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中国特許判例・審決紹介:中国におけるソフトウェア/ビジネス関連発明の保護適格性(2)(第2回)
~ビジネス関連発明の保護適格性と審査~
河野特許事務所 2011年9月20日 執筆者:弁理士 河野 英仁
雅迅ネットワーク有限公司
復審請求人
(2)審査の過程
実質審査の段階において、国家知識産権局実質審査部門は2003年12月5日第一回目の審査意見通知書を送付した。審査官がなした拒絶理由は以下のとおりである。請求項1及び2が解決しようとする課題および獲得しようとする効果は、全てタクシー運営会社がタクシーの毎回の取引運営データまたは情報に対して行う管理に関するものにすぎず、解決すべき課題及び獲得される効果は全て非技術的なものである。これらは、技術の範疇に属さず,また技術方案[1]を構成しない。従って請求項1及び2が要求する保護内容は専利法第25条第1項(2)項に規定する特許を付与しない対象に該当するというものである。
これに対し出願人は、2004年4月14日第一回審査意見通知書に対する意見陳述書を提出し、請求項および明細書に対し補正を行った。なお、補正後の請求項が上述した請求項1及び2である。出願人は意見書にて、本出願はタクシーメータのデータに対する転送、保存、処理、制御に関し,解決課題及び效果は全て技術的なものであるから技術方案を構成し,専利法による保護客体に属すると主張した。
審査官は出願人の主張を認めず、2005年4月8日請求項1及び2は専利法第25条第1項(2)項に規定する特許権を付与しない客体に属するという理由をもって,拒絶査定をなした。
出願人はこれを不服として2005年7月20日復審委員会へ復審請求を行った。なお、出願人は復審請求時に補正を行っていない。特許復審委員会は2005年9月7日、復審請求人に復審請求受理通知書を発送すると共に、復審請求書と、原出願書類包袋書類とを原審査部門へ送付し、拒絶査定をなした審査官に前置審査[2]を行わせた。審査官は請求項1及び2の拒絶を維持する決定をなした。事件は復審委員会に戻され審理が行われた。
3.復審委員会での争点
争点:BM関連発明の保護適格性はどのように判断されるか?
CS関連発明に対する保護適格性の判断基準は審査指南第2部分第9章第2節に規定する所謂技術三要素手法に基づき判断される。
技術三要素手法とは以下の判断手法をいう。
コンピュータプログラムに係わる発明特許出願の解決方案において、技術的課題を解決することがコンピュータプログラムを実行する目的であって、コンピュータによりプログラムを実行して、コンピュータ外部又は内部の対象を制御、又は処理する際に、自然法則に準拠した技術的手段が反映されており、それによって自然法則に合致した技術的効果を獲得する場合には、このような解決方案は、専利法第2条第2項でいう技術方案に該当し、専利保護の客体に該当する。
BM関連発明もこの技術三要素をベースに判断が行われるが、さらに「現有技術」までもが考慮される。このBM関連発明特有の判断基準とは何か、この特殊な判断基準下で請求項1及び2に係る発明が保護適格性を有するか否かが問題となった。
[1] 「技術方案」中の「方案」に直接対応する日本語が存在しないため、日本の実務者にとっては専利法上の「発明」が何であるか理解しにくい。国家知識産権局が公表している専利法英語訳によれば「技術方案」は「Technical Solution」である。これであれば、何となくイメージがつかめるのではないであろうか。審査指南第2部分第1章には技術方案について以下の定義がなされている。
「技術方案とは、解決しようとする技術的問題に対して採用する自然法則を利用した技術的手段の集合である。技術的手段は通常技術的特徴によって表される。」
[2]中国においても審査官による前置審査が行われる。ただし、中国では復審請求時に補正をしない場合でも審査官による前置審査が行われる点で、補正を行わない場合前置審査へ移行しない日本国特許法と相違する。前置審査は実施細則第62条に規定されている。
実施細則第62条 特許復審委員会は受理した復審請求書を国務院特許行政部門の元審査部門に移送して審査させなければならない。元審査部門が復審請求人の請求に従い、元決定の取消しに同意する場合、復審委員会はこれに基づいて審判決定を行い、復審請求人に通知しなければならない。
(第3回へ続く)
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