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対象:特許・商標・著作権
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米国特許判例紹介:ネットワーク関連発明の直接侵害成立要件(第2回)
~BlackBerry事件を考慮したシステムクレームの権利範囲解釈~
河野特許事務所 2011年5月6日 執筆者:弁理士 河野 英仁
Centillion Data Systems, LLC,
Plaintiff Appellant,
v.
Qwest Communications International, Inc., et al.,
Defendants-Cross Appellants.
2.背景
(1)特許発明の内容
Centillion(原告)はU.S. Patent No. 5,287,270 (以下、270特許という)を所有している。270特許は、電話会社等のサービスプロバイダからユーザへの情報の収集、処理及び配信システムを開示している。
従来、電話会社はメインフレームにおいて使用されていた磁気テープを除いて、料金データを電子的にユーザに配信し、ユーザに処理させるシステムを有していなかった。本発明者は、通話料金に関するデータを処理し、ユーザにパーソナルコンピュータ(以下、パソコンという)に適したフォーマットで配信するシステムを開発した。
1994年に成立した270特許のシステムクレーム1[1]の要部は以下のとおりである。
1. ユーザに情報を提示するシステムであって、
1)処理記録を記憶する記憶手段と、
2)前記処理記録からユーザにより特定されたものとして要約レポートを生成するデータ処理手段と、
3)前記処理記録及び要約レポートをユーザに転送する転送手段と、
4)前記処理記録に関し、追加処理を実行すべく適用されるパソコンデータ処理手段と
を備えるシステム。
クレーム1はサービスプロバイダにより保持される“バックエンド”システム(構成要件1,2,3)と、エンドユーザにより保持される“フロントエンド”システム(構成要件4)とにより構成される。参考図1は270特許のシステム図である。
参考図1 270特許のシステム図
参考図1の点線で囲む部分がサービスプロバイダにより保持される“バックエンド”システム(構成要件1,2,3)であり、実線部分24がエンドユーザにより保持される“フロントエンド”システム(構成要件4)である。被告のバックエンドシステムは、処理記録の記憶(構成要件1)、要約レポートの生成(構成要件2)、処理記録及び要約レポートのユーザへの転送処理(構成要件3)を行う。ユーザのパソコンにおけるフロントエンドシステムは、処理記録に対しデータ処理(構成要件4)を行う。
(2)被告の行為
Qwest(被告)も同様に、ユーザにオンラインで月毎の課金レポートを提供している。イ号システムは、被告のバックエンドシステムと、ユーザのパソコンにインストールされたフロントエンドシステムとにより構成される。
(3)訴訟の提起
原告は被告イ号システムが270特許のクレーム1を侵害するとしてインディアナ州連邦地方裁判所に提訴した[2]。地裁はクレームの全ての構成要件を具備する「者」が存在しないことから、直接侵害は成立しないと判断した。また、被告が、ユーザを「指示または管理」していないことから、共同侵害も成立しないと判断した。原告はこれを不服として控訴した。
[1] 270特許のクレーム1は以下のとおりである。
“a system for presenting information . . . to a user . . . com-prising:”
1) storage means for storing transaction records,
2) data processing means for generating summary reports as specified by a user from the transaction records,
3) transferring means for transferring the transaction records and summary reports to a user, and
4) personal computer data processing means adapted to perform additional processing on the transaction records.
[2] なお、被告にユーザは含まれていない。
(第3回へ続く)
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