米国特許判例紹介:ネットワーク関連発明の直接侵害成立要件(3) - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
河野特許事務所 弁理士
弁理士

注目の専門家コラムランキングRSS

対象:特許・商標・著作権

専門家の皆様へ 専門家プロファイルでは、さまざまなジャンルの専門家を募集しています。
出展をご検討の方はお気軽にご請求ください。

米国特許判例紹介:ネットワーク関連発明の直接侵害成立要件(3)

- good

  1. 法人・ビジネス
  2. 特許・商標・著作権
  3. 特許・商標・著作権全般

米国特許判例紹介:ネットワーク関連発明の直接侵害成立要件(第3回)

~BlackBerry事件を考慮したシステムクレームの権利範囲解釈~

河野特許事務所 2011年5月9日 執筆者:弁理士  河野 英仁

       Centillion Data Systems, LLC,

                        Plaintiff Appellant,

              v.

Qwest Communications International, Inc., et al.,

                  Defendants-Cross Appellants.

3.CAFCでの争点

争点1:ユーザがシステムクレームに係る発明を「使用“Use”」したか否か

 米国特許法第271条(a)[1]は以下のとおり規定している。

 

(a) 本法に別段の定めがある場合を除き,特許の存続期間中に,権限を有することなく,特許発明を合衆国において生産,使用,販売の申出若しくは販売する者,又は特許発明を合衆国に輸入する者は特許を侵害する。

 

 被告はシステムクレームの構成要件1-3に対応するバックエンドシステムを備え、ユーザは構成要件4に対応するフロントエンドシステムを備えている。この場合に、ユーザの行為が米国特許法第271条(a)に規定する「使用」行為に該当するか否かが争点となった。

 

争点2:被告がシステムクレームに係る発明を「使用“Use”」したか否か

 争点1とは逆に、被告がシステムクレームに係る発明を、米国特許法第271条(a)の規定のもと「使用」したか否かが問題となった。

 

争点3:被告はシステムクレームに係る発明を「生産“Make”」したか否か

 被告は構成要件1~3をバックエンドシステムとして生産している。さらに、被告はユーザに構成要件4のパソコンデータ処理手段を機能させるためのプログラムを提供している。このような場合に、被告はシステムクレームに係る発明を、米国特許法第271条(a)の規定のもと「生産」していたといえるか否かが問題となった。

 

 

4.CAFCの判断

争点1:ユーザの行為は米国特許法第271条(a)のもと、システムクレームに係る発明の「使用」に該当する。

 CAFCは、ユーザがシステムを全体としてサービスに供し、また本発明による利益を享受していることから、ユーザの行為は米国特許法第271条(a)に規定する「使用」に該当し、直接侵害が成立すると判示した。

 

(1)被告のサービス提供方式

 被告のサービスには以下のオンデマンド方式と、月次方式との2つがある。

 

 オンデマンド方式では、ユーザのフロントエンドシステムが毎回クエリー(query:問い合わせの意)を生成し、生成したクエリーを被告のバックエンドシステムに送信する。バックエンドシステムはクエリーに従い課金に関するレポートをフロントエンドシステムに返し、ユーザはレポートについて追加の処理を実行する。

 

 月次方式はユーザが予約しておくことにより、被告のバックエンドシステムが月次レポートを生成する。ユーザは月次レポートをダウンロードし、これを自身のPC上で利用する。

 

(2) BlackBerry事件[2]

 CAFCは直接侵害の結論を導くためにBlackBerry事件を引用した。以下、BlackBerry事件の詳細を説明する。

(i)概要

 インターネットが介在する発明は、国境を越えてシステムが構築されることが多い。従って構成要件A、B及びCからなるシステムに係る発明において、構成要件Cが国外に存在する場合に、特許権者がどのように訴追すればよいかが問題となる。BlackBerry事件では構成要件の一部がカナダに存在していたが、被告の行為を米国特許法第271条(a)に基づく直接侵害と認定し、差止め及び約58億円の損害賠償を認めた。

 

(ii) BlackBerry事件における発明の内容

 NTP, Inc.(以下、NTP)は、既存の電子メールシステムに、無線ネットワークを統合し、モバイルユーザに無線ネットワーク下でpush型での電子メールの転送を行うシステムにかかるU.S. Patent5,436,960(以下,960特許)等5件の特許)を有している。

 

 既存の電子メールシステムは以下のように動作する。即ち、メーラーで作成された電子メールは送信者のコンピュータからSMTP(simple mail transfer protocol)サーバへ送信される。SMTPサーバは受信者のメールサーバを調べるためにDNS(domain name system)サーバに問い合わせる。そして、電子メールは受信者のメールサーバへ送信され、メールサーバ内のメールボックスに格納される。受信者はPOP3(post office protocol version 3)プロトコルを用いて、能動的にメールサーバにアクセスしメールボックスから電子メールをダウンロードする。

 

 これはpull型と呼ばれ、受信者自らメールサーバにアクセスして電子メールをダウンロードする必要がある。本発明は、既存の電子メールシステムはそのままに、さらに、無線ネットワークを介してハンドヘルド装置に電子メールをpush型により配信することを特徴としている。すなわち、受信者のメールサーバは電子メールをSMTPサーバから受信した場合、電子メールをメールボックスに格納すると共に、これを暗号化して配信サーバ(クレームでは「interface」)へ送信する。配信サーバは無線ネットワークを介してハンドヘルド装置へ電子メールを配信する。これにより受信者は電子メールをメールサーバにアクセスすることなくリアルタイムで受信することができる。


[1] 米国特許法第271条(a)

35 U.S.C. 271 Infringement of patent.

(a)Except as otherwise provided in this title, whoever without authority makes, uses, offers to sell, or sells any patented invention, within the United States, or imports into the United States any patented invention during the term of the patent therefor, infringes the patent.

[2] NTP, Inc. v. Research in Motion, Ltd., 418 F.3d 1282 (Fed. Cir. 2005)

(第4回へ続く)

ソフトウェア特許に関するご相談は河野特許事務所まで

 |  コラム一覧 |