては優先日を指す。

本細則にいう出願日とは、別段の規定がある場合を除き、特許法28 条に規定した出願日をいう。

 

(第2回へ続く)

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