- 塚本 有紀
- フランス料理・製菓教室「アトリエ・イグレック」 主宰
- 大阪府
- 料理講師
対象:料理・クッキング
- 黄 惠子
- (料理講師)
ガスコーニュ地方の郷土料理ガルビュールgarbure a la gasconneを作りました。
ガスコーニュ地方はフランスの南西部、ボルドーからスペイン国境にかけてのあたりの歴史的な地方名で、三銃士のダルタニアンの出身地としてよく知られます。
ガルビュールというのはガスコーニュの野菜やベーコン、コンフィとの煮込みスープのことです。
辞書によるとgarbe「束」というガスコーニュ方言から派生した言葉だそうで、野菜や香草を束になるほどたくさん使う、ということでしょうか。いろいろな作り方があります。
白インゲン豆、鴨脚のコンフィ(この前の授業で1つ余計に作っておきました)、ベーコン、じゃがいもや蕪、玉ねぎ、キャベツを使います。
どっしり素朴で、いかにも郷土料理という味がします。寒い時期、とてもおいしいものです。
カスレほどの重たさもありません。
じつは私がずっとこの料理を作りたかった理由は他にあります。
いつだったかボルドーからバスクへ抜ける旅行をしていたときに、気になる絵はがきを見つけたからです。
そこには黒いベレー帽をかぶった、いかにも地元農民っぽいおじいちゃんが、スープのお皿をかたげて満足そうに飲んでいる図があるのです。傍らには赤ワインのカラフが写っています。
シャブロchabrot
と書かれています。
シャブロとは残り少なくなったスープに赤ワインを入れて飲み干すこと。
「・・・・・・(何なの、これ!?)」
がその時の感想。私はフランスの地方の絵はがき(地方料理の写真と、使えないレシピが載っています)を大量に持っているのですが、そもそも今となってはなぜそんな絵はがきを買ったのかさえ不明。よっぽど気になったとみえます。
むむむ、おいしいのかな。そもそもなんで赤ワインなの? ぬるくて薄うすなんじゃないのかしら。酸っぱいのじゃ??
(子供の頃の給食でカレーうどんの後には決まってお茶を注いで飲まされた、あの嫌な味と記憶が蘇るのです)
以来時折その絵はがきが目に留まるたび、どんな味なんだろうと思い続けてきたのです。かれこれ、もう十数年。
だから今日はとうとうやってみることにしました。帰りにいそいそと赤ワインを買いこみ、いそぎ自宅へ。
お昼に作ったスープを温め直し、ふたたび「おいしいなあ」と味わい、いよいよ赤ワイン投入。
「!!! ええぇ、おいしい・・」
しっかりと旨味のでたスープは、赤ワインぐらいでは薄まらず、ワインの酸が加わって風味があきらかに変わりました。ワインが少し温まったことで、アルコールがゆらゆらと揮発している最中を味わっているような、躍動感のある感じ。一気に体温が上がります。
シャブロはペリゴール地方では「医者要らず」として、薬効が信じられていたのだそうです。
しかしやっぱりスープはちょっとぬるくなるのです。でもすぐに体温が上がるため、気にならなくなってしまいました。
びっくり。おもしろい一日でした。
来年の冬の料理講座に登場させる予定です。もちろんシャブロもやります。やる価値ありです。
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