米国特許判例紹介:誘発侵害と寄与侵害(第1回) - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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米国特許判例紹介:誘発侵害と寄与侵害(第1回)

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米国特許判例紹介:誘発侵害と寄与侵害(第1回)

~最高裁により誘発侵害の適用要件が明確化される~

Global-Tech Appliances, Inc., et al.,

                    Petitioners,

            v.

           SEB S.A.

河野特許事務所 2011年10月5日 執筆者:弁理士  河野 英仁

1.概要

 日本国特許法第101条に規定する間接侵害に類似する概念として米国特許法には誘発侵害(Induced Infringement)がある。誘発侵害に関する規定は米国特許法第271条(b)である。

 

 米国特許法第271条(b)[1]

 (b)積極的に特許侵害を誘発した者は,侵害者としての責めを負うものとする。

 

 誘発侵害に関する米国特許法第271条(b)の規定は非常に広く曖昧である。本規定の適用に際し、誘発行為により特許侵害を構成することを知っていることが必要となるか否かが明確ではなかった。また知っていることを要件とするのであれば、どの程度知っている必要があるのかも不明であった。

 

 本事件では、被疑侵害者が米国から香港へ輸入した製品を模造した。そして、香港から米国へ模造品を輸出する際に、模造した事実を、鑑定を行う米国弁護士に伝えていなかった。最高裁は米国特許法第271条(b)に規定する誘発侵害においても、誘発行為により特許侵害となることを知っていることが必要であると判示し、さらに「故意の盲目(Willful Blindness見て見ぬふり)」であっても要件を満たすと判示した。

 

 

2.背景

(1)特許発明の内容

 SEB(被申立人、原審原告)はフランスの会社であり、家庭料理用機器を販売している。SEBは米国で関連子会社T-Falを通じて製品を販売している。SEBはU.S. Patent No. 4,995,312(以下、312特許という)を所有している。312特許は、安価なプラスチック製囲い(skirt)を有する電熱式フライ専用鍋をクレーム[2]している。

 従来のフライ鍋の囲いは、150℃以上の温度に継続して耐えることができるプラスチック部材を用いていた。しかし、これらの耐熱プラスチックは高価であり、低価格鍋の大量生産に向かなかった。

 参考図1は312特許の図1である。312特許はフライ鍋の型1が高温であることから、耐熱リング5によってエア空間4を設け、型1から囲い3を隔離したものである。このエア空間4により、囲い3は非耐熱性の安価な一般的プラスチックを用いることができる。

参考図1 312特許の図1


 


[1]米国特許法第271条(b)

Whoever actively induces infringement of a patent shall be liable as an infringer.

[2] 312特許のクレーム1は以下のとおり
An electrical deep fryer comprising a metal pan (1) having a wall, and an electric heating resister [sic] (2) that heats said wall directly by conductive heating to a temperature higher than 150º C., said pan (1) being surrounded by a plastic skirt (3), wherein said skirt (3) is of plastic material which does not continuously withstand a temperature of 150º C., said skirt (3) entirely surrounding the lateral wall (1a) and the base (1b) of the pan and being separated from said wall and said base by an air space (4) of sufficient width to limit the temperature of the skirt (3) to a value which is compatible with the thermal resistance of the plastic material of the skirt (3), said skirt (3) being completely free with respect to the pan (1) with the exception of a ring (5) which joins only the top edge (3a) of the skirt to the top edge (1c) of the pan and to which this latter is attached, said ring (5) being of heat-insulating material which is continuously resistant to the temperature of the top edge (1c) of the pan (1).

(第2回へ続く)

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