北京における中医診療について(1) - 心と体の不調全般 - 専門家プロファイル

日色 雄一
傳統醫學硏究所 日色鍼灸院 院長 医学博士 世界医学気功学会理事
神奈川県
鍼灸師

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対象:心と体の不調

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北京における中医診療について(1)

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留学中に北京で生活する方々へ向けて発表したコラムです。

北京における中医診療の現状と中国医学の内容と実情について知ることで、ご自身の健康に役立てて頂きたいです。

1.中国医学について

 陰陽、五行など中国古代思想を中心に理論体系が構成されており、二千年以上の歴史が構築した理論と実践に基づく経験医学です。その治療範囲は内科、小児科、婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、呼吸器循環器科、皮膚科、整形外科など多岐に渡っています。治療方法は鍼灸、漢方、推拿按摩、気功、整骨、薬膳などがあります。北京に住む日本人が手軽に受けられるのは鍼灸、漢方、推拿按摩が多いようです。

 中国医学では体内における「気」、つまり「生命エネルギー(Vital force)」の過不足と停滞により病気が引き起こされると考えます。「気」の通り道を「経絡」といい、経絡上に点在するものを「経穴(ツボのこと)」といいます。そのツボに鍼をしたり、指圧をすることにより治療をします。また、漢方薬、薬膳は消化器官を通して「温める」、「冷やす」、「下す」、「昇る」など様々な情報を有した植物、動物、鉱物などの物質を体内に取り入れることにより身体と心に作用します。また、骨折や打撲、皮膚病には漢方薬を外用することもあります。

 ①鍼灸 

症状により頻度は異なりますが、定期的に治療することをおすすめします。現在鍼灸治療を受けられる場所は多数あり、主に外資系クリニックや現地の病院、個人で開業している中医クリニックがあります。その場所により予約の必要性や通訳の有無などの条件、施設の環境が異なります。私が2002年に研修していた中国中医科学院(元中国中医研究院)付属広安門病院の一日の外来者数は平均7200人。その内、鍼灸科の一日外来者数は600人を超えます。このような病院に行く時には通訳がいないと大変です。各クリニック、病院の現状を把握していないのでどこの病院がいいか明言できませんが、先生との相性や縁が重要であることは言うまでもないでしょう。ただ、外国人が知らない小さなクリニックや診療所などの医療機関に名人及び国家級の先生がいることも少なくないようです。

(1)鍼灸治療の適応範囲

 鍼灸治療は肩こり、腰痛、膝痛などの症状のみに行うという考えが一般的ですが、実際の治療範囲は頭痛、めまい、耳鳴り、耳痛、鼻づまり、鼻炎、咽頭痛、不眠、眼精疲労、冷え性、食欲不振、胃痛、便秘、下痢、生理痛、不妊症、逆子、乳腺炎など様々な症状と疾患に有効です。

(2)ダイエット鍼について

「やせるハリ」、「ダイエットの治療」は効果があるのでしょうか、としばしば聞かれる質問です。個人差はあるものの確かに効果はあります。耳鍼(実際には直径2ミリの金属球もしくは植物の種を耳に貼ることが多い)をして一ヶ月で7kg痩せた人もいます。また、週に2~3回の治療で、鍼をしない日の朝食は牛乳だけ、昼夜は野菜のみで炭水化物を摂取しないという治療メニューもあるそうです。このような内容は必ず体重の減少を認められますが、健康を害する可能性が非常に高いです。「食欲を減らす」というのは自然ではありません。中国医学は自然の摂理に逆らわないことで元気に長生きできると考えます。ストレスなどにより病的に食欲が亢進している場合は、治療をすることで食欲が落ち着くことがあります。人生において、健康を失ってまで一時的な美を目指すことに価値などあるのでしょうか?漢方薬でも「やせる漢方」などと宣伝しているものにも注意が必要です。通常、これらには「大黄」、「番寫葉(センナ)」、「決明子」など身体を冷やし、排便させる作用の漢方薬が入っています。これらは決して長期間服用するものではありません。

(3)日本と中国の違いについて

 中国における鍼灸への認識は、日本に比べるとより多くの人民に広まっているようです。中国では鍼灸は疑う余地もなく医学であり治療です。様々な難病に対しても鍼灸治療が行われています。例えば、脳血管障害による半身不随には鍼治療をすることが少なくありません。天津中医薬大学附属第一病院では脳血管障害を治療する方法「醒脳開竅鍼刺法」が国家重点課題に選ばれています。中医の病院には内科、小児科、整形外科などに並んで鍼灸科を併設していることが多いです。また、鍼灸科にも入院施設があり、先述の広安門病院鍼灸科に入院する方の90%以上が脳血管障害による患者さんです。

 日本の鍼灸は軽症の疾患や体質改善を主とした健康管理およびリラクゼーションが中心です。医学としての認識はまだまだ薄いようですが、中国では「パソコン仕事で疲れたから鍼に行こう」とか「体質改善には鍼」という考えはほとんどないようです。日本と中国が学術交流を通して、お互いの利点が補完されることにより、鍼灸医学の更なる発展があるのだと信じています。

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