米国特許判例紹介:誘発侵害と寄与侵害(第3回) - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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米国特許判例紹介:誘発侵害と寄与侵害(第3回)

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米国特許判例紹介:誘発侵害と寄与侵害(第3回)

~最高裁により誘発侵害の適用要件が明確化される~

Global-Tech Appliances, Inc., et al.,

                    Petitioners,

            v.

         SEB S.A.

河野特許事務所 2011年10月11日 執筆者:弁理士  河野 英仁

4.CAFC大法廷の判断

争点1:誘発行為により特許権侵害を構成するということを知っていることが必要

 CAFCは米国特許法第271条(b)に規定する誘発侵害が成立するための要件として、被疑侵害者が誘発行為により特許権侵害を構成することを知っていることが必要と判示した。

 

 米国特許法第271条は(a)で直接侵害を、(b)で誘発侵害を、(c)で寄与侵害を規定している。

 

第271 条 特許侵害

(a) 本法に別段の定めがある場合を除き,特許の存続期間中に,権限を有することなく,特許発明を合衆国において生産,使用,販売の申出若しくは販売する者,又は特許発明を合衆国に輸入する者は特許を侵害する。

(b) 積極的に特許侵害を誘発した者は,侵害者としての責めを負うものとする。

(c) 特許を受けている機械,製品,組立物若しくは合成物の構成要素,又は特許方法を実施するために使用される材料若しくは装置であって,その発明の主要部分を構成しているものについて,それらが当該特許の侵害に使用するために特別に製造若しくは改造されたものであり,かつ,一般的市販品若しくは基本的には侵害しない使用に適した取引商品でないことを知りながら,合衆国において販売の申出若しくは販売し,又は合衆国に輸入した者は,寄与侵害者としての責めを負うものとする。

 

(c)の規定と比較して、(b)の規定は曖昧であり成立要件が明確でない。最高裁は(b)の成立要件を確定すべく、(b)及び(c)が制定された1952年以前の判例及び立法趣旨等を分析した。

 

 1897年のThomson事件[1]においては、部品の販売者が、当該部品が特許を侵害するために使用されることを意図していた場合、寄与侵害の責を負うと判示された。

 

 その後、議会は米国特許法第271条を成立させ、以前寄与侵害としてとして見なされていたものを、2つのカテゴリーに分けた、すなわち一つは米国特許法第271条(b)であり、他の一つは米国特許法第271条(c)である。

 

 米国特許法第271条(c)の規定「当該特許の侵害に使用するために特別に製造若しくは改造されたもの・・・であることを知りながら」は、特許の存在について知っていることを要求しているものと解釈することができる。

 

 米国特許法第271条(b)及び(c)は共に、1952年以前の判例を共通の起源に持つことから、(c)の規定が特許の存在を知っていることを要求していながら、逆に(b)の規定が当該要件を不要とする解釈は妥当でないと最高裁は述べた。

 

 以上の理由により、最高裁は、米国特許法第271条(b)における誘発侵害は、被疑侵害者が、誘発行為により特許権侵害を構成するということを知っていることを要件とする、と判示した。

 

 

争点2:故意の盲目( willful blindness)であっても誘発侵害の要件を満たす

 最高裁は、「故意の盲目」論に基づき、P社が「知っていたこと」の要件を満たし、誘発侵害が成立すると判示した。

 

 「故意に盲目」論は、刑法において十分に確立されており、悪事の可能性が裏付けられることを回避するために故意に目をつぶっていることは、現実に知っている者と同じく責任を負うとする考えである。

 

 「故意の盲目」が成立するための基本的要件は、

(i)被告が主観的に、ある事実が存在する可能性が高いと信じていること、

(ii)当該事実を知ることを故意に回避するような行動をとったこと

である。

 

 「故意の盲目」論が、刑法及び連邦法域における各事件で受け入れられているとすれば、当該理論は米国特許法第271条(b)における誘発侵害に係る民事訴訟にも適用されるべきである。なお、CAFCは「故意の無関心」を基準としたが、最高裁は刑法の規定に基づき「故意の盲目」論を採用した。

 

 本事件においてP社が模造した時点で、SEBのクールタッチフライ鍋は米国市場における革新的技術であった。SEBのフライ鍋の販売は急成長した。P社はこの事実を全て知っており、P社のCEOであるJohn Sham氏は、Sunbeam社へ商品を提供するに際し、「市場調査」を実行し、可能な限り情報を集めたと証言した。

 

 またP社はSEBの製品が米国市場にあったことを知っていた。また、Sham氏自身も多くの米国特許の発明者であり、Sham氏は米国外で販売される製品には一般に米国特許のマークが付されていないことを熟知していた。P社は特許調査を行う弁護士にSEBのフライ鍋を模造した事実を伝えなかった

 

 これらの事実に基づけば、P社が主観的にSEBのフライ鍋が特許されており、P社がその事実を知っていることを回避すべく故意の手段をとり、Sunbeam社の販売に伴う直接侵害に対し、P社自身が故意に目をつぶったといえる。

 

 以上の理由により、P社による誘発侵害は成立すると判示した。



[1] Thomson-Houston Elec. Co. v. Ohio Brass Co., 80 F. 712, 721 (CA6 1897)

(第4回へ続く)

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