早わかり中国特許: 第12回 (1) - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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早わかり中国特許: 第12回 (1)

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早わかり中国特許

~中国特許の基礎と中国特許最新情報~

第12回は重複特許の禁止、発明特許と実用新型特許の重複出願、単一性及び公序良俗違反について説明する。(第1回)

河野特許事務所 2012年7月9日 執筆者:弁理士 河野 英仁

(月刊ザ・ローヤーズ 2012年4月号掲載)

 

1.重複特許の禁止(専利法第9条)

(1)概要

 中国においても他国と同様に重複特許の禁止規定が設けられている。専利法第9条は以下のとおり規定している。

 

第9条

 同一の発明創造には一つの特許権のみが付与される。ただし、同一の出願人が同日に同一の発明創造について実用新型特許出願と発明特許出願の両方を行っており、先に取得した実用新型特許権が消滅しておらず、かつ出願人が当該実用新型特許権を放棄するという意思表明を行った場合、発明特許権を付与することができる。

 2人以上の出願人が同一の発明創造について個別に特許出願したとき、特許権は最先の出願人に付与する。

 

 同一発明について重複した権利を付与すれば独占排他権を付与するという特許制度の趣旨に反し、また存続期間の実質的延長を認めることとなるからである。

 ただし、中国では模造品が非常に多いことから発明特許出願と実用新型特許出願の重複出願が認められている(専利法第9条但し書き)。

 

(2)同一発明か否かの判断

 請求項に記載された発明が、先願の請求項に記載された発明と同一である場合に、専利法第9条の規定に基づき拒絶される。なお、請求項に記載された発明が、未公開の先願の明細書に記載された発明と同一の場合は、所謂抵触出願に該当し専利法第22条第2項の規定が適用される。

 

 先願及び後願の明細書の記載が同一であるが、請求項に記載された発明の保護範囲が異なる場合は、同一発明に該当せず専利法第9条は適用されない。例えば、同一出願人が提出した2つの特許出願の明細書に、同じ製品及び当該製品の製造方法が記載されており、一方の特許出願の請求項には製品が記載され、他方の特許出願の請求項には当該製品の製造方法が記載されている場合、保護範囲が異なるため同一発明には該当しない。

 また、請求項の保護範囲において一部だけが重なっている場合も、同一発明に該当しない。例えば、請求項において連続した数値範囲で限定された技術的特徴がある場合、当該連続した数値範囲が、他の出願の請求項における数値範囲と完全に同一でない場合には、同一発明に該当しないと判断される。

 

(3)出願人が同一の場合の取り扱い

 同一出願人が同日(優先権を主張している場合、優先日)に同一発明について、2つの特許出願を行っている場合、専利法第9条に該当し、一方の請求項について補正を行うか、または、いずれか一つの出願を選択しなければならない。

 

(4)出願人が異なる場合の取り扱い

 異なる出願人が同日(優先権を主張している場合、優先日)に同一発明について特許出願した場合、知識産権局による協議通知が双方の出願人に対しなされる(実施細則第41条)。この点日本国特許法と共通する(第39条第2項)。協議が成立しない場合、専利法第9条第1項の規定に基づき拒絶される。

 

(5)実務上の対応

 同日に他人が同一発明を出願しているというケースは稀であるが、他人が先に出願した請求項に係る発明と同一発明である、または、分割出願の請求項に係る発明が親出願の請求項に係る発明と同一発明であることを理由に拒絶理由を受けることが多い。

 専利法第9条第1項に基づく拒絶理由を回避するのは比較的容易である。先願の請求項に係る発明と同一とならないよう、明細書の記載に基づき技術的特徴を請求項に付加する補正を行えば、拒絶理由は解消する。

 

2.発明特許出願と実用新型特許出願の重複出願

(1)重複出願を認める趣旨

 参考図1は重複出願の経緯を示す説明図である。

 

 同一出願人が発明特許出願と実用新型特許出願とを同日に出願した場合、実用新型特許出願については無審査で登録されるため、約半年で公告され実用新型特許権が成立する。一方、発明特許出願は実質審査を経るため約2年で特許査定される。

 その際、出願人は審査官から実用新型を放棄して発明特許について登録を受けるか否かを問う通知を受ける。ここで実用新型特許を放棄した場合、実用新型特許権は参考図1における実用新型特許の公告時まで遡って消滅するのか、あるいは、特許査定時まで存続して消滅するのか問題となる。第3次改正前はこの点見解が分かれていた。

 そこで、第3次改正法においては後者、すなわち特許査定時まで実用新型特許を存続させた上で消滅する点明確化された(実施細則第41条)。

 

(2)主体的要件

 発明特許出願の出願人と、実用新型特許出願の出願人が同一であることが必要とされる(実施細則第41条)。

 

(3)時期的要件

 中国に同日に発明特許出願と実用新型特許出願を行うことが必要である(実施細則41条第2項)。ここでいう出願日は優先日ではなく、中国での現実の出願日をいう。

 

(4)手続的要件

 出願時に同一の発明創造について他の発明または実用新型について出願したことを説明しなければならない。審査官に同一発明創造に係る出願が存在することを通知するためである。当該説明を怠った場合、重複出願は認められず、専利法第9条に基づき拒絶されることとなる。

 

(5)手続の効果

 実用新型特許出願については公告により先に実用新型特許権が発生する。これにより、早期に模造品に対する権利行使が可能となる。

 発明特許出願について拒絶理由が存在しない場合、国務院特許行政部門は出願人に指定期間内にその実用新案権を放棄する旨の声明を提出するよう通知する。なお、発明特許出願に係る発明と実用新型特許に係る発明との同一性判断は上述したとおりである。ここで、出願人が放棄する旨の声明を提出した場合、国務院特許行政部門は発明特許権を付与する決定をし、かつ発明特許権を付与することを公告する際に、当該声明をも公告する。この場合、実用新型特許権は発明特許権が公告された日から終止する。すなわち、実用新型特許権は遡及消滅しないことになる。

 発明特許ではなく実用新型特許について権利維持を希望する場合、すなわち放棄に同意しない場合、発明特許出願が拒絶される。通常は存続期間が出願日から20年と長い発明特許権を選択するケースが多い。しかしながら、実用新型特許権は創造性のハードルが低く権利の安定性が比較的高いことから、敢えて出願日から10年と存続期間が短い実用新型特許権を選択しても良い。

 

(6)日本企業の重複出願の利用方法

 日本企業は通常日本国特許庁に出願してから中国へ出願することになる。中国への出願はパリ条約によるルートと国際特許出願によるルート(PCTルート)の2つが存在する。中国における重複出願の適用を受けるためには、現在の実務ではパリルートによらなければならない

 中国では発明・実用新型間の出願変更制度が存在しないものの、日本国特許出願を基礎として、中国へ発明特許出願または実用新型特許出願を行うことが認められている(パリ条約第4条E(2))。従って日本国出願日から1年以内に優先権を主張し、中国へ同日に発明特許出願と、実用新型特許出願を行うと共に、同日特許出願がある旨を願書に説明すれば良い。

 一方、PCTルートによる場合、PCTの願書に同一発明について同日出願が存在する旨を記載する欄が存在しないため、手続き上重複出願の適用が受けられないと解されている。現在知識産権局から公式な見解は示されていないが、将来的にはPCTルートでも認められる可能性があることから、今後の運用に注意する必要がある。

 近年ではPCTルートによる出願が増加している。そのような中で重複出願を利用するには、中国についてのみ1年以内にパリルートで重複出願を行う。その他の国についてはPCTルートにて国内移行すればよい。

 

(7)まとめ

 中国で模造品が出現するのは早い。製品発表または展示会出展からわずか数ヶ月でニセモノが続々と販売される。登録まで2年も要する発明特許では対応できない。筆者に相談が持ち込まれる案件もそのようなケースが多い。

 権利化を希望する製品の中国での重要性、マーケット、競合他社の存在及び早期権利化の必要性等を総合的に考慮してパリルートによる特実重複出願を活用することが企業の知財戦略上重要となる。

 

3.発明の単一性(発明特許及び実用新型特許)

 日本の特許法第37条及び実用新案法第6条と同じく、中国においても、発明特許出願及び実用新型特許出願の発明の単一性が要求されている。専利法における根拠規定は専利法第31条第1項である。

 

第31条

 一件の発明または実用新型の特許出願は、一つの発明または実用新型に限らなければならない。一つの全体的発明構想に属する二つ以上の発明または実用新型は、一件の出願とすることができる。

 

(1)発明の単一性が要求される理由

 発明の単一性が要求されるのは、以下の理由に基づくものである。

(i)経済上の理由:1件分の特許出願費用のみを支払った出願人が、複数の異なる発明または実用新型特許の保護を得ることを防止すること。出願人間の公平を期すためである。

(ii)審査技術上の理由:特許出願の分類、先行技術調査及び審査を容易にすること。

 

(2)一つの全体的発明構想

 一つの全体的発明構想に属する2以上の発明または実用新型は、技術的に相互に関連し、一つまたは複数の同一または対応する特別な技術的特徴を含んでいなければならない。ここで、「特定の技術的特徴」とは、各発明または実用新型を全体として、先行技術に対して貢献した技術的特徴をいう(実施細則第34条)。

 

(3)発明の単一性判断

 専利法第31条1項及び実施細則第34条の規定に基づき、1件の特許出願において保護を求める2つ以上の発明が発明の単一性の要求を満たしているかを判断するには、請求項に記載された技術方案の実体的内容が、1つの全体的な発明思想に属するかの観点により行われる。

 つまり、複数の請求項に、技術上相互に関連する一または複数の同一または対応する特別な技術的特徴を含んでいるか否かにより判断される。発明の単一性判断は請求項の内容に基づいて行われるが、必要に応じて明細書及び図面の内容が参酌される(審査指南第2部分第6章)。なお、発明の単一性判断は権利化実務においては重要性が低いため詳細な説明を省略する。

 

(4)単一性違反の対応

 単一性要件を理由とする拒絶理由を受けた場合、単一性要件違反が存在しないことを反証するのは困難であることから、分割出願を行うことが好ましい(実施細則第42条)。

 

(5)単一性違反と無効理由

 発明の単一性要件は上述したとおり経済上及び審査技術上の要請によるものであり、特許無効の理由とはならない(実施細則第65条第2項)。

 

(第2回へ続く)

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