- 村田 英幸
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- 東京都
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対象:事業再生と承継・M&A
- 村田 英幸
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【コラム】株式会社が株主総会の決議等を経ることなく退任取締役に支給された退職慰労金(最判平成21・12・18判タ1316号132頁)
本事件は,退任取締役に対する退職慰労金について,事前の株主総会の決議を経ることなく,取締役会決議によって定められた内規に従って計算された額を会社代表者が確認,決裁し,支給する手続が採られていた会社において,株主総会の決議はもちろんのこと,会社代表者の決裁を経ることなく支給された退職慰労金について,会社が退任取締役に対してその返還を求めた事案です。 本判決は,退任取締役に対し退職慰労金を支給する旨の株主総会の決議等が存在しない以上は,退任取締役には退職慰労金請求権が発生しておらず,退任取締役が本件金員を受けたことが不当利得になることは否定し難いとしながら,本件退職慰労金返還請求が信義則違反に該当するかの点につき,①本件会社においては,従前から,退任取締役に対する退職慰労金は,事前の株主総会の決議を経ることなく,内規に基づいて,発行済株式総数の99%以上を保有する代表者が決済することにより,株主総会の決議に代えてきたこと,②退任取締役が本件内規に基づく退職慰労金の支給を催告したところ,その約10日後に退職慰労金が支払われ,会社がその返還を明確に求めたのは,送金後1年近く経過してからであったというのであるから,退任取締役が本件送金について会社代表者の決裁を経たものと信じたとしても無理からぬものがあること。③会社代表者が,上記催告を受けて本件送金がされたことを,その直後に認識していたとの事実が認められるのであれば,会社代表者において本件送金を事実上黙認してきたとの評価を免れないこと,④退任取締役は,従前退職慰労金を支給された退任取締役と同等以上の業績を上げてきたとの主張をしていること,から退任取締役に対して退職慰労金を不支給とすべき合理的な理由があるなど特段の事情がない限り,会社が退任取締役に対して本件金員の返還を請求することは,信義則に反し,権利の濫用として許されない。⑤この点は会社が民事再生手続開始決定を受けても異なるものではない。上記特段の事情(信義則違反)の有無について審理判断しないで,会社が民事再生手続開始決定を受けたことのみを理由に退職慰労金の返還請求を認容した原判決を審理不尽として破棄し,高裁に差し戻しています。 |
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