米国特許判例紹介:ネットワーク関連発明の直接侵害成立要件(4) - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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米国特許判例紹介:ネットワーク関連発明の直接侵害成立要件(4)

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米国特許判例紹介:ネットワーク関連発明の直接侵害成立要件(第4回)

~BlackBerry事件を考慮したシステムクレームの権利範囲解釈~

河野特許事務所 2011年5月11日 執筆者:弁理士  河野 英仁

       Centillion Data Systems, LLC,

                        Plaintiff Appellant,

              v.

Qwest Communications International, Inc., et al.,

                  Defendants-Cross Appellants.

(iii)BlackBerryシステム

 カナダオンタリオに本社を置くResearch In Motion, LTD.(以下、RIM)はBlackBerryシステム(以下、ロ号システム)により、本発明と同様のサービスを提供している。その概略は参考図2に示すとおりである。

 

参考図2 ロ号システム

 

 送信者が送信した電子メールはSMTPサーバへ送信され、受信者のPOPサーバのメールボックスへ格納される。POPサーバは電子メールを受信した場合、電子メールをカナダに存在する配信サーバへ転送する。配信サーバは無線ネットワークを介してハンドヘルド装置へ電子メールを配信する。すなわち、受信者はコンピュータにより従来どおり電子メールをPOPサーバにアクセスしてダウンロードすることもでき、さらに、ハンドヘルド装置においてもリアルタイムで電子メールの受信を確認することができる。

 

 ここで問題なのは、発明のポイントとなる配信サーバがカナダに存在し、メールの配信処理もカナダから無線ネットワークを通じて行われているということである。これ以外の、SMTPサーバ、POPサーバ、送信者・受信者のコンピュータ及びハンドヘルド装置は全て米国に存在する。

 

 このように、ロ号システムにおける配信サーバがカナダに存在するという点を無視すれば、ロ号システムは、NTPの主張するシステムクレーム全ての構成要件を具備している。

 

(iv)米国特許法第271条(a)

 NTPは、RIMのロ号システムは米国特許法第271条(a)に規定する直接侵害に該当すると主張した。

同条は

「本法に別段の定めがある場合を除き、米国内において特許の存続期間中に、特許発明を権限なく生産し、使用し、販売の申し出を行い、または販売した者は、特許を侵害したものとする。」

 と規定している。RIMは、ロ号システムの配信サーバはカナダに存在するので、侵害活動の全てのステップが「米国内において」行われているという法定要件を満たさないと主張した。271条(a)は、特許の地域的範囲を限定しており、米国内において発生した特許侵害に対してのみ適用される。

 

(v)構成要件の一部が外国に存在するとしても、直接侵害となる

 CAFCは、クレームの構成要件の一つ「interface」が、ロ号システムの配信サーバに該当し、これが米国外に存在することを認めた上で、

 

a)他のRIMのシステムは全て米国内に存在し、配信サーバを含む全ての装置は、全て米国で制御が可能であること、及び

b)RIMロ号システムの使用による利益は米国内で享受することができること

を理由に、米国特許法第271条(a)に規定する「米国内における・・使用」に該当すると判示した。

 

 すなわち、係争物がクレームの構成要件を全て具備し、その制御が国内で可能であり、かつ、国内でその発明の利益を享受することができるのであれば、構成要件の一部が国外に存在するとしても、直接侵害を問えると判示した。

 

(3)本事件におけるオンデマンド方式

 本事件において、CAFCは被告が提供するオンデマンド方式について、ユーザの使用行為の存在を根拠に直接侵害を認めた。ユーザはクエリーを生成することにより、システム全体を制御した。これは、ユーザがシステムを全体としてサービスに供したことに等しい。そして、ユーザは当該システムの制御により利益を享受した。

 

 ユーザはオンデマンド方式によりシステム全体を制御する。すなわち、ユーザはクエリーを起因として被告のバックエンドシステムに処理を実行させ、かつ、ユーザのフロントエンドシステムへ結果を返す。ユーザはダウンロードした課金レポートに追加の処理を実行する。

 

 このように、ユーザが処理要求しなければ、バックエンドシステム及びフロントエンドシステムはサービスに供されることもない。CAFCは、ユーザが全体としてシステムに上述した処理を実行させ、かつ、課金レポートの取得という利益を享受していることから、ユーザが、米国特許法第271条(a)のもとシステムを「使用」し、直接侵害が成立すると結論づけた。

 

 なお、本事件における直接侵害は、複数人ではなく、単一ユーザによる侵害行為であることからBMC事件において判示された代位責任の法理に基づく共同侵害についての検討は不要である。

(第5回へ続く)

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